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第4章
クロユリ
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『お、かあ、さま‥‥?』
魔女のローブが剥がれ落ちたら、そこには私がずっと逢いたかったお母様の姿があった。
『うそ、です‥よね‥?だって、お母様が、魔女だ、なんて‥』
縋るような思いで、お母様を見つめたらお母様は虫けらを見るような冷たい目をしていた。
『‥役立たずが』
そう吐き捨てるようにいった。
『おかあ、さま‥‥』
涙で前がみえない。
─私は、クロユリと成り果てていた。
ああ、私は、結局お母様の力になれなかった、役に立てなかった。
こんな娘だから、お母様は妹に夢中なんだ。
妹が生まれてから、お母様の愛情は私から妹に移り変わった。
妹は、私なんかより容量が良くてしっかりしていて、何より愛らしい容姿をしていた妹はお母様から『薔薇の君』と呼ばれ、溺愛されていた。
私がお母様にいただいたドレスもぬいぐるみも、妹が生まれてからは妹のもの。お母様の愛情すらも、妹が奪っていった。
私は、妹が憎んでいた。
ある日、妹とお留守番をすることになった。
お母様は、妹には『いい子にお留守番してるのよ』と微笑みながら妹を抱きしめ、それを羨ましく眺めていたらお母様は私を見下ろし、『あんたは、薔薇の君を泣かしたら追い出すわよ』といった。
『お母様を返してよ!』
悲しくて憎くて、私は妹の首を絞めた。
涙でなにも見えなかった。
お母様が帰ってきていたのに、涙でなにも見えなかったから気付かなかった。
『なにをしているんだい!』
お母様は、私の頬を平手打ちし、『二度と顔を見せるな!』といい、私を追い出した。
絶望した。
絶望したけど、お腹が空いた。
絶望に浸っている場合じゃなかった。
私は、必死に働いて必死に生き延びた。
着ていたドレスを売り、代わりにボロ雑巾のようなボロ着を着て、メイドに綺麗に整えられた髪もボサボサに傷んだ髪になってしまった。
美しさすらも、失ってしまった。
お腹をすかせたまま、朦朧とした意識で歩いていたら気付いたらお母様のいらっしゃる屋敷の前に辿り着いていた。
お母様の声が聞こえる。
なにか、ブツブツつぶやいている?
耳を澄まして聞く。
『※☆※☆ー~‥薔薇の君よ、生き返れ!』
お母様は、死者蘇生の儀式をしている?!
死者蘇生の儀式は、行ったら術者も死に至ると昔本で読んだ。
『お母様、だめー!!』
慌ててお母様に駆け寄る。
そのとき、百合の花が私の右目を喰らい、百合の花が私の右目に植え付けられた。
─そして、私はブラッド・リリーに変化していた。
『あああああ』
お母様は、叫びながら私に抱きついた。
『お前は、薔薇の君かい!やっと、逢えたね!逢いたかったよ‥』
─妹は、もう死んでしまったのに、今でもずっとお母様に愛されていていいなぁ。
それが口に出ていたようで、お母様はびっくりした目で『お前は、まさか‥』といい、私を見つめた。
そして、お母様は高笑いし、『そうかそうか!お前が、“ブラッド・リリー”に選ばれたとは!』という。
ブラッド・リリー?
『お前は、百合の花と契約をしたんだよ。あのとき、放り出したが、今のお前には利用価値があるから仕方ないから置いておいてやるわよ』といい、私は屋敷にふたたび足を踏み入れた。
お母様の娘じゃなく、妹を蘇生させるための道具として。
妹を蘇生させるためには、人間の“狂気”が必要らしく、お母様は人間の狂気を集めてくるよう命じた。
その狂気は、殺してからじゃないと手に入らないから私は心を殺して私に好意を寄せる人すべてを殺してきた。
─これも、すべてお母様のため。
だがしかし、千藤偲を殺したあの日から私と同じように花と契約した少年少女たちが私に現れた。
柊深冬と椎名葉月だ。
しかも、彼女たちは何者かにそそのかされて私を殺そうとする。
私は、ふたりと戦い、結果的にふたりを殺してしまった。
本当は殺したくなんか、なかった。
戦いたくなんか、なかった。
だけど、私は生き残らなきゃいけない、いけないから殺されるわけには、いなかったんだ。
椎名葉月のなりの果てを摘もうとした黒いローブの魔女こそが、黒幕だと確信した。
まさか、その魔女が、お母様だなんて。
そして、お母様に、また見限られた。
ねえ、お母様。
やはり、妹には、敵いませんか。
昔のように、私に笑いかけてくれませんか。
昔のように、私の名前を優しく呼んで撫でてくれませんか。
届かない願いを秘めたまま、私は真っ黒に染まった。
『これで、すべて揃った』
すべての黒幕である彼女は、ほくそ笑む。
すべての“狂気”を集めるには、人間の狂気だけじゃなく花と契約し、やがて呪いにより黒く染まった花の“狂気”が必要だったのだ。
そのために、暗躍し、戦わせたのだ。
黒い花たちを束ね、彼女は呪文を唱える。
薔薇の君が目を覚したそのとき、彼女自身も稲妻に打たれ薔薇の君と共に絶命した。
『ああ、愛しき薔薇の君とこれからはずっと一緒にいられてるなんて、私は幸せ者だよ』
