【完結】偶像は堕ちていく

asami

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第二十話

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 テレビのバラエティー番組にレポーター役で出演する事になった。
お笑いタレントのデモリさんが司会を務める人気番組だ。
私と彩香ちゃんが正体を隠してメイド喫茶の店員になって隠し撮りをするという企画だった。
収録のロケの直前に私だけマネージャーに呼ばれた。
なんの話だろうと思っていたらこんどの番組ではドッキリ企画があって騙されるのは彩香ちゃんだと聞かされた。
裏通りで私と彩香ちゃんが店のビラを配っているとき彩香ちゃんの学校の生活指導の先生に見つかって「君は退学だ」と言われて彩香ちゃんが泣き出したときドッキリの看板を持ったスタッフが登場すると言う手はずだった。
私はそんなにうまく彩香ちゃんが騙されれて泣き出すのかと思って不安な気持ちだった。



 収録の当日は秋葉原で古くからある有名なメイド喫茶に行った。
店の中は見た目は普通の喫茶店だけど、窓際にレースのカーテンが掛かっていたりして女の子っぽい雰囲気だ。
入り口のドアも古めかしい感じで外から見ると、お洒落なカフェに見える。
撮影のスタッフが隠しカメラをあちこちに仕掛けて準備を始めた。
最近の隠しカメラはマッチ箱ほどの大きさだけれども高性能だ。
開店前の控室で他のメイドの女の子達に紹介された。
メイドの女の子達は見た感じは普通の女子高生で特に派手な感じはなかった。
女子高の制服を着ている女の子もいたけど、本物の女子高生かどうかは見た目では判断できない。
女の子達は私と彩香ちゃんがラブエンジェルズのメンバーだと判ると、羨望の眼差しで私達を見つめていた。
メイド喫茶のバイトをしている女の子の中には将来アイドルを夢見ている女の子がもいるらしい。
アイドルの女の子の友達は一杯いるけど、メイド喫茶でバイトしてた女の子なんて聞いたことが無い。
メイド喫茶でいくら人気者になっても、店が儲かるだけで将来アイドルになんか絶対なれないと思ったけどそんなことをメイドの女の子の前で言える訳がなかった。
渡された衣装は他の女の子と同じ店の制服のエプロンドレスだ。
綺麗にクリーニングされているけど、結構使い古しだ。
ピンク色の生地のワンピースで可愛らしいフリルが一杯ついてる。
丈も結構短いけど普段ステージで着ている衣装に比べたらそんなに派手な感じはしない。
胸が特に強調されるデザインで、胸の大きな彩香ちゃんは胸がまっすぐ前に飛び出して見える。
サイズも彩香ちゃんには少し小さめだったので、その分胸が強調されて見えるのは仕方がない。
私たちがラブエンジェルズのメンバーだと判らないように長めのカツラをかぶって濃い目にお化粧をした。
他の女の子達もそれぞれエプロンドレスに着替えて丁寧にお化粧をして開店を待った。
11時になって店が開店するとさっそく常連のお客さんらしい男性が店に入ってきた。
私とラブエンジェルズは他の女の子達と一緒に店の入り口に並んで「ご主人様。お帰りなさいませ」と挨拶をした。
男はいつも座っている席が決まっているらしくて真っすぐに店の奥まで進んで舞台のすぐ前の席に座った。
最初にまず私が注文を取りにいった。
男は私が新入りのメイドさんだと思ったらしくて、「新人さん。頑張ってね」と声を掛けてくれた。
注文のフルーツパフェを彩香ちゃんと一緒に持って行くと美味しくなる魔法の呪文を言わないといけない。
「パープル、ピープル、メープルリン、美味しくなーれ、美味しくなーれ」と言いながら指先を回して魔法のポーズを取った。
客の男にインタビューするのが番組の予定だったので早速「このお店にはよくいらっしゃるんですか」と彩香ちゃんが客の男性に声を掛けた。
「そうだね、毎日じゃないけど、よく来るよ」と男が返事をした。
「どのメイドさんがお気に入りですか」と彩香ちゃんが聞くと「どのこもみんな可愛くて大好きだよ」と言われた。
「君名前何て言うの、ラブエンジェルズの彩香ちゃんによく似てるね。もしかして本人かな。彩香ちゃんがこんな所に居るわけないよね」と言って男が笑った。
本人は冗談のつもりで言ったらしいが私は一瞬ばれたのかと思ってドキッとした。
「君胸が大きいね、彩香ちゃんも胸が大きいけど、君もっと大きいよ。ブラのサイズは幾つなの」と言いながら男が彩香ちゃんの胸の先を指でついた。
セクハラだ。
メイド喫茶の客というのはメイドの女の子にセクハラするのは当たり前らしい。
彩香ちゃんは恥ずかしい顔をしたが、隠しカメラで収録中なので逃げ出すわけにもいかない。
「よく言われるんですよ」とだけ答えると胸の前で両手を組んで胸をガードした。
すると男は足もとっても綺麗だねと言いながら、エプロンドレスの下に手を入れて腿の内側を撫で上げてきた。
胸を触った後に無防備になった足を触ると言うのが男の手口らしい。
新人の女の子を狙ってセクハラをしてるらしいと気が付いて腹が立ってきた。
「ゆっくりしていって下さいね」と言って彩香ちゃんがテーブルから離れると泣きそうな顔をしていたけど、収録中なので泣くわけにはいかない。
客は一人しかいなかったけど、収録は時間が詰まっているのでステージでダンスをする事になった。
他のメイドの女の子達と一緒にステージに上がると思ったより狭い。
ラジカセからラブエンジェルズの新曲の虹色ラブソングのメロディーが流れだすと一斉に踊りが始まった。
私と彩香ちゃんが本物のアイドルグルーメ名のメンバーだばれるといけないので、わざと下手に歌って踊った。
メイド喫茶の女の子たちは普段から歌と踊りはやっているので、一応は格好はついてるがやっぱり全然下手だ。
踊りは動きが一人一人ばらばらで動作に切れがなくてただ体を動かしてるだけ。
歌も声が全然でていないし、音程も外してばかりで全然歌になってない。
そうは言ってもみんな一生懸命やっているので、うっかりしたことは言えない。
とりあえず虹色ラブソングが終わると客の男の子が拍手をしてくれた。
テレビで放送するのは虹色ラブソングだけなので、私と彩香ちゃんはステージから降りて客席でしばらく見物をすることにした。
女の子達はテレビの収録なのでこれをきっかけにチャンスをつかめるかもと思ったのか随分張り切って踊ってる。
回りながらジャンプをするたびにメイド服のスカートがめくれてパンティーが丸見えになってる。
私達がステージで踊るときは衣装と共布の見せパンを履いてるけど、メイド服の女の子達は生パンだ。
見た目は子供っぽい白のパンティーだけど、ピンクやブルーのレース模様がはっきりと見える。
男の子の見ている前で恥ずかしくないのかと思ったけど、そんなことは全然気にしないらしい。



