こんぺいとう

村上葵

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お菓子が欲しけりゃ、イタズラしてみろよ

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「trick or Treat!」


「ん、なんて?」


「と、とりっく…おあ…とりーと?」


「お菓子が欲しいなら、イタズラしてみろよ」


「…………」




今、とっても奏太が怖いです。




「ほら、してみなよ…」


「あ、それは幻の…!」


「ん、あぁこれ?」




学校で幻と言われてる生チョコが、奏太の手に持っていた。


なんで持っているかは予想は付いたけど、嫉妬する前に壁に追いつめられてるのをどうにかしなければ。




「食いたいのか?」


「っ、食べたく…ないです」


「じゃぁ、イタズラしなくてもいいんじゃない?」

「……っ、奏太なんて大嫌い…」




同じ大学に入ってから奏太は、高校の時よりも更に鬼畜になった。


嫌だといっても、監禁まがいなことまでされれば自分の気持ちが分かんなくなった。


だんだん好きという気持ちが薄れ、奏太の気持ちも分からなくなりまじめていた。




「大嫌い…か、いつか言われると思ってた。別れよう…雅…」


「っ、今まで迷惑かけてすみませんでした。それと、ありがとうございました」




僕は謝り、お礼を言えば奏…ううん、先輩は歩き出し次の授業へと向かっていった。



これでよかった。
うん、こんな物……捨ててやる。




そう思い、奏太先輩から貰った大切なペアリングを手作りお菓子共にゴミ箱に捨てる。

付き合って半年、こんなにも早く雅に別れを告げられるとは思いもしなかった。


辛い思いをさせてたのは確かだろう。
気づかなかった俺が悪い。




「おーい、奏太!」


「ん、お前か」


「お前かって、そりゃひでぇなぁ」


「透哉(トオヤ)だからいいんだ」




幼なじみの透哉は、雅が女だと思ってやがる。
ネタバレはしてないから、打ち明けるまで気づかないだろうな。




「さっき、彼女といたろ?」


「覗き見とは悪趣味だな。でも、アイツと別れてきたばっかだ、それがどうした」


「別れたんだ。いや、あの子…泣きながらお前から貰った指輪と手作りであろうお菓子を、ゴミ箱に捨ててたぞ」


「それ、本当か?」




透哉は、なんとも言えない顔をしながら頷いた。
大嫌いっていうぐらい俺が嫌いなんじゃなかったのか?




「泣いてたから、話しかけたら『奏太に大嫌いって言うつもりなかったのに』って更に泣き出してさ」


「…………」


「最後には『本当は別れたくなかったけど、奏太が決めたなら別れなきゃならなのがやだ。今更、愛してるって気づいた』ってワンワン泣いてたわ」


「ごめん、次の授業サボるわ…」




透哉は「保健室に連れてったぞー」と声を大にしていう。



ごめん、雅。
お前の気持ち…もう少し気づいてやればよかったな。


もうすぐ保健室というとき、保健室から出てきた雅は保険医と一緒に出てきた。




「…………」




楽しそうにしている雅の口に、キスをする保険医。
すぐにでも殴ってやりたいが、別れているからそんな事もできない。




「雅…」


「っ、せ…んぱい?」


「先生、こいつ…俺のだから手出さないでください」




クスリと保険医は、口を開く。




「よかったね、雅くん」


「えっ?」


「お菓子ありがと、あとこれ返しておくね」




抱きついたまま指輪を指にはめた。



-end-
 
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