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 「おいおい。せっかく助けに来たのに、随分な態度を取るんじゃねぇーか……」
「うるさい……。黙れ……」
「なんだとぉ……?」
すると、ヴァギラが割って入った。
「まあまあ……。喧嘩は後にしてください……。今は、お互いに情報交換をしましょう……」
「チッ……。仕方ねえな……」
「分かったわ……」
「分かりました……」
四人は話し合いを始めた。その結果、お互いの情報を交換し合った。
まず、魔王軍についてだが、サレルノダスは、魔王軍の幹部の中でも、トップクラスの実力を持っていたらしい。そして、四天王の一人のヴァギラが、サレルノダスを殺したことで、魔王軍は完全に崩壊したようだ。
次に、勇者たちの状況だが、勇者は一人残らず殺されており、生き残っているのは、シンヤたちだけだった。しかし、魔王軍が崩壊する前に、シンヤたちが倒した、ゴブリンキングなどの魔獣たちも復活していたらしく、勇者たちのパーティーは壊滅状態に陥っていた。
さらに、生き残った人たちを逃がすために、残ったメンバーで時間稼ぎをしていたのだが、それも限界を迎え、全滅してしまったということだ。
「なるほど……。状況はだいたい分かったよ……」
「俺たちの方からも質問していいか?」
「ああ……。なんでも聞いてくれ……」
「それじゃあ、聞かせてもらうけど……。どうしてこんなところにいたんだ?」
「それは、このダンジョンの最下層が、このダンジョンだったからだ……」
「このダンジョンが、このダンジョンだった……?」
「ああ……。このダンジョンは、元々は一つの巨大な洞窟だったんだ……。それが、長い年月をかけて、徐々に枝分かれしていき、今の形になったんだ……」
「そういうことだったのか……」
「ちなみに、このダンジョンの名前は『ウツロイの森』っていうんだ……」
「そうだったのか……」
「それで、これからどうするんだ……?」
「もちろん、魔王を倒すつもりだ……」
「そうか……。なら、私も協力させてくれないか?」
「オラリイアさんが、手伝ってくれるんですか?」
「ええ……。困っている人を助けるのが勇者だからね……」
「ありがとうございます!」
こうして、シンヤたちは勇者パーティーと合流した。
勇者パーティーと合流してから数日が経った。その間はひたすらレベル上げを行い、シンヤのレベルは30まで上がっていた。
「よし……。これでレベルはカンストしたはずだ……」
「やっと終わったか……。結構長かったな……」
「そうだね……」
「シンヤはもうレベルは上がったのか?」
「いや……。まだだよ……」
「そうなのか……。でも、早く上げた方がいいぞ……。いつまた、強い敵が現れるかも分からないからな……」
「分かってるよ……」
「それじゃあ、今日は休んで、明日になったら、すぐに出発しようぜ!」
「うん……。そうするか……」
こうして、シンヤたちは眠りについた。
次の日になり、シンヤたちはダンジョンを出発した。すると、前方に大量の魔獣の姿があった。
「これは一体……?」
「恐らく、このダンジョンのボスだった、ゴブリンロードだと思うよ……」
「そうなのか……。とりあえず、倒さないとな……」
シンヤたちが、ゴブリンロードを倒しに向かおうとした時、オラリイアが止めた。
「ちょっと待ってくれ……。ゴブリンロードと戦うのは危険すぎる……。ここは、私が引き付けるから、みんなは他のモンスターを倒してきてくれないか……?」
「分かった……。気を付けてね……」
「任せてくれ……」
「それでは、行って来ます……」
シンヤたちは、他のモンスターの討伐に向かった。しばらくすると、他のモンスターも倒し終えたので、シンヤは、オラリイアの元へ向かった。
「オラリイア……!大丈夫か……!?」
「ああ……。なんとかな……」
「怪我とかはないみたいだな……?」
「ああ……。それより、ゴブリンロードは倒したぞ……」
「本当か!?」
「ああ……。でも、少しだけ傷を負ってしまったから、回復魔法を使ってもらってもいいかな……?」
「了解だ……」
シンヤはオラリイアに近づき、傷口に手をかざし、光属性の回復魔法を使った。
「ヒーリングアントラード……!」
「凄いな……。一瞬で治ってしまったよ……」
「良かった……。他に痛むところはあるかい?」「いや……。特にないよ……。本当にありがとう……」
「気にしないでくれ……。仲間なんだから当然のことさ……」
「それでもありがとう……。お礼に何かしたいんだけど、欲しいものとかあるか……?」
「いや……。今は別にないよ……」
「そっか……。まあ、気が向いたら言ってくれ……」
「分かった……。ところで、これからどうするんだ……?」
「そうだな……。ひとまず、魔王城に行ってみようと思うんだが、一緒に来るか……?」
「もちろん行くとも……。私たちを助けてくれた恩返しをしないといけないしね……」
「助かるよ……」
「あっ……。一つお願いがあるんだが、いいか……?」
「何だ……?」
「実は私の故郷にも魔王軍が攻めてきていてね……。助けてあげて欲しいんだよ……」
「そうなのか……。なら、助けないとな……」
シンヤたちは、オラリイアの故郷である、デスロト国へと向かった。そして、数時間後、ようやく到着することができた。
しかし、そこには想像を絶するような光景が広がっていた。街は荒れ果てており、至る所で火の手が上がっていた。
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