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第五十四話
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では、俺がまだ大学一年生の頃に起こった心霊現象について話そうと思う。
その日は大学の友人たちと山にキャンプに来ていた。山といっても標高の低いキャンプ場で、ハイキングコースも整備されているから初心者でも気軽に来ることができる場所だ。
そんな場所で夜中に肝試しをしようなんて言い出したのは誰だったか。
テントから出て懐中電灯を持って山道を歩く。懐中電灯の光だけが頼りなので、暗闇の中に大勢でいるととても心強い。
「おい、怖がらせようとしても無駄だぞ」
友人の一人がニヤつきながら言う。みんなでふざけながら歩いていると、やがて木々に囲まれてぽっかりと開けた場所に出た。
そこは小さな神社のようで、古びた鳥居が立っていた。
「こんなところに神社なんてあったっけ?」
みんな不思議に思ったが、特に気にすることもなく神社に足を踏み入れた。
「誰もいない神社なんて怖くもなんともないな」
そんなことを言いながら一通り中を調べて、俺たちはキャンプ場に戻ろうとした。そのとき、友人の一人が叫んだ。
「うわあああああああああっ!」
俺たちは一斉に叫び声のした方を見た。しかしそこに友人の姿はなかった。忽然と姿を消してしまったんだ。
俺たちは慌てて引き返したが、どこを探しても友人の姿はなかった。山の中で遭難したら大変だと思い、すぐに警察に通報した。
しばらくして警察がやって来た。彼らは懐中電灯を持ってあちこちを探しているが、友人は見つからない。
「もしかしたらあの神社に入ったのかもしれない」
俺たちはもう一度神社に行こうとしたが、警察の人に止められた。
「あそこの神社はもう使われていないんだ。入ると危ない」
「でも友達がまだ中にいるかもしれないんですよ!」
俺がそう言うと、警察官は渋い顔をした。
「もう何年も経っているし、きっともう……」
そんな警察官の言葉を俺は遮るようにして聞いた。
「それなら友人も連れて帰りたいです。俺一人じゃ嫌だけど、みんなで行けば怖くないでしょ?」
俺は友人たちに声をかけ、再び神社に行くことにした。神社に着くと警察官がついてきた。
「君たち、本当に行くのか? もう何年も経っているんだぞ」
「はい。友達を探しに行きます」
俺たちは懐中電灯を持って山道を登り始めた。すると警察官が言った。
「君たちがもしここで行方不明になっても私は捜索しないからそのつもりで」
そんな警察官の忠告を無視して俺たちは進んでいく。しばらくして小さな鳥居と社が見えた。
俺たちは恐る恐る中に入る。懐中電灯で照らしても社の中は暗くてよく見えなかったが、友人の姿はなかった。
「やっぱりここにはいないか……」
俺がそう呟いたときだった。
「うわあああっ!」
友人の悲鳴が聞こえると同時に、ガシャーンと大きな音がした。その直後、懐中電灯が地面に落ちた。
「おい、大丈夫か!?」
俺は慌てて友人たちに声をかけるが、返事がない。
俺はすぐに警察に通報した。すると、神社の前に警察官がやって来た。
「君たち、ここで一体何をしていたんだ?」
「友人を探しにここに来たんです」
「ああ、そうか……。だが、君たち以外は誰もいないようだが」
俺は懐中電灯で社の中を照らす。するとそこには友人たちの姿がなかった。ただ社の中から大量の髪の毛が溢れ出ていたのだ。俺は寒気を感じ、すぐにその場を立ち去った。
結局、その友人は今でも行方不明のままである。
その日は大学の友人たちと山にキャンプに来ていた。山といっても標高の低いキャンプ場で、ハイキングコースも整備されているから初心者でも気軽に来ることができる場所だ。
そんな場所で夜中に肝試しをしようなんて言い出したのは誰だったか。
テントから出て懐中電灯を持って山道を歩く。懐中電灯の光だけが頼りなので、暗闇の中に大勢でいるととても心強い。
「おい、怖がらせようとしても無駄だぞ」
友人の一人がニヤつきながら言う。みんなでふざけながら歩いていると、やがて木々に囲まれてぽっかりと開けた場所に出た。
そこは小さな神社のようで、古びた鳥居が立っていた。
「こんなところに神社なんてあったっけ?」
みんな不思議に思ったが、特に気にすることもなく神社に足を踏み入れた。
「誰もいない神社なんて怖くもなんともないな」
そんなことを言いながら一通り中を調べて、俺たちはキャンプ場に戻ろうとした。そのとき、友人の一人が叫んだ。
「うわあああああああああっ!」
俺たちは一斉に叫び声のした方を見た。しかしそこに友人の姿はなかった。忽然と姿を消してしまったんだ。
俺たちは慌てて引き返したが、どこを探しても友人の姿はなかった。山の中で遭難したら大変だと思い、すぐに警察に通報した。
しばらくして警察がやって来た。彼らは懐中電灯を持ってあちこちを探しているが、友人は見つからない。
「もしかしたらあの神社に入ったのかもしれない」
俺たちはもう一度神社に行こうとしたが、警察の人に止められた。
「あそこの神社はもう使われていないんだ。入ると危ない」
「でも友達がまだ中にいるかもしれないんですよ!」
俺がそう言うと、警察官は渋い顔をした。
「もう何年も経っているし、きっともう……」
そんな警察官の言葉を俺は遮るようにして聞いた。
「それなら友人も連れて帰りたいです。俺一人じゃ嫌だけど、みんなで行けば怖くないでしょ?」
俺は友人たちに声をかけ、再び神社に行くことにした。神社に着くと警察官がついてきた。
「君たち、本当に行くのか? もう何年も経っているんだぞ」
「はい。友達を探しに行きます」
俺たちは懐中電灯を持って山道を登り始めた。すると警察官が言った。
「君たちがもしここで行方不明になっても私は捜索しないからそのつもりで」
そんな警察官の忠告を無視して俺たちは進んでいく。しばらくして小さな鳥居と社が見えた。
俺たちは恐る恐る中に入る。懐中電灯で照らしても社の中は暗くてよく見えなかったが、友人の姿はなかった。
「やっぱりここにはいないか……」
俺がそう呟いたときだった。
「うわあああっ!」
友人の悲鳴が聞こえると同時に、ガシャーンと大きな音がした。その直後、懐中電灯が地面に落ちた。
「おい、大丈夫か!?」
俺は慌てて友人たちに声をかけるが、返事がない。
俺はすぐに警察に通報した。すると、神社の前に警察官がやって来た。
「君たち、ここで一体何をしていたんだ?」
「友人を探しにここに来たんです」
「ああ、そうか……。だが、君たち以外は誰もいないようだが」
俺は懐中電灯で社の中を照らす。するとそこには友人たちの姿がなかった。ただ社の中から大量の髪の毛が溢れ出ていたのだ。俺は寒気を感じ、すぐにその場を立ち去った。
結局、その友人は今でも行方不明のままである。
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