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8話

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「説明して頂けますか?」

「な、何をかな……?」

 宿の一室で俺はティーナに詰め寄られていた。その後ろではエレナさんがアンジェロを抱き、ため息をついている。

 なんかまずいことでもしたのか? まさか、出した薬がこの国じゃ違法だったとか……!?

「なんで疫病があんなにすぐ治ってるんですか! それに貴重そうな薬をあんなにいっぱい……というかその鞄、マジックバッグですよね!? 人前で堂々と見せるなんてどうかして――」

「お嬢様、落ち着いてください。外に聞こえてしまいます」

 エレナさんは欠伸をするアンジェロを降ろすと近づいてくる。

「とりあえず、色々と聞きたいことはありますが……まずは薬です。リッツさん、金貨一枚というのはどの程度のことをいってるのでしょうか?」

「え、いや、だから必要なだけ持っていってくれていいけど。実は俺、国を追い出されちゃって金がないんだ。だから少し多めにほしいなぁなんて……」

「あなたまさか……」

 エレナさんはティーナを庇うように移動した。

「俺は何もやってないよ!? 薬っていってもポーションを作ってただけで、依頼通りのモノを渡したらなぜか誤解されたんだ」

「エレナ、リッツさんはそんな人じゃありません。誰だって人には言えないことの一つや二つ、あるでしょう?」

「で、ですがお嬢様……失礼致しました……」

 やけにティーナが庇ってくれるような……とにかく助かった……。

「リッツさん、ただしです! なぜあのような薬が作れるのかはっきりと説明をしてください」

 あーあれのことか、別にそれくらいなら対したもんでもないし大丈夫だろ。

「スキルのおかげだよ。俺のスキルは『草』なんだ」

「草? ……馬鹿にしてます?」

「してないって! 俺は『草』のおかげですべての草にどんな効果があって何の素材になるのか把握できるんだ。ポーションの原料だって大半が草やその葉っぱだろ? あとは配合や組み合わせを考えればある程度調整しながら作れるんだよ」

「そんなことって……」

 エレナさんがありえないとでもいう様に呟く。ティーナも驚きを隠せないがなんとかそれを飲み込むと口を開いた。

「で、ですが大量の素材が必要なはず。いったいどこであれだけの量を?」

「子供の頃、俺を助けてくれた人がいてさ、それが今の俺の師匠なんだけど……かなり腕が立つ人でね。素材はたくさんあったほうがいいだろって毎日のように持ってきてくれたんだ」

 毎日持ってきては「これくらい一人で取りにいけるようにならないとな」と言われ修行に付き合わされてたなぁ……一緒に修行してた騎士団のみんなは元気……いや、無事だといいな。

「なるほど……色々と言いたいことはありますが……。もし私たちが街すべてを助けられるだけの薬がほしいといったら、それでも金貨一枚でいいということで間違いはないですか?」

「あぁそれは構わないよ、ただ、俺一人じゃ配り切れないし街までの足もない。それだけはどうにかしないといけない」

「それならば明日、私が村の皆さんを説得してみます」

「お嬢様、そんなことをなされば先のご貴族様になんと申されるか……!」

「いいんです、先ほども言ったでしょう? 人々のためにならと。さ、もう夜も遅いですし、明日に備えて寝ましょう」

 二人は俺に礼を言うと部屋を出ていく。

 初めて会ったときはもっと臆病だと思ったがなかなか肝が据わってるのかもしれないな。

 俺はベッドに倒れこむとゆっくりと瞼を閉じた。
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