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第三十二話
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ある日のことでした。
仕事帰りにいつもの道を歩いていると、道端に落ちている雑誌のような物を見つけました。
近づいて拾ってみるとそれは週刊誌でした。
表紙には『心霊写真特集!』と書かれていました。
中身を読んでみると衝撃的な記事が載っていました。
なんと心霊写真を撮った場所に行って撮影をするという企画があったのです!私はすぐに興味を持ちました。
そして次の休みの日にその場所へ行くことに決めました。
数日後、私は例の場所を訪れました。
そこは街外れにある廃工場でした。
なんでも昔は自動車の修理工場として使われていたそうですが、今はもう使われていません。
中に入ると当然誰もいません。
とりあえずシャッターの前に座り込んで待つことにしました。
しばらくすると辺りが暗くなってきました。
さすがに不安になってきて帰ろうかと思っていた矢先、ふとある考えが浮かびました。
もしここで私が逃げ出したりしたらどうなるんだろう? もしそうなった場合、本当に幽霊が出ることになるのでしょうか? 私は怖くなりました。
しかしそれと同時に好奇心を抑えることができませんでした。
そこでもう少しだけ待ってみることにしました。
すると、遠くの方で何かが動くような音が聞こえました。
最初は風の音だと思いましたが、すぐにそれが間違いだということに気付きました。
なんとシャッターの向こう側から誰かが歩いてくるのです。
心臓が激しく鼓動するのを感じながらじっと見つめていました。
やがてその人物は立ち止まりました。
恐る恐る声をかけてみました。
「あの……すみません……」
返事はありません。
もう一度呼びかけてみることにしました。
「すみませーん」
するとようやく反応してくれました。
「はい、何か用ですか?」
それは女性の声のように思えました。
「いえ、特にこれといったことはないんですが、もしお時間あるようだったら少しお話でもと思いまして」
正直自分でもよくこんなことを言ったものだと感心しています。
しかし不思議と後悔はありませんでした。
むしろこの状況を楽しんでいる自分がいました。
それから彼女と話をするようになりました。
初めは緊張していたものの、徐々に打ち解けていき今ではすっかり仲良くなりました。
彼女についてわかったことはいくつかあります。
まず彼女は私よりも前にこの場所を訪れたそうです。
目的は私と同じで取材のためだと言っていましたが、結局何も見つからなかったそうです。
次に彼女は私と同じようにカメラマンをしているということです。
いつもカメラを持ち歩き、いろんな景色を撮影しているのだと言います。
最後にこれは一番重要なことですが、彼女の姿を見ることはできませんでした。
なぜかというと、私以外の人間には見えないからです。
つまり私だけが彼女の姿を見ることができたのです。
だからなのかはわかりませんが、彼女の存在を完全に信じることができるようになりました。
そして今日も私は彼女と会うためにここへやって来ます。
仕事帰りにいつもの道を歩いていると、道端に落ちている雑誌のような物を見つけました。
近づいて拾ってみるとそれは週刊誌でした。
表紙には『心霊写真特集!』と書かれていました。
中身を読んでみると衝撃的な記事が載っていました。
なんと心霊写真を撮った場所に行って撮影をするという企画があったのです!私はすぐに興味を持ちました。
そして次の休みの日にその場所へ行くことに決めました。
数日後、私は例の場所を訪れました。
そこは街外れにある廃工場でした。
なんでも昔は自動車の修理工場として使われていたそうですが、今はもう使われていません。
中に入ると当然誰もいません。
とりあえずシャッターの前に座り込んで待つことにしました。
しばらくすると辺りが暗くなってきました。
さすがに不安になってきて帰ろうかと思っていた矢先、ふとある考えが浮かびました。
もしここで私が逃げ出したりしたらどうなるんだろう? もしそうなった場合、本当に幽霊が出ることになるのでしょうか? 私は怖くなりました。
しかしそれと同時に好奇心を抑えることができませんでした。
そこでもう少しだけ待ってみることにしました。
すると、遠くの方で何かが動くような音が聞こえました。
最初は風の音だと思いましたが、すぐにそれが間違いだということに気付きました。
なんとシャッターの向こう側から誰かが歩いてくるのです。
心臓が激しく鼓動するのを感じながらじっと見つめていました。
やがてその人物は立ち止まりました。
恐る恐る声をかけてみました。
「あの……すみません……」
返事はありません。
もう一度呼びかけてみることにしました。
「すみませーん」
するとようやく反応してくれました。
「はい、何か用ですか?」
それは女性の声のように思えました。
「いえ、特にこれといったことはないんですが、もしお時間あるようだったら少しお話でもと思いまして」
正直自分でもよくこんなことを言ったものだと感心しています。
しかし不思議と後悔はありませんでした。
むしろこの状況を楽しんでいる自分がいました。
それから彼女と話をするようになりました。
初めは緊張していたものの、徐々に打ち解けていき今ではすっかり仲良くなりました。
彼女についてわかったことはいくつかあります。
まず彼女は私よりも前にこの場所を訪れたそうです。
目的は私と同じで取材のためだと言っていましたが、結局何も見つからなかったそうです。
次に彼女は私と同じようにカメラマンをしているということです。
いつもカメラを持ち歩き、いろんな景色を撮影しているのだと言います。
最後にこれは一番重要なことですが、彼女の姿を見ることはできませんでした。
なぜかというと、私以外の人間には見えないからです。
つまり私だけが彼女の姿を見ることができたのです。
だからなのかはわかりませんが、彼女の存在を完全に信じることができるようになりました。
そして今日も私は彼女と会うためにここへやって来ます。
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