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 シンヤは魔法を唱えた。
「腹水斬!」
シンヤは水を纏わせた剣で斬りつけた。すると、サレルノダスは血を流した。
「くっ……。いったい何をしたんだ……!?」
「簡単な話さ……。水を高速で振動させて、斬ったんだよ……」
「なっ……。まさか……」
「そうだ……。お前と同じ技を使ったのさ……」
「くっ……。だが、私はまだ戦える……」
「それはどうかな?次はもっとすごい攻撃をしてやるよ!」
シンヤは魔法を唱え始めた。
「我が身に宿れ!精霊の力!海虎の奢り!アラビアン・タイタニン!」
すると、巨大な水でできた竜が現れた。その大きさは天井を突き破るほどの大きさだった。そして、勢いよく回転しながら、サレルノダスに襲いかかった。
「なんだこれは……!?こんなもの、くらうわけにはいかない……!」
サレルノダスは必死に逃げようとしたが、逃げられなかった。そして、水でできた竜がサレルノダスを噛み砕き、飲み込んでしまった。
「ぐわぁー!!」
そして、サレルノダスは悲鳴を上げながら、消滅した。
「やった……」
シンヤは疲れ果ててその場に倒れ込んだ。すると、ヴァギラが拍手をしながら近づいてきた。
「お見事です……」
「ありがとう……」
「ところで、あなたの名前を聞いてもいいですか?」
「ああ……。俺はシンヤだよ……」
「シンヤさんですね……。私は魔王軍四天王の一人、ヴァギラ・デンコ・モッツァーノと言います……」
「よろしくね……」
二人は握手を交わした。その時、部屋の入り口の方から声が聞こえてきた。
「ヴァギラ殿……。どこにいるのだ……?」
「あら……。誰か来たみたいね……。また後で会いましょう……」
「分かった……」
ヴァギラは部屋の外に出て行った。すると、入れ替わるように一人の男が入ってきた。
「シンヤ!無事か!?」
男は勇者パーティーの一員である、エレイナだった。
「あっ……。エレイナじゃないか!久しぶりだな!」
「本当に心配したんだぞ!」
「ごめん……」
「まあ、いいけど……。それよりも、あの女は誰だ?」
「ヴァギラっていう、魔王軍の幹部だよ……」
「えっ……!?あいつが……!?」
「うん……」
「そんなやつと戦ってたのか……」
「なんとか勝てたよ……」
「シンヤって、結構強いのな……」
「いや、今回は運が良かっただけだと思う……」
「謙遜するなって!それより、これからどうするつもりだ?」
「とりあえず、勇者たちと合流するつもりだけど……」
「そうか……。なら、一緒に行こうぜ!」
「ああ……。そうだね……」
こうして、シンヤはエレイナと一緒に、勇者たちの元に向かうことにした。
「ところで、このダンジョンの出口はどこにあるの?」
「ここからだと、東に進んだところにあるはずだ」
「じゃあ、行ってみよう」
シンヤたちは東に向かって歩き出した。
しばらく歩いていると、目の前に大きな扉が見えてきた。
「ここかな……?」
「多分そうだな……」
シンヤはその大きな扉を押し開けた。すると、そこには、勇者たちがいた。
「みんな……!」
「シンヤ……!?生きていたのか!?」
「よかった……。生きていてくれたんだな……」
勇者パーティーのメンバーは涙を流していた。シンヤは仲間との再会を喜んだ。
「でも、どうやって生き延びたんだ?」
「実は、ヴァギラという、魔王軍の幹部と戦ったんだ……。そのおかげで、ここまで来れたよ……」
「そうなのか……。よく頑張ったな……。それで、他の奴らはどうなった?」
「俺の仲間は全員殺された……」
「そっか……。やっぱり、魔王軍はかなり手強かったのか?」
「かなり苦戦させられたよ……」
「そうか……。シンヤだけでも生き残ってくれて、本当に良かった……」
「ありがとう……。それに比べて、俺は何もできなかった……。ゴブリンキングに殺されそうになった時も、魔王軍の幹部を倒したのだって、全部、エレイナのおかげなんだ……」
「そんなことないぞ……?シンヤがいたからこそ、私たちは生き延びられたんだ……。それに、私たちを助けに来てくれたのも、シンヤだろ……?それだけで十分さ……」
「ありがとう……。そう言ってもらえるだけで嬉しいよ……。あっ……。そうだ、紹介しないとな……。こいつは俺の友達の……」
「初めまして……。俺はシンヤの仲間のエレインです……」
「ああ……。私は勇者のオラリイア・ダ・デスロトイアよ。よろしくね……」「こちらこそ、よろしくお願いします……」
二人が挨拶をしていると、後ろから声が聞こえてきた。
「あれっ……?あんたは確か……。あの時の男じゃないかい!?」
その人物は魔王軍の幹部の一人である、ジャマゾだった。
「お前は……!」
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