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25話
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「――リッツよ、お主はいつも草を前にそうしているのか?」
「おわっ!? なんだシリウスか……いるならいるって言ってくれよ」
「中から呼んでもこないからわざわざ来てやったのだ」
だからって急に真後ろに立つのはビビるだろ……。
「しかし私が城で言った言葉の意図、よく気付いたな」
「教えてもらったんだよ。お前、子供の頃しょっちゅう教会に迷惑かけてたらしいな」
「少々息抜きをさせてもらっていただけだ、城というのは息苦しいことが多いからな」
「……そういうことにしてやるよ。それで要件ってのは?」
教会の中に入り扉を閉めると椅子に座る。
「賊どもを調べたのだが、どうやら奴らは雇われていただけで、組織の首謀者に指示を出されて動いていたらしい」
「組織とはこれまた物騒なものがでてきたな、その首謀者の特徴とかわからなかったのか」
シリウスは大きくため息をつき首を振った。
「残念ながらそこまでは……ただ、一つだけわかったことがある。奴らはこの後、【エナミナル】に戻るつもりだったようだ」
「えーっと、確か軍事国家といわれてる国だっけ?」
「そうだ、あそこは昔から我が国と取引があってな、古くからの友好国なのだ」
「それじゃああっちの王様に調べてもらえばいいんじゃないか」
「あちらでも異常が起きてることは明白、秘密裏に探りつつ王に知らせるほかないだろう」
「でもあんたはこの国を離れるわけにはいかないだろ? いったいどうするつもりだよ」
シリウスは笑顔をつくり俺を見つめてくる。
ま、まさかこいつ……。
「俺に行かせるつもりじゃないだろうな……?」
「察しがいいじゃないか、お主と出会えたことは運命かもしれないな。神に感謝せねばならん」
「ちょっと待て! いくら関わったといっても俺は一般人だぞ!?」
シリウスは軽く笑うとどこか遠くを見つめる。
「下手に情報を流し奴らに感づかれれば二度と尻尾はみせないだろう。聖人を探していたことといい、何かが動き出しているのは間違いない。それに父が残した石碑……あれはお主にとっても無関係とは言えないはず」
そう言ってシリウスは俺に向き直ると頭を下げた。
「無理難題を言ってるのは百も承知、しかし今の私では力が足りぬのだ……。頼む、お主の力を貸してくれ」
自分の手を見つめると古い記憶が蘇る。
「……わかった、やれるだけやってみるよ」
「ありがとう、こちらからもできるだけの援助はさせてもらう」
シリウスと握手を交わす。
「それでこれからどうするつもりだ?」
「それなんだがな――入ってくれ」
扉が開けられると、入ってきたのはエレナさんだった。
「エレナさん、どうしてこんなところに?」
「彼女は偽物だ。正体は王家に仕える者の一人で、他人の容姿だけでなく身長、体重を真似することができる。女性だろうと男性だろうと関係なくね」
へぇ~こりゃあすごい、まったく見分けがつかないぞ。
「これからご一緒させていただくシルエです、以後お見知りおきを」
「よろしく頼む。ところでシルエは男なのか、女なのか?」
「ふふふ、それはリッツさんのご想像にお任せします」
ニッコリと微笑むその顔は、エレナさんがティーナに向ける笑顔と同じだった。
「本当の姿はさすがの君にも見せるわけにはいかないからね。女性がやりづらいなら男になっててもらうこともできるから我慢してくれ」
別に男だろうが女だろうがいいんだが、知人というのがやりづらいんだよな。
「で、シルエと一緒に俺は何をすればいいんだ?」
「まず君にはシルエと共に【エナミナル】へ行ってもらう。そこでシルエは君が捕らえてくれた賊の姿になりすまし、飲み街にいき情報を集めてもらう」
「そんなことして。彼女は大丈夫なのか?」
「シルエは私の影武者になることもあるくらいだから心配はいらない。それよりも君にお願いしたいのは、私の密書を【エナミナル】の国王に渡すことと、シルエの補助だ」
エレナさんの姿のままシルエは頷く。
「聖人を攫おうとしたところをみると、場合によってはあなたを囮に使わなければならない可能性がでてきます。その際あなたには、何も知らずに攫われた聖人を演じてもらいます」
「危険があればシルエには優先で君を逃がすように言ってある。安心してくれとは言えないが、君の実力を考えればなんとかなるだろう。もちろん自分の命を優先に考えてくれ」
