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第十七話

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 そのあとは在宅のアルバイトにもたくさん応募している。しかしどれも怪しいものだったりとか、ちゃんとしてそうなところでは
応募者が数百名いるためか全く決まらないという状態である。(利用している求人サイトでは応募者の数が表示されるのである)もっとも在宅じゃない応募者5名にも満たないものにも応募して落ち続けているためそもそも数の問題で落ちているわけではないのだろうが……。そんな中、近所で募集している在宅バイトを見つけた。こういうタイプのものは最初に現地である程度研修を受けて在宅に移行するというものなので全国各地から応募が殺到するということがないため応募者は5人とかせいぜい10人ほどである。それでもこのご時世、決して倍率は低くないらしく応募してもすぐに埋まったと返されるのが多かったのだが一つだけ面接(リモート)させてもらえるものがあった。そこではまずオンライン研修を受けた後に現地で研修を受けてそれからリモート業務に移行するというものだという。応募者がほとんどいなかったからなのか審査もなくやりたいと言えばその場で決まった……がしかし、最初のオンライン研修というものがなかなかの量でありしかもオンライン研修では1円も給与が発生しないというものだった。それはまあ最初に聞いてはいたのだがやってみると本当にかなりの時間を取られしかもテストに合格しないといけないということもあり最初は頑張ったものの一過程を終わらせるのに数時間……それが20時間分も用意されていた……なぜ無給でここまでやらなければいけないのかと思いそのまま挫折してしまったのは言うまでもない。

 トラックでの構内移動作業の派遣の求人に応募した。極度の方向音痴なのでルート配送とかそれ以上は絶対無理なのはわかっていたが構内を移動するぐらいならさすがに何とかなるだろうと思ったからである。面接のため現地へ赴くといきなりトラックに乗車させられた。実車での試験があるなどどこにも書いてなかったため(こういった仕事に応募したときに実際に運転させられたのは一度だけで、それも当然求人ページにちゃんとそのことについて記載されていた)免許の条件である眼鏡をそもそも持ってきていなかったから拒否しようとも思ったが結局運転することになってしまった……半クラにしてゆっくり発進してどこに行くのか聞いたらそのまま門を出て外を走るよういわれた。いや、いきなり公道走らせるのかよ……前に一度実車テストがあったところはルート配送でも実技のときは構内を移動するだけだったのに、事故ったらどうする気なんだ?
もう色々突っ込みどころ満載だったのだが言わされるまま敷地を出て走り始めると交差点があったので一度止まった。ここで問題が発生した。そこは結構傾斜のある坂であったことを忘れていたため発進するためにブレーキを離したらトラックが下がり始めたのである……すぐ半クラにしてアクセルを煽ったのだが(低速トルクのあるディーゼルのトルクでこれをやるのは良くないのだがほとんどトラックなんて乗ったことがないこともありパニック状態でついやってしまった)隣の面接官が大慌てで
「もう良いもう良い運転変わって!」
と自分以上にパニクっていた。いやおせーよ、いきなり何も言わずに乗せて今更ここでビビるようなことなのかと呆れてしまった……(まあ向こうも普通に運転できるものだろうと思っていたらしいから相当だったろうが)
その場で面接は終了というかそもそもなかったことにと言われそそくさと帰されたのは言うまでもない。
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