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第四話

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 この時受けたバイトは自動車部品を製造する工場であった。歩いて40分ほどかかったのだが冬ということもあり当時はそこまで苦にならなかった。(まあ結果的に一回しかそこへ行く必要がなかったらと言われればそれまでなのだが)
またいつものようにフォークリフト資格があれば歓迎とか優遇するだとか書かれており、無くても大丈夫となっていたため実務経験がない自分でもプラスになることはあってもまいなすにはならないだろうと思って応募した。実際面接で経験がないということを話しても
「すぐ慣れるから大丈夫」
と言われたし、工場見学をさせてもらいバイトでの作業工程を事細かく説明してもらった。これだけやってもらえたのはその当時はじめてのことであり、今回はもしかしたら受かるかもと淡い期待を抱いたものの数日後には履歴書が返ってきた……そういえば面接官が言っていたことを思い出した。
「まだ募集期間あるからそれまで待ってもらいたい」
という発言と
「もうすでに何人かは即日決まってもう働いてもらっている」
と言っていたことを……そう! つまりこのバイトは即日採用してもらえなければ実質落ちたと言われたのと同じだということだったのだろう。実際これから徐々にわかっていくことなのだがアルバイトにおいてはその場で採用されなければ後程受かることなんてほとんどないのである。そのバイトの面接の帰り道、近くでちょうど履歴書を送って書類審査をしてもらっていた企業の下見をした。近くにあったからである、しかしそこは即書類ではねられた。マジで何しに往復80分間も歩かされたのだろうか……?

 不思議なことが起きた。バイトの書類審査に受かったのである。前回書いたように同時期に受けた書類審査では一瞬ではねられて履歴書が戻ってきたため確実にここも書類おちだと思っていたところなのにだ。書類で通ったのならもしかしたら……と思って内心期待しながら面接を受けに行った。面接では

「君の住所、○○ってあそこのマンション? なら近いよね、ここから数分のところじゃん、たしか工事でこの現場行ったことあるから知ってるわ」
と完全に家バレしていたことがわかりもしものときバックレしても逃さないぞと言われているみたいでけっこう怖くなった。またここもフォークリフト資格所持者歓迎と書かれていたのでそれが評価されたのかとも思ったが

「あー今フォークの資格って高校生でもみんな持ってるよね、学校で取らされているもんなのかな?」

と言っていたため別にそうではなかったようである。結局、後日連絡という実質的な不採用宣言を受けてそののち履歴書が返ってきた。
そしていつも通りの日常に戻ったのだった。
ビリビリビリビリリリィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!
「ぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
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