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第六十八話

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 イギリスの田舎に、古い屋敷が立っていました。その屋敷は何世代にもわたってある家族が住んでいましたが、今は誰も住んでおらず、廃墟のようになっていました。しかし、その屋敷には一つの言い伝えがありました。それは、「屋敷の中の肖像画が夜中に動き出す」というものでした。

ある日、都会から若い女性、エリザベス・アン・ハリントンがその屋敷を訪れました。彼女は歴史に興味があり、古い建物の調査をしていました。彼女は屋敷の持ち主から許可を得て、一晩をその屋敷で過ごすことにしました。

夜が更けると、エリザベスは大広間にある大きな肖像画に気付きました。それは、かつての屋敷の主、アレクサンダー・ジョナサン・ブラックウッド卿の肖像画でした。彼の厳しい目つきがエリザベスを見下ろしているように感じられ、彼女は少し不安になりましたが、歴史的な価値を感じてその場にとどまりました。

深夜、エリザベスは不意に目が覚めました。何かが彼女を呼んでいるような気がしたのです。大広間に向かうと、そこには信じられない光景が広がっていました。アレクサンダー卿の肖像画がフレームの中から外れ、部屋の中央に立っていたのです。彼の目は冷たく光り、不気味な微笑みを浮かべていました。

恐怖で動けなくなったエリザベスは、アレクサンダー卿の言葉に耳を傾けるしかありませんでした。「この屋敷を調査するために来たのか?」彼は静かに問いかけました。エリザベスは震える声で「はい」と答えました。

「ここには多くの秘密がある。しかし、君が探しているのはその秘密ではない。君が本当に知るべきは、この屋敷の呪いだ。」

アレクサンダー卿は続けました。「この屋敷に足を踏み入れた者は、決して無事に出ることはできない。私もまた、この呪いに囚われた者だ。永遠にこの肖像画の中に閉じ込められている。」

エリザベスは恐怖で声も出せず、ただ立ち尽くしていました。アレクサンダー卿はゆっくりと肖像画に戻り、その中に吸い込まれるように消えていきました。肖像画は再び壁に掛かり、何事もなかったかのように静かになりました。

翌朝、エリザベスは急いで屋敷を後にしました。彼女はもう二度とその屋敷には戻りませんでした。しかし、その後も何人かの調査者が同じ屋敷を訪れ、同じ恐怖を味わったと言われています。肖像画のアレクサンダー卿は、今もなお屋敷を見守り、侵入者を待ち受けているのです。






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