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第七十五話

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 ある町外れに、誰も近寄らない「闇の森」がありました。その森は古くから呪われていると信じられ、夜になると奇妙な声が聞こえると言われていました。


ある晩、地元の高校生グループが好奇心に駆られて、その森に入ることにしました。彼らは懐中電灯を持ち、互いに冗談を言い合いながら奥へと進んでいきました。しかし、森の奥深くに進むにつれて、異様な静けさが周囲を包み込み、鳥や昆虫の音すら聞こえなくなりました。


突然、一人の少年が何かに足を引っ掛けて転びました。彼が起き上がろうとしたとき、周りの木々の間から低いうめき声が聞こえてきました。その声は次第に大きくなり、明確な人間の叫び声に変わっていきました。その叫びは耳をつんざくようなもので、グループのメンバー全員が恐怖で凍りつきました。


少年たちはパニックに陥り、一目散に森の出口を目指して走り出しました。しかし、どれだけ走っても森の外に出ることができませんでした。彼らは同じ場所を何度も通っているような感覚に陥り、絶望感が彼らを襲いました。


そのうちの一人が突然消えました。まるで地面に吸い込まれたかのように跡形もなく消え去り、残された仲間たちはさらに恐怖に震えました。次々と仲間が消えていき、最後に残った少年が目の前の木々の間に立ち尽くしていると、背後から冷たい手が肩に触れる感覚がしました。


その少年はかろうじて森から脱出し、翌日、警察に保護されました。彼の話は意味不明で、連れ去られた仲間たちの行方は未だに不明です。彼は精神的ショックを受け、二度とその森の話をすることはありませんでした。


それ以来、その森には近づく者はいなくなり、町の人々はその場所を「呪われた森」として恐れるようになりました。そして、夜になると今でも森の奥から低いうめき声と叫び声が聞こえると言われています。






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