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 「酷い有様だな……」
「そうだね……。一刻も早く、救わないと……」
「それじゃあ、手分けして探してみるか……」
シンヤたちは、二手に別れて、生存者を探すことにした。その結果、多くの人たちを発見することができたが、そのほとんどが息絶えていた。
そんな中、一人の少女を発見した。その少女は、シンヤと同じくらいの年齢だったが、身体中が血だらけになっており、顔色もよくなかった。
「大丈夫ですか……?しっかりしてください……」
「うっ……。私はもうダメです……。どうか、私の代わりにこの国の民たちを守ってください……」
「分かりました……。必ず守って見せます……」
「あなたならできるはずです……。それと、これを受け取って下さい……」
「これは……?」
「これは、私が作った魔道具です……。これを使えば、離れた場所にいる人とも会話ができるようになっています……」
「ありがとうございます……。大切に使わせてもらいます……」
「頑張ってください……。私も後から向かいますので……」
「はい……。絶対に守り抜いてみせます!」
シンヤは魔道具を受け取り、オラリイアの元へ戻ろうとしたその時、突然、爆発音が聞こえてきた。シンヤは急いで音のした方へ駆け出した。
音の発生源には、大きな建物があり、そこから煙が立ち上っていた。シンヤは建物の中に入ると、中には数人の男たちがいた。
「お前ら……!何をしている……!?」
「ああん……?誰だ、テメーは……?」
「そんなことはどうだっていい……。それより、ここで何をしていた……?」
「俺たちは、魔王軍の人間だよ……。こいつらは、魔王様に逆らった愚か者どもだ……」
「なるほどな……。それで皆殺しにしたわけか……」
「そういうことだ……。それで、次は誰が俺らの相手をしてくれるんだ……?」
「悪いが、俺は今から大切な用事があるんでな……。相手はできない……」
「そうなのか……。それは残念だ……。それなら仕方がないな……」
シンヤは剣を抜き、男に向かって走り出そうとしたが、次の瞬間、背後から強烈な殺気を感じた。シンヤはすぐに振り向いたが、既に遅かった。背中を斬られてしまい、大量の出血をした。
シンヤを斬りつけた男は、ニヤリと笑っており、そのままどこかへと立ち去った。
「くそ……。あいつは一体なんだったんだ……」
シンヤは必死に傷口を手で押さえたが、あまりの激痛に耐えきれず、その場に倒れこんでしまった。すると、そこへオラリイアが現れた。
「シンヤ!大丈夫か……!?」
「オラリイア……。すまない……。油断してしまった……」
「謝る必要はない……。それよりも、傷口を見せてくれ……」
オラリイアに言われた通り、シンヤは自分の傷を見せた。すると、オラリイアは回復魔法を使った。
「ヒーリングアントラード……!よし……。これで大丈夫だ……」
「助かったよ……。ところで、さっきの男は何なんだ……?」
「あれは恐らく、魔王軍の幹部の一人だと思う……」
「幹部だと……。まずいな……」
「ああ……。早くここを離れよう……」
シンヤたちがその場から離れようとした時、何者かがこちらへ向かってきた。その者は、先ほどの男よりも遥かに強い力を放っていた。
「貴様が勇者だな……。我の名はダスリタージョ。魔王軍の幹部にして、四天王の一人だ……」
「なるほど……。お前が今回の黒幕か……」
「ほう……。我らのことを知っているのか……。ならば話は早い。早速だが死んでもらうぞ……!」
「断ると言ったら……?」
「もちろん殺してやるさ……。それにしても、よくも仲間を傷つけてくれたな……。その罪は重いぞ……」
「うるさい……!お前だけは許さない……!」
「威勢の割には全く怖くないな……。所詮はただの雑魚か……」
「黙れ……!」
「まあいい……。すぐに殺してくれるわ……」
「オラリイア……。ここは俺に任せて逃げろ……」
「嫌だ……!私は君を置いて逃げるなんてできないよ……」
「頼む……。行ってくれ……!」
「分かった……。絶対に死なないでくれよ……!」
オラリイアはそう言い残し、その場を離れた。
「ふっ……。どうやらあの女は逃げたようだな……」
「余計なことをしてくれたな……」
「安心しろ……。すぐにお前も後を追ってやろう……」
「そう簡単にいくと思うなよ……」
「面白い……。それでは、始めるとしようか……」
ダスリタージョは、剣を構え、シンヤに向かって走り出した。シンヤも迎え撃つため、剣を構えた。そして、両者は激しくぶつかり合った。
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