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第三話
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それから受けたバイトはタコやイカの加工工場であった。正社員募集のところにアルバイトも同時募集と書かれていたため応募した。バイト募集がないところはともかくいきなり正社員はやはりハードルが高いと思ったからである。徒歩で20分弱とのことだったが、前回と同じようにグーグルマップとちょっと違うルートを進んだためかまた遅刻しそうになってしまったが、なんとか走って間に合い職場に入ることができた。事務職っぽいおばさんに面接室に案内されてしばらくすると恰幅の良い眼鏡をかけたおっさんが現れた。どうやらここの主任らしい。電話でも聞かれたことと同じ20㎏くらいの重いものを持つ作業があるが体力や腰に問題はないかを聞かれたぐらいで(その当時城の中で自重ではあるが謹直トレーニングをしていたのでとりあえず自信はあると答えた)あとは工場の前にカウンター式のフォークリフトがあったため資格のある自分もそれを使用して活躍できたら……みたいなことをアピールした、そして最後にあるバイトからでも良いというと
「えっアルバイト希望だったの?」
と不思議な顔をされたがその後すぐに履歴書を返され採用の場合は電話をすると言われ面接は終わる。当然連絡などこなかった。また数か月後そこが求人を出していたため再応募するも例によって面接すらしてもらえず書類のみで不採用を言い渡されたのであった。
4度目に受けたのはバイトというか業務委託の仕事、つまり雇用契約を結ぶわけではない完全出来高制のコピー作業だった。コピー1枚につき0.5円とかで月に得られる報酬はせいぜい2~3万円だという。とはいえ、会社は平日はもちろん土日もほぼ毎日空いており朝の8時ごろから19時あたりまでの間で自分の好きな時に出社していられる時間だけ作業できるという条件は城の中で毎日好きに寝て食べて生活をやっていた人間にとってかなり都合の良いものに感じたので応募することにした。こんな仕事ですら写真付き履歴書を用意して面接に行かなければならないというのは面倒ではあったが業務委託の作業なため最低時給すら稼げないものだったしこれなら自分でも受かるのではないかとひそかに期待していた。しかし結果はメールで不合格……同じような考えをした人間(おそらく主婦が多いと思われる)はほかにもいたようである……。まあ自分があまりに不審者過ぎてほかに応募がなかったにもかかわらず落としたという可能性もあるが、その後全く募集がかけられてないようなのでおそらくほかにもいたのだと思いたい。いやいなくても受からなかっただろうなどうせ……。というわけで結果は全滅だった。だがまだ2つほど面接を受けたバイト募集は残っていた、しかし3度も受けてさすがにもう緊張とかはしなかったが……今度は逆に全く受からないのではという不安の方が強くなってきた。
「いやでも、もしかしたら今回は受かるかも……」
と自分に言い聞かせながら面接会場のビルに入っていく。
「お電話した城です」
「あ~城君ね!じゃあこの書類に記入して」
と履歴書を渡す。「あの、ここって……」
「ん?」
「いや、なんでもないです」
と余計なことは言わずに書類を記入して面接会場の中に入っていった。
まず目に入ったのは面接官と思われる白髪のおじさんだった。もう初老に突入しようかというぐらいで自分はまだ20代なので年の差は結構あったが、そのおじさんも自分のような若い人間を見て驚いたのかちょっと変な顔をしていた。まあそれはいいとして問題はその後ろにいたもう一人の人物であった。そうこの面接は二人のおじさんが面接官だったのだ。
「ではまず自己紹介から」
と白髪のおじさんが言う。
「はい、城です」
と名前を名乗るとおじさんたちは顔を見合わせてうなずく。
「あの……お二人とも面接官なんですか?」
と聞くと今度は白髪のおじさんもうなずいた、そこで自分も察したのだ。あ、これ俺一人に二人付いてるパターンだ。これは落ちたわ……絶対受かる気がせんぞ……そう思いつつもとりあえず履歴書を見ながら質問されるので、バイトに応募した経緯や学校名など聞かれるままに答えていき、最後に