 店での収録が済むと、メイド喫茶のビラを配る場面の収録をすることになった。
目立たないように店の裏手の細い道に立ってビラを配り始めた。
通りには他のメイド喫茶の女の子達もビラを配っていて、みなカラフルなメイド服を着ている。
道を通る人たちは慣れてるせいか、ビラを差し出しても無視して通り過ぎるだけ。
ビラをなかなか受け取ってはもらえない。
ビラを貰うのは大抵はリュックを背負ったオタク風の男の子達で大抵は少し太り気味だ。
初めて秋葉原に来るようなお上りさんはメイド服を着た女の子が珍しいらしくて、あちこちでビラを貰っては女の子の品定めをしてる。
私のすぐ目の前に中年の太った男性が立ち止まると手を差し出した。
どうみてもメイド喫茶に来るような男性とは思えなかったがまあいいやと思ってビラを渡した。
すると「店は何処。フェ××オはいくらでやってもらえるの」と聞いてきた。
私はいきなりフェ××オなんて言葉を耳にして、一瞬言葉に詰まった。
メイド喫茶を風俗店と勘違いしているらしい。
私が男を無視して他の男性にビラを渡していると、男は今度は彩香ちゃんに「フェ××オやってもらえるなら三万出すよ」と声を掛けた。
彩香ちゃんは「そうゆうサービスはやってないんです」ときっぱりと答えたがそれがかえって不味かったみたいだ。
「いくら出せばいいんだ、もっと欲しいのか」と男がしつこく彩香ちゃんに迫ってきた。
ちょうどその時そばで様子を見ていた男が「君たち何してるんだ」といって近寄ってきた。
彩香ちゃんが男の顔を見て「あっ、中村先生」と言うのを聞いて、打ち合わせしてあった彩香ちゃんの学校の先生だと判った。
「君たち何をやってるんだ。うちの学校はアルバイト禁止だ。それに君たち援助交際してるんだろう」と中村先生が言うのを聞いて、彩香ちゃんが慌てて「違うんです、テレビの収録なんです」と言いかけた。
「何を言ってるんだ、君は退学だ、いますぐ退学だ」と中村先生が大声を出した。
ここで彩香ちゃんが泣き出せばドッキリの看板を持ったスタッフが登場するはずだ。
だがさっきから私達に絡んでいた男が「おい、じゃまするんじゃねえ、俺が話をしてるんだ」と中村先生を追い払おうとした。
中村先生は相手が収録のサクラだと思ったらしくて「黙れ、この子達はうち学校の生徒だ」と大見えを切った。
男がいきなり中村先生になぐりかかると、そばで見ていた男の子たちが止めに入った。
目の前で取っ組み合いの喧嘩が始まると私は慌てて彩香ちゃんに「彩香ちゃん。逃げるのよ」と声を掛けた。
「おい、ラブエンジェルズの有紀ちゃんと彩香ちゃんだぜ」と周りで見ていた男の子が大声を出すのが聞こえた。
私がうっかり彩香ちゃんの名前を呼んだので、私たちがメイドルグループ名のメンバーだとバレてしまったみたい。
周りを取り囲んで騒ぎを見ていた男の子達が一斉に押し寄せてきた。
こうなったらもう収録なんてやってられない。
私は彩香ちゃんの手を取ると必死で駆け出した。
すぐ後ろから男の子達が私達を追いかけて来た。