話を終えみんなに説明をするとまるで英雄のようだとか、聖人の生まれ変わり説など色々と面白いことを言われたが、最後に送られた言葉は必ず無事に帰ってこいだった。
「おわっ!? なんだシリウスか……いるならいるって言ってくれよ」
「中から呼んでもこないからわざわざ来てやったのだ」
だからって急に真後ろに立つのはビビるだろ……。
「しかし私が城で言った言葉の意図、よく気付いたな」
「教えてもらったんだよ。お前、子供の頃しょっちゅう教会に迷惑かけてたらしいな」
「少々息抜きをさせてもらっていただけだ、城というのは息苦しいことが多いからな」
「……そういうことにしてやるよ。それで要件ってのは?」
教会の中に入り扉を閉めると椅子に座る。
「賊どもを調べたのだが、どうやら奴らは雇われていただけで、組織の首謀者に指示を出されて動いていたらしい」
「組織とはこれまた物騒なものがでてきたな、その首謀者の特徴とかわからなかったのか」
シリウスは大きくため息をつき首を振った。
「残念ながらそこまでは……ただ、一つだけわかったことがある。奴らはこの後、【エナミナル】に戻るつもりだったようだ」
「えーっと、確か軍事国家といわれてる国だっけ?」
「そうだ、あそこは昔から我が国と取引があってな、古くからの友好国なのだ」
「それじゃああっちの王様に調べてもらえばいいんじゃないか」
「あちらでも異常が起きてることは明白、秘密裏に探りつつ王に知らせるほかないだろう」
「でもあんたはこの国を離れるわけにはいかないだろ? いったいどうするつもりだよ」
シリウスは笑顔をつくり俺を見つめてくる。
ま、まさかこいつ……。
「俺に行かせるつもりじゃないだろうな……?」
「察しがいいじゃないか、お主と出会えたことは運命かもしれないな。神に感謝せねばならん」
「ちょっと待て! いくら関わったといっても俺は一般人だぞ!?」
シリウスは軽く笑うとどこか遠くを見つめる。
「下手に情報を流し奴らに感づかれれば二度と尻尾はみせないだろう。聖人を探していたことといい、何かが動き出しているのは間違いない。それに父が残した石碑……あれはお主にとっても無関係とは言えないはず」
そう言ってシリウスは俺に向き直ると頭を下げた。
「無理難題を言ってるのは百も承知、しかし今の私では力が足りぬのだ……。頼む、お主の力を貸してくれ」
自分の手を見つめると古い記憶が蘇る。
「……わかった、やれるだけやってみるよ」
「ありがとう、こちらからもできるだけの援助はさせてもらう」
シリウスと握手を交わす。
「それでこれからどうするつもりだ?」
「それなんだがな――入ってくれ」
扉が開けられると、入ってきたのはエレナさんだった。
「エレナさん、どうしてこんなところに?」
「彼女は偽物だ。正体は王家に仕える者の一人で、他人の容姿だけでなく身長、体重を真似することができる。女性だろうと男性だろうと関係なくね」
へぇ~こりゃあすごい、まったく見分けがつかないぞ。
「これからご一緒させていただくシルエです、以後お見知りおきを」
「よろしく頼む。ところでシルエは男なのか、女なのか?」
「ふふふ、それはリッツさんのご想像にお任せします」
ニッコリと微笑むその顔は、エレナさんがティーナに向ける笑顔と同じだった。
「本当の姿はさすがの君にも見せるわけにはいかないからね。女性がやりづらいなら男になっててもらうこともできるから我慢してくれ」
別に男だろうが女だろうがいいんだが、知人というのがやりづらいんだよな。
「で、シルエと一緒に俺は何をすればいいんだ?」
「まず君にはシルエと共に【エナミナル】へ行ってもらう。そこでシルエは君が捕らえてくれた賊の姿になりすまし、飲み街にいき情報を集めてもらう」
「そんなことして。彼女は大丈夫なのか?」
「シルエは私の影武者になることもあるくらいだから心配はいらない。それよりも君にお願いしたいのは、私の密書を【エナミナル】の国王に渡すことと、シルエの補助だ」
エレナさんの姿のままシルエは頷く。
「聖人を攫おうとしたところをみると、場合によってはあなたを囮に使わなければならない可能性がでてきます。その際あなたには、何も知らずに攫われた聖人を演じてもらいます」
「危険があればシルエには優先で君を逃がすように言ってある。安心してくれとは言えないが、君の実力を考えればなんとかなるだろう。もちろん自分の命を優先に考えてくれ」
話を終えみんなに説明をするとまるで英雄のようだとか、聖人の生まれ変わり説など色々と面白いことを言われたが、最後に送られた言葉は必ず無事に帰ってこいだった。
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