薔薇の君を抱きしめながら、彼女はそういった。
彼女のそばには、一本のクロユリがそっと咲いていた。
魔女のローブが剥がれ落ちたら、そこには私がずっと逢いたかったお母様の姿があった。
『うそ、です‥よね‥?だって、お母様が、魔女だ、なんて‥』
縋るような思いで、お母様を見つめたらお母様は虫けらを見るような冷たい目をしていた。
『‥役立たずが』
そう吐き捨てるようにいった。
『おかあ、さま‥‥』
涙で前がみえない。
─私は、クロユリと成り果てていた。
ああ、私は、結局お母様の力になれなかった、役に立てなかった。
こんな娘だから、お母様は妹に夢中なんだ。
妹が生まれてから、お母様の愛情は私から妹に移り変わった。
妹は、私なんかより容量が良くてしっかりしていて、何より愛らしい容姿をしていた妹はお母様から『薔薇の君』と呼ばれ、溺愛されていた。
私がお母様にいただいたドレスもぬいぐるみも、妹が生まれてからは妹のもの。お母様の愛情すらも、妹が奪っていった。
私は、妹が憎んでいた。
ある日、妹とお留守番をすることになった。
お母様は、妹には『いい子にお留守番してるのよ』と微笑みながら妹を抱きしめ、それを羨ましく眺めていたらお母様は私を見下ろし、『あんたは、薔薇の君を泣かしたら追い出すわよ』といった。
『お母様を返してよ!』
悲しくて憎くて、私は妹の首を絞めた。
涙でなにも見えなかった。
お母様が帰ってきていたのに、涙でなにも見えなかったから気付かなかった。
『なにをしているんだい!』
お母様は、私の頬を平手打ちし、『二度と顔を見せるな!』といい、私を追い出した。
絶望した。
絶望したけど、お腹が空いた。
絶望に浸っている場合じゃなかった。
私は、必死に働いて必死に生き延びた。
着ていたドレスを売り、代わりにボロ雑巾のようなボロ着を着て、メイドに綺麗に整えられた髪もボサボサに傷んだ髪になってしまった。
美しさすらも、失ってしまった。
お腹をすかせたまま、朦朧とした意識で歩いていたら気付いたらお母様のいらっしゃる屋敷の前に辿り着いていた。
お母様の声が聞こえる。
なにか、ブツブツつぶやいている?
耳を澄まして聞く。
『※☆※☆ー~‥薔薇の君よ、生き返れ!』
お母様は、死者蘇生の儀式をしている?!
死者蘇生の儀式は、行ったら術者も死に至ると昔本で読んだ。
『お母様、だめー!!』
慌ててお母様に駆け寄る。
そのとき、百合の花が私の右目を喰らい、百合の花が私の右目に植え付けられた。
─そして、私はブラッド・リリーに変化していた。
『あああああ』
お母様は、叫びながら私に抱きついた。
『お前は、薔薇の君かい!やっと、逢えたね!逢いたかったよ‥』
─妹は、もう死んでしまったのに、今でもずっとお母様に愛されていていいなぁ。
それが口に出ていたようで、お母様はびっくりした目で『お前は、まさか‥』といい、私を見つめた。
そして、お母様は高笑いし、『そうかそうか!お前が、“ブラッド・リリー”に選ばれたとは!』という。
ブラッド・リリー?
『お前は、百合の花と契約をしたんだよ。あのとき、放り出したが、今のお前には利用価値があるから仕方ないから置いておいてやるわよ』といい、私は屋敷にふたたび足を踏み入れた。
お母様の娘じゃなく、妹を蘇生させるための道具として。
妹を蘇生させるためには、人間の“狂気”が必要らしく、お母様は人間の狂気を集めてくるよう命じた。
その狂気は、殺してからじゃないと手に入らないから私は心を殺して私に好意を寄せる人すべてを殺してきた。
─これも、すべてお母様のため。
だがしかし、千藤偲を殺したあの日から私と同じように花と契約した少年少女たちが私に現れた。
柊深冬と椎名葉月だ。
しかも、彼女たちは何者かにそそのかされて私を殺そうとする。
私は、ふたりと戦い、結果的にふたりを殺してしまった。
本当は殺したくなんか、なかった。
戦いたくなんか、なかった。
だけど、私は生き残らなきゃいけない、いけないから殺されるわけには、いなかったんだ。
椎名葉月のなりの果てを摘もうとした黒いローブの魔女こそが、黒幕だと確信した。
まさか、その魔女が、お母様だなんて。
そして、お母様に、また見限られた。
ねえ、お母様。
やはり、妹には、敵いませんか。
昔のように、私に笑いかけてくれませんか。
昔のように、私の名前を優しく呼んで撫でてくれませんか。
届かない願いを秘めたまま、私は真っ黒に染まった。
『これで、すべて揃った』
すべての黒幕である彼女は、ほくそ笑む。
すべての“狂気”を集めるには、人間の狂気だけじゃなく花と契約し、やがて呪いにより黒く染まった花の“狂気”が必要だったのだ。
そのために、暗躍し、戦わせたのだ。
黒い花たちを束ね、彼女は呪文を唱える。
薔薇の君が目を覚したそのとき、彼女自身も稲妻に打たれ薔薇の君と共に絶命した。
『ああ、愛しき薔薇の君とこれからはずっと一緒にいられてるなんて、私は幸せ者だよ』
薔薇の君を抱きしめながら、彼女はそういった。
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