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 「はいはい、喧嘩はそこまでにしておきましょう」
「そうですね、すみませんでした」
「ふん!」
三人は洞穴に入っていった。
「ふう、ようやくゆっくりできるぜ」
「疲れました……」
「おつかれさま」
セリーナはタカテルの背中をさすった。
「ありがとうございます」
「ねえ、これからどうするの?」
「そうですね、まずはこの辺りを調べてみようと思います」
「わかったわ」
「それでは行ってきます」
「気をつけてくださいね」
「ええ、あなたたちもあまり無理をしてはいけませんよ」
「わかっているぜ」
「はい!」
タカテルは奥の方へと向かった。
「うーん、特に変わったところはないですね」
「本当にここにいるのかしら?」
「わかりません、ですがまだ諦めるのは早いでしょう」
「そうよね、がんばりましょう」
「はい」
二人はさらに奥に進んだ。「おかしい、ここまで何もないとは……」
タカテルは何もない洞窟を見て違和感を覚えた。
「セリーナさん、この辺には竜はいなかったんですか?」
「いいえ、私が来た時には誰もいませんでした」
「そうですか……」
「もしかしたら別の場所にいるんじゃないでしょうか?」
「確かにその可能性はありますね……」
「一度戻りましょうか?」
「そうですね……」
二人は引き返そうとしたその時だった。
「グオオオォッ!!」
突然、竜が現れた。
「なっ!?」「きゃあっ!?」
竜は二人に向かって炎を吹き出した。
「危ない!」
タカテルは魔法で壁を作り、炎を防いだ。
「大丈夫ですか?」
「ええ……」
「こいつが例の竜か?」
「おそらくそうでしょう、油断しないように行きましょう」
「おう!」
「グアアァッ!!」
竜は大きな爪を振り下ろした。二人はそれをかわした。
「くらえ!」
ダロスは剣を抜き、竜を切りつけた。
「ガアッ……!」
竜は怯んだ。
「今だ!」
タカテルとセリーナは同時に攻撃を加えた。
「これで終わりだ!」
竜の心臓を貫き、竜を倒した。
「やった……!倒したぞ!」
「やりましたね」
「ああ、だがまだ終わっていないみたいだな」
見るとそこには新たな竜がいた。
「くそっ!次から次に……!」
「また別の個体ですか……」
「どうします?」
「仕方ありません、倒しましょう」
「わかりました!」
三人は再び竜に立ち向かった。
その頃、ダロスたちはというと……。
「はぁ、はあ、はぁ、ちくしょう、どこに行きやがったんだ!」
ダロスは竜を探し回っていた。すると目の前に人影が見えた。
「誰だ?お前は?」
「ふむ、貴様がダロス・エンプレスか」
「そうだが、俺のことを知っているのか?」
「ああ、少しばかり調べさせてもらったよ」
「ほう、一体何者だ?」
「私はジグルド、魔王軍の幹部だよ」
「なに!幹部だと!?」
「ははは、驚いているようだな」
「そりゃ驚くだろうが!」
「まあ落ち着け、今日は戦いに来たわけじゃないんだ」
「なんだって?」
「実は頼みがあって来たんだよ」
「頼みだと?」
「そうだ、ある人物を探していてな、手伝って欲しいのだ」
「断る、俺は忙しいんだ」
「そうか、なら仕方ないな」
「じゃあな」
ダロスはその場を去ろうとした。
「待て、話は最後まで聞け」
「なんなんだ、さっきから!」
「だから、手伝えと言っているんだ」
「ふざけるな!」
「やれやれ、面倒だな……」
ジグルドは指を鳴らした。
「何をする気だ?」
「こうするのさ!」
すると、どこからか竜が現れた。
「なっ!?」
「どうだい?驚いたかい?」
「どうして竜がいるんだ?」
「それは私が召喚したからだ」
「なに!?」
「おい、そこの女!こっちへ来い!」
セリーナは恐る恐る近づいてきた。
「よし、そのまま動くなよ……」
「ひっ……!」
「ちょっと痛いかもしれないけど我慢してくれ」
「い、いや……」
「やめろ!」
「おっと、下手に動かない方がいいぜ?」
「くっ……」
「それでは行くぜ……」
ジグルドはセリーナの首筋に手を当てた。
「うぅ……」
セリーナは気を失った。
「おいっ!何をした!」
「すぐにわかるさ……」
しばらくすると、セリーナの体が光り始めた。
「これは……」
「さあて、どんな姿になるかな?」
光が消えるとそこにはセリーナの姿はなかった。
代わりにいたのは巨大な蛇だった。
「こいつは……」
「見ての通り、彼女は私の使い魔になったのさ」
「そんなことが……」
「信じたくない気持ちは分かるが本当だ」
「なんてことを……」
「これで分かっただろう?私に協力してくれるね?」
「くっ……」
ダロスは悩んだ。このままではセリーナが危険にさらされる。
しかし、ここで断ったら自分が危険な目にあう。どちらを選んでも結局は同じ結果になってしまう。
(どうすればいいんだ?)
「ほら、早く決めてくれ」
「ぐっ……」
「ダロス!」
突然、タカテルの声が聞こえた。
「タカテル!」
「ダロス!無事でしたか!」
「ああ、なんとかな……!」
「よかったです……!」
タカテルはホッとした表情を見せた。
「ダロス、こいつの狙いはあなたですよ」
「どういうことだ?」
「その女を使ってあなたの力を試すつもりのようですね」
「そういうことなのか?」
「ええ、おそらく……」
「なるほど、どうやらバレてしまったようだな」
「ダロス、ここは私たちに任せてください」
「だが……!」
「大丈夫です、必ず勝ちますから!」
「わかった……頼む!」
「任せなさい!」
「ふん、二人だけで勝てると思っているのか?」
「もちろん!」
「ほう、言うじゃないか」
「行きましょう、タカテル!」
「はい!」
二人はジグルドに向かっていった。
「はぁっ!」
「ふん!」
二人の攻撃は弾かれた。
「なかなかやるな……!」
「はあっ!」
タカテルは矢を放った。
「甘い!」
しかし、簡単に避けられた。
「隙だらけだぞ!」
「しまった!」
「ははは、もらった!」
ジグルドは剣を振り上げた。
「危ない!」
「なに!?」
突如現れた人影によってジグルドの攻撃は防がれた。
「お前は……」
「久しぶりだな、魔王軍幹部さんよ」
そこに立っていたのはかつて戦った男、ラビオリオ・エトゥーだった。
「貴様……!」
「また会ったな、ジグルド」
「まさかこんなところで会うとは思わなかったよ」
「俺も同じさ」
「あの時、死んだと思っていたのだがな」
「残念ながら生きてるんだよなぁ」
「そうか、まあいいさ」
「俺はあんたをぶっ飛ばしに来ただけだからな!」
「面白い、やってみるがいい!」
「言われなくてもやってやるぜ!」
ラビオリオはジグルドに斬りかかった。
「ふむ、少しはできるようだがまだまだだな」
「なっ!?」
ジグルドはあっさりと攻撃をかわした。「この程度か?」
「ちぃ……!」
「次はこちらから行くぞ!」
「ぐわあぁっ!」
ジグルドの拳はラビオリオを吹き飛ばした。
「なんだ、もう終わりか?」
「まだ……終わってねぇよ!」
「ならかかってくるといい」
「そうさせて貰うぜ!」
「やれやれ……」
ジグルドは再び攻撃を仕掛けた。しかし、今度は避けずに攻撃を受け止めた。
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