 大通りに出ると交差点のすぐ脇にワゴン車が止っていて、男の子が手招きをしている。
私はてっきり撮影のスタッフのワゴン車だと思って、開いてるドアから飛び乗った。
彩香ちゃんもすぐにワゴン車に飛び乗るとすぐに動き出した。
やれやれこれで一安心と思っていると「ちょうどよかった。これからカラオケに行こう」と運転席の男の子が声をかけてきた。
カラオケで収録をやるなんて聞いていない。
変だと思って車の中をよく見ると、撮影の機材らしいものは何も置いていない。
運転している男の子の他に私たちのすぐ横に太った男の子がいるけど、見覚えのない顔。
どうやら撮影のスタッフの車ではなかったらしい。
「二人ともさっきは歌がとっても上手だったね。まるで本物のラブエンジェルズみたいだったよ」と運転席の男の子が言うのを聞いて、どうやらさっきメイド喫茶で一緒だった男の子らしいと気が付いた。
私は「これはテレビ番組の収録なんです」と本当の事を言おうと一瞬思った。
だけどもし私たちが本物のラブエンジェルズのメンバーだと男の子達が知ったら何をされるか判らない。
ひとまず様子を見て適当な所で逃げ出す方がいいと思いなおした。
「君たち学校は何処、まだ高校生なんだろう」と男の子に聞かれて「すぐ近所なんです」と私は適当に答えた。
「ああそれなら四つ葉学園だね。メイド喫茶でバイトしてる女の子は四つ葉学園の子が多いんだ」と男の子が言った。
男の子はそれから私達にいろいろ聞いてきたが私と彩香ちゃんは適当に答えてごまかした。
ワゴン車がしばらく走ると、カラオケ店に着いた。
車を駐車場に入れて店に入ると、カラオケボックスに案内された。
とりあえず男の子達の相手をして何曲か歌った後に適当に口実を付けて逃げ出そうと思った。
カラオケの曲を選んでいると、男の子が飲み物を勧めてくれた。
私は喉が渇いていたので勧められるままに紫色の飲み物を口にした。
私は頭の中が半分眠ったようになると、体が芯から熱くなってきた。
男の子がデュエットをしようと言うので私はソファーから立ち上がろうとしたが目眩がして膝に力が入らなかった。
さっき飲んだ飲み物に変な薬が入っていたらしいと気が付いたがもう遅かった。
男の子は私の体をソファーに押し倒すと、体を重ねてきた。
欲望の嵐が激しい竜巻となって私の体に襲いかかってきた。
私の期待を裏切るように、ゆっくりとした波が私の感触を楽しむように打ち寄せてきた。
しだいに激しさを増す欲望には抵抗する気力もなくなるほどの荒々しさがあった。
終わることのない永遠の時が、私の支配者に与えられた時間だった。
激しい渦の流れに私の体は飲み込まれ、体ごと深く沈み込んで浮き上がる望みもなくなった。
私の体は意志のない人形のようにもてあそばれて引き裂かれた。
私に許されたのは、望みを捨てて従属する快感に身をゆだねることだけだった。
至上の楽園に届くまで放り投げられた私の身体は、燃え尽きそうになりながら空を舞い続けた。
男は私の身体を天高く投げ上げると、次の瞬間に暗黒の谷間に突き落とした。
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