代償

platinum666

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代償

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台所に立つ妻の姿を退屈に任せて、横目で見ていた。
私は定期的にタバコを吸う習性があり、狭い台所の一番奥にある換気扇の下に行かなくてはいけない。
換気扇の下には灰皿と飲みかけのコーヒーが置いてあるが
結婚当初はまだカップにコーヒーが入っているのに、妻に片付けられた。
その頃はなんで片付けちゃうんだよと文句を言っては妻と揉めていた。
私が換気扇の下に向かうには狭い台所をすり抜けて、妻の背後を通り過ぎるときお尻を触る必要がある。
もちろん妻のお尻に下半身を押し付ける事もできるが、妻に今晩の夜のサインと受け取られても困る。
妻にはそういう自分の都合のいい解釈ができる性格なのだ。

私が妻のお尻に触れると

「ちょっと、、危ないでしょ‼︎」

妻は振り返り右手に持った包丁の先を私に向けた。

私は両手を上げたまま換気扇の下に移動して

「ごめん、ごめん邪魔するつもりはなかった」と言って謝ると、妻はまな板にある微塵切りにされた玉ねぎを指差し

「こうなりたくなかったら、余計な事すんな」と言った。

私は下半身を押し付ける方を選択するべきだったかもしれないと思いながら、タバコに火をつけ冷めたコーヒーを一口飲んだ。


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