「今までにやったバイトの職種は?」
と聞かれ俺はついこの間まで城にいました……とも言えず
「まあ……いろいろです」と答えた。するとおじさんたちはまた顔を見合わせうなずいた。これはもうだめだな完全に落ちたなと確信した。そして最後に何か質問はあるか?と聞かれたので俺は
「あの……もしよければこの仕事について詳しくお伺いしたいんですけど……」
と言ってみたものの詳しく教えてくれることはなくまた連絡すると言われ返された。結果は当然不採用……。
「えっアルバイト希望だったの?」
と不思議な顔をされたがその後すぐに履歴書を返され採用の場合は電話をすると言われ面接は終わる。当然連絡などこなかった。また数か月後そこが求人を出していたため再応募するも例によって面接すらしてもらえず書類のみで不採用を言い渡されたのであった。
4度目に受けたのはバイトというか業務委託の仕事、つまり雇用契約を結ぶわけではない完全出来高制のコピー作業だった。コピー1枚につき0.5円とかで月に得られる報酬はせいぜい2~3万円だという。とはいえ、会社は平日はもちろん土日もほぼ毎日空いており朝の8時ごろから19時あたりまでの間で自分の好きな時に出社していられる時間だけ作業できるという条件は城の中で毎日好きに寝て食べて生活をやっていた人間にとってかなり都合の良いものに感じたので応募することにした。こんな仕事ですら写真付き履歴書を用意して面接に行かなければならないというのは面倒ではあったが業務委託の作業なため最低時給すら稼げないものだったしこれなら自分でも受かるのではないかとひそかに期待していた。しかし結果はメールで不合格……同じような考えをした人間(おそらく主婦が多いと思われる)はほかにもいたようである……。まあ自分があまりに不審者過ぎてほかに応募がなかったにもかかわらず落としたという可能性もあるが、その後全く募集がかけられてないようなのでおそらくほかにもいたのだと思いたい。いやいなくても受からなかっただろうなどうせ……。というわけで結果は全滅だった。だがまだ2つほど面接を受けたバイト募集は残っていた、しかし3度も受けてさすがにもう緊張とかはしなかったが……今度は逆に全く受からないのではという不安の方が強くなってきた。
「いやでも、もしかしたら今回は受かるかも……」
と自分に言い聞かせながら面接会場のビルに入っていく。
「お電話した城です」
「あ~城君ね!じゃあこの書類に記入して」
と履歴書を渡す。「あの、ここって……」
「ん?」
「いや、なんでもないです」
と余計なことは言わずに書類を記入して面接会場の中に入っていった。
まず目に入ったのは面接官と思われる白髪のおじさんだった。もう初老に突入しようかというぐらいで自分はまだ20代なので年の差は結構あったが、そのおじさんも自分のような若い人間を見て驚いたのかちょっと変な顔をしていた。まあそれはいいとして問題はその後ろにいたもう一人の人物であった。そうこの面接は二人のおじさんが面接官だったのだ。
「ではまず自己紹介から」
と白髪のおじさんが言う。
「はい、城です」
と名前を名乗るとおじさんたちは顔を見合わせてうなずく。
「あの……お二人とも面接官なんですか?」
と聞くと今度は白髪のおじさんもうなずいた、そこで自分も察したのだ。あ、これ俺一人に二人付いてるパターンだ。これは落ちたわ……絶対受かる気がせんぞ……そう思いつつもとりあえず履歴書を見ながら質問されるので、バイトに応募した経緯や学校名など聞かれるままに答えていき、最後に
「今までにやったバイトの職種は?」
と聞かれ俺はついこの間まで城にいました……とも言えず
「まあ……いろいろです」と答えた。するとおじさんたちはまた顔を見合わせうなずいた。これはもうだめだな完全に落ちたなと確信した。そして最後に何か質問はあるか?と聞かれたので俺は
「あの……もしよければこの仕事について詳しくお伺いしたいんですけど……」
と言ってみたものの詳しく教えてくれることはなくまた連絡すると言われ返された。結果は当然不採用……。
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