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第八十四話

　冬の寒い夜、東京の郊外に住む大学生の浩一は、大学のサークルの忘年会に参加していました。夜が更けるにつれて、彼は終電を逃してしまい、仕方なく深夜の電車を待つことにしました。駅は静まり返っており、ホームにはほとんど人がいませんでした。

浩一はベンチに座りながら、次の電車が来るのを待っていました。ふと、彼の目に留まったのは、ホームの端にある古びた広告掲示板でした。その掲示板には、昔の電車のポスターや告知が貼られており、何とも不気味な雰囲気を醸し出していました。広告の中には、「昭和38年3月15日発」という古い日付が書かれたポスターもありました。

その時、ホームの奥にある駅の時計が不自然に早く進み始めました。浩一は不安を感じながらも、電車が来るまで待つことにしました。しばらくすると、突然、ホームの先に一台の古い電車が現れました。電車は昭和の時代を感じさせるもので、外見が古びていて、まるで時代から取り残されたかのようでした。

浩一は驚きながらも、電車が来たことで安心しました。電車に乗り込むと、車両の中も非常に古く、座席や内装がまるで昭和時代そのものでした。彼はこの電車が珍しいものであると考えながら、空いている座席に座り、電車の運行が始まるのを待ちました。

電車はゆっくりと発車し、浩一は外の景色を楽しみながら、次の駅に着くのを期待していました。しかし、電車が進むにつれて、外の景色はどんどん暗くなり、田舎の風景からまったく見知らぬ場所へと変わっていきました。窓の外には霧が立ち込め、何も見えなくなりました。

次第に電車の中にも異変が起き始めました。乗客たちは誰も話さず、ただ静かに座っているだけで、浩一は不安を感じました。彼が周りを見回していると、電車の中に古い服を着た人々が静かに座っているのに気づきました。彼らの表情は無表情で、まるで意識がないかのようでした。

電車がさらに進むと、突然、車両全体が暗くなり、電灯が消えました。浩一は携帯電話のライトを使って周りを照らしましたが、車両内には奇妙な影が浮かび上がり、影たちはまるで彼に近づこうとしているかのようでした。彼は恐怖に駆られ、電車がいつ着くのか尋ねようとしましたが、誰も答えてくれませんでした。

電車が止まることなく、浩一は恐怖でいっぱいになりながらも、乗り続けました。しばらくすると、電車は突然、どこかの地下深くにある駅に到着しました。駅の構内は完全に無人で、どこも薄暗く、まるで廃墟のようでした。

浩一は駅から外に出ようとしましたが、出口がどこにも見当たらず、駅の中で迷ってしまいました。駅の中には古びた広告や、無数の埃をかぶった掲示板が並んでおり、その中には「昭和38年3月15日」の文字が再び目に入りました。彼はその日付が何か意味があるのかと思い、急いで駅を脱出しようとしました。

その後、浩一は必死で駅の中を探索し続けましたが、時間がどんどん経過していくのを感じました。彼は遂に、電車の乗客たちがまるで亡霊のようにその駅の中に残っていることに気づきました。彼らは一様に古い時代の衣装を着て、彼に対して無表情でじっと見つめていました。

最終的に浩一は出口を見つけることができましたが、駅を出ると、再び深夜の駅のホームに戻っていました。電車は消え、周囲には何も残っていませんでした。彼は恐怖と疲労で震えながら、どうにか帰宅することができましたが、その後もその夜の出来事は決して忘れられず、電車の中での出来事は彼の心に深い傷を残しました。

その駅ではその後も、消えた電車の話が語り継がれるようになり、誰もその電車に乗らないようにと注意されるようになりました。電車がどこから来たのか、そしてどこへ行ったのかは、今も謎のままです。