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 「どこに?」
「ちょっとやることができたんだ」
「そう……。なら私は帰るとするわ」
セリーナは人の姿に戻ると、その場から離れていった。
シンヤは急いでカアレイカ達のところへと戻った。
「おーい!」
「シンヤさん!」
「お前どこに行ってたんだ!?」
「悪い……。実は……」
シンヤは先ほどあった出来事を説明した。
「なるほどな……。確かに、それは必要なことかもしれないな……」
「そうだな……」
「それで、これからどうしますか?」
「とりあえず、街に戻ることにしようぜ……」
「賛成だ……」
シンヤ達は、街の方へ歩いていった。
そしてセリーナは、シンヤ達がいなくなった後、森の奥へと向かった。そこには、大きな岩があった。
「ようやく見つけた……。もうすぐだからね……」
セリーナは、その岩を優しく撫でながら呟いた。
シンヤ達4人は、無事カアレイカの街に到着した。門番の兵士は、シンヤの顔を見るとすぐに通してくれた。
そのまま宿へと向かう。部屋に入ると、ベッドの上に横になった。疲れが溜まっていたのか、睡魔に襲われる。しばらくすると、3人とも寝てしまった。
シンヤも眠ろうとした時だった。部屋の扉をノックする音が聞こえる。
「誰だろう……」
「私よ……。入ってもいいかしら?」
この声はセリーナか……。どうしたんだろうか……。
「いいけど……」
「失礼するわね……」
部屋に入ってきたセリーナは、なぜかバスタオル一枚という格好をしていた。
「ど、どうしてそんな格好をしてるんだよ!?」
「だって……。私の裸を見たじゃない……。それなら、あなたにも見せてあげようと思ってね……」
「いやいや!そういう問題じゃなくて……」
「大丈夫よ……。ちゃんと洗ってあるから……」
「そういう問題でもないってば!」
シンヤは、顔を赤くしながら答えた。
「それにしても、意外と初心なのね……」
「当たり前だろ!?俺はまだ高校生なんだぞ!」
「コウコウセイ?よくわからないけれど、とにかく服を脱いでくれる?」
「なんでだよ!?」
「あなたの身体を見たいのよ……。私を救ってくれた人の体をね……」
「そ、そうなのか……?」
「ええ……。さぁ、脱ぎなさい!」
「なーんてね」
セリーナは悪戯っぽく笑うと、シンヤに抱きついた。突然のことで、シンヤは何が起きたかわからなかった。
「なっ!なにしてんだよ!」
「ふふっ……。驚いたでしょ……」
「驚くだろ普通!」
「でも、おかげで元気が出たでしょ?」
「まぁな……」
「ならよかったわ……」
セリーナはシンヤから離れると、笑顔を見せた。
「今日は本当にありがとう……。あなたのおかげで、私は救われたわ」
「気にすんなって……。困った時はお互い様だしさ……」
「それでもよ……。またいつか会えるといいわね……」
「そうだな……。機会があれば、またどこかで……」
「ええ……。それじゃあ、さよなら……」
セリーナはそう言うと、窓から外へ飛び出していった。
それから1週間が過ぎた。
シンヤ達は、ギルドの依頼をこなしていた。
セリーナは、あれ以来一度も姿を見せていない。
「セリーナさん……来ないですね……」
「ああ……。どこにいるんだろうな……」
「もしかしたら、俺たちのことなんて忘れてるんじゃねぇか?」
カアレイカの街で、セリーナのことを尋ねても、誰も知らなかった。
「うーん……。やっぱりあの時のことは夢だったのかな……」
4人で歩いていると、路地裏の方から悲鳴が聞こえてきた。急いでその場所に向かうと、そこにはフードを被った男がいた。男は逃げようとしたところを、シンヤが捕まえる。
「おい!何やってんだ!」
「くそっ……。離せ!」
「お前……セリーナじゃないか!?」
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