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第八十二話

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 ある地方の田舎町には、長い間使われていない古びた家が立ち並ぶ地区がありました。地元の人々はその地区を避けるようにしており、「迷い込むと二度と戻れなくなる」という噂が広まっていました。しかし、ある日、都会から引っ越してきた若いカップルがその地区の古い家を購入しました。彼らは噂話を軽く受け流し、リフォームして新しい生活を始めるつもりでいました。

引っ越しを終えたその晩、カップルは古い家に宿泊しました。夜が深まるにつれて、家の周りには異常な静けさが広がり、外からは何の音も聞こえませんでした。彼らは早めに就寝し、静かな夜を過ごしましたが、翌朝には奇妙なことが起こり始めました。

朝になると、町の風景がまるで異なっていました。彼らの家の前には、知らないはずの町並みが広がっており、以前の家や道がどこにも見当たらなくなっていました。周囲を歩いてみると、全ての建物が古びていて、どこか異様な雰囲気を漂わせていました。町には人影が全くなく、ただ風の音だけが響いていました。

カップルは最初は迷子になっただけだろうと考えましたが、町を探索しても自分たちが知っている風景に戻ることはできませんでした。何度も歩き回るうちに、彼らは町の中に古い建物や店があることに気づきましたが、全てが誰かが放置したかのように朽ち果てていました。

日が暮れると、町に突然人々が現れましたが、その姿は非常に不自然でした。彼らはまるで影のように、顔を見せることなく、ただカップルを見つめていました。カップルが話しかけようとしても、誰も返事をせず、ただじっと見守るだけでした。

次第にカップルは町の人々と接触することを試みましたが、何も得られず、ますます不安が募っていきました。夜が深まるにつれて、町の静けさは不気味さを増し、彼らの周りには奇怪な影が現れるようになりました。影はまるで生きているかのように動き回り、彼らに何かを伝えようとしているかのようでした。

その夜、カップルは再び家に戻り、恐怖に耐えながらも寝ようとしましたが、眠ることができませんでした。突然、家の中で奇怪な音が聞こえ、壁や床が揺れ始めました。彼らは恐怖でいっぱいになり、家を出ようとしましたが、ドアが開かなくなっていました。

翌朝、町を探索するも、町の人々は全く同じ姿で、何も変わらず、カップルに対して無言で見守っていました。カップルは次第に精神的に追い詰められ、どこにも逃げ場がないことに気づきました。彼らがついに諦めて静かに座っていると、町の人々が彼らの周りに集まり、まるで彼らを囲むように立ち続けました。

その後、町の住人は一人一人が突然消えたかのように姿を消し、町全体が再び静寂に包まれました。カップルは再び孤立し、その後の行方は誰も知りません。彼らの家もまた放置され、町の話は風化していきました。地元の人々はその町に近づくことはなくなり、その町は永遠に誰も近寄らない場所となりました。

そして今でも、その町には迷い込んだ者たちが戻ってくることを期待して待っているかのように、町の中で奇怪な静けさが広がっているのです。
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