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asami

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第三十三話

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 これは私が高校生の頃の話です。

その頃には私にも恋人ができており、幸せな毎日を送っておりました。

そんなある日のこと、私は彼と喧嘩をしてしまいました。

きっかけは些細なことでしたが、お互いに引けなくなってしまい、ついには別れ話にまで発展してしまいました。

そんな時、ふとある噂を耳にしました。

それは、ある廃墟の旅館にまつわる話でした。

何でも、そこはかつて多くの自殺者が出た場所で、今でも幽霊が出るという噂があるのだそうです。

もちろん私は信じていませんでした。

しかし、もし本当に幽霊がいるのなら、一度会って話をしたいという好奇心もありました。

そこで私は、意を決してそこへ行ってみることにしました。

真夜中にこっそりと自宅を出て、目的の場所へ向かいます。

そして辿り着いた先は、街の外れにある大きな廃墟でした。

さすがに一人で入る勇気が出ず、入り口の前で躊躇っていると、突然後ろから声をかけられました。

驚いて振り返ると、そこに一人の男性が立っていました。

年の頃は三十代前半くらいで、背が高く痩せ型の男性でした。

彼は申し訳なさそうな顔をして謝りながら、こう言いました。

「驚かせてすまない。実は君が来る前にここへ着いていたんだが、タイミングを逃してしまい、なかなか声を掛けることができなかったんだよ」

私は最初、何のことかわかりませんでした。

しかし、すぐに理解することができました。

というのも、彼の足元に若い女性の死体が転がっていたからです。

死体の首元にロープのようなものが巻き付いていることから、おそらく自殺したのだろうと察しました。

それを見た瞬間、全身の血が凍るような感覚に襲われました。

目の前が真っ暗になって、立っていることすらできなくなりました。

慌てて駆け寄ってきた彼に抱き止められて、なんとか倒れずに済みました。

その後、私は気を失ってしまったらしく、次に目を覚ました時には病院のベッドの上でした。

幸いなことに命に関わるような事態ではなかったようで、数日ほど入院した後は退院できました。

ただし、しばらくは夜に出歩くことは禁止されました。

それからというもの、あの時の光景を思い出してしまうようになり、何度も悪夢を見るようになりました。

そんな日々が続いたある日、私は思い切って友人に相談することにしました。

彼女は真剣な顔で私の話を聞いてくれました。

そして、最後に一言だけ言いました。

「大丈夫よ。心配しなくても、そのうち治まるわ」

その言葉を聞いて、私は少し心が落ち着くのを感じました。

それ以来、例の件を思い出すこともなくなりました。

今ではすっかり元気になり、今は恋人と一緒に幸せに暮らしています。

あれ以来、この辺りでは自殺者が出ていないようですが、もしまた誰かが死ぬようなことがあれば、その時はきっと……
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