【完結】偶像は堕ちていく

asami

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第十三話

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 新曲のキャンペーンが一段落したころ、名古屋のラジオ番組にゲスト出演することになった。
本当は彩香ちゃんが一人で出演するはずだったんだけど、彩香ちゃんが一人では心細いと言うので私も一緒に行くことになった。
深夜のラジオ番組なので放送は深夜だけど、録音を流すだけなので収録は昼間だ。
彩香ちゃんと一緒に新幹線で名古屋に行くと、すぐラジオ局に向かった。
収録スタジオに案内されるとパーソナリティー役のビンビンシステムの二人が待っていた。
とりあえず簡単な自己紹介をして、サイン入りの新曲のCDをプレゼントした。
しばらく雑談した後さっそくリハーサルが始まった。
ラジオ番組は一時間だけど、音楽を流す時間が長いので話をする時間は5分もない。
他の話題もあるので、私たちラブエンジェルズの紹介は精々3分くらい。
最初に自己紹介のあとビンビンシステムの質問に答える手順だ。
ビンビンシステムはもう10年近く番組をやっているので、さすがに慣れている。
放送前に雑談で話したことを上手く話題に盛り込んで、面白おかしくおしゃべりが続いた。
一度リハーサルをしてるので同じ事を聞かれるとばかり思っていたが、リハーサルとは違う話題を振られたりして結構大変だった。



 あっと言う間に収録が終わるとバンピーさんが「君たち名古屋は初めてかな」と聞いてきた。
名古屋でライブをしたことはあるけど、ゆっくり名古屋を見て回った事はない。
「名古屋は初めてだよね」と彩香ちゃんが私を見ながら答えると「名古屋名物の手羽先を食べさせてあげる」とバンピーさんが言い出した。
手羽先は居酒屋で食べたことがあるくらいで好きな訳でもない。
わざわざ名古屋にきてまで食べるたいとは思わないけどビンビンシステムに誘われたら断る訳にもいかない。
なにしろビンビンシステムは東京ではそんなに有名でもないけど、関西では大人気でテレビ番組の司会もやってる。
ビンビンシステムに気に入られたら、テレビ番組にも出演させてもらえるかもしれない。
ラブエンジェルズの宣伝になれば、新曲のCDだって一杯売れるにちがいない。
「私、手羽先大好きなんです」と彩香ちゃんが大げさな口調で答えるとすぐに話がまとまった。
「名古屋で一番美味い手羽先屋に連れて行ってやるで」とバンピーさんが言うので私はよっぽど高級な手羽先屋さんだと思った。
東京では手羽先などどこの居酒屋でも食べれるけど、そんなに美味しいわけでもない。
最高級の手羽先はきっと高級な食材を使っていて、贅沢な手羽先に違いない。
タレだってきっと特別製の美味しいタレに違いない。
私は東京に帰ったら話の種にできると思ってウキウキした気分になった。
ラジオ局のビルを出て大通りをしばらく歩くと大きな公園にでた。
公園の入り口近くに屋台が何軒かあって手羽先の旗も見えた。
私はもしかして屋台の手羽先屋に案内されるのではと思っていやな予感がした。
私が屋台の前を通り過ぎようとした時、バンピーさんが「ここが名古屋一美味い手羽先の店なんや、食べたら美味くてびっくりするで」と言い出した。
私は不安が的中してがっかりした気分になった。
屋台の手羽先屋が高級な食材なんか使ってるはずはない。
東京にもどってもとても話の種になんかはならない。
とりあえず空いてる席に座るとバンピーさんが勝手にビールと手羽先を注文した。
すぐにテーブルの上に手羽先が三人前並んだがかなり量が多い。
バンピーさんが素手で手羽先を食べ始めたが、女の子が素手で手羽先を食べるわけにはいかない
服が汚れてしまうのでクリーニング代が大変だ。
男の人は汚れてもいいような服を着てるから素手で手羽先を食べても平気らしいけど女の子はそうはいかない。
紙ナプキンを探したがそんな洒落たものは屋台に置いてあるわけがない。
私は仕方なく割りばしで手羽先を食べようとしたが、あまり上手くは肉がつかめない。
彩香ちゃんも割りばしでなんとか手羽先食べ始めた。
一口肉を口に入れてみたけど、味がとんでもなく濃くてとても沢山は食べらなない。
東京の居酒屋で食べる手羽先とは全然別の味で、名古屋ではこれが普通らしい。
とても食べれなくてビールを少しづつ飲みながら、適当につまんで食べる振りをつづけた。
「この店は、味噌カツも美味いんやで」と言うとバンピーさんがまた勝手に味噌カツを三人前注文した。
出てきた味噌カツはとんでもなく大きくてとても食べきれる量ではない。
一口だけ試しに味噌カツを口に入れてみたけど、味噌の味が濃くてとても食べられない。
名古屋では食べ物はみな濃い目の味付けをするらしい。
東京でも料理の味付けは濃い目だけど、それでも高級な店は薄めの味付けだ。
とてもこんな濃い味の料理は沢山は食べられない。
バンピーさんが私達の分まで手羽先と味噌カツを食べてくれたがそれでもかなりの量を食べ残してしまった。
そろそろ店を出ようとしてバンピーさんがお金を払うと、帰り際に店の主人に「お客さんもう二度と来ないでもらえますか」と言われてしまった。
確かにこんなに食べ残したら、店の主人に嫌われるのはしかたないが、二度と来るなと言うのは言い過ぎなきがした。
「てめえ、こちとらは客だぞなんだその言い方は」とバンピーさんが怒った顔で言い返すと、すぐに横に座っていた別の客が立ち上がって「てめえが悪いんだ、なんだその汚い食べ方は」とバンピーさんを怒鳴りつけた。
バンピーさんが酒によった勢いで客の男に殴りかかると他の客も巻き込んで喧嘩が始まった。
「おい、ラブエンジェルズの有紀ちゃんだぜ、彩香ちゃんも一緒だ」と誰かが大声を出すのが聞こえた。
いきなり後ろから手が伸びてきて私の胸をぎゅっと掴んだ。
慌てて周りを見るといつの間にか大勢の人が屋台の周りを取り囲んでいる。
中には携帯を取り出してこちらに向けて、写真を撮ってる人もいる。
こんな所を写真に撮られてインターネットのSNSにでも載せられたら大変だ。
「有紀ちゃん逃げるのよ」と彩香ちゃんが大声をだした。
私は必死て男の手を振りほどいて駆け出した。
大通りを走り抜けると、コンビニの横に細い道があるのを見つけた。
角を曲がってすぐに古着屋らしい小さな店がある。
店の入り口には暖簾が掛かっていて外からは中が見えない。
私は隠れるのにはちょうどいいと思って、店の中に入った。
彩香ちゃんは大通りを真っすぐ走り抜けたらしくて私は一人になってしまったが隠れるには一人の方がいいと思った。
店の中は明かりが暗くて、空気もひんやりと冷たい。
奥まで通路が通じているので私は店の奥に進んで棚の横に隠れた。
外の様子は見えなかったが、誰かが追いかけてくる気配はなくて一安心した。
通路はまだ奥に通じているので私はしばらく隠れていようと思って奥に進んだ。
店の中は古着特有の匂いが立ち込めていて息が詰まりそうになった。
棚に置いてある商品を何気なく眺めていると、私はなんだか変な店だと気が付いた。
女の子が体育の時間に着るブルマーらしい衣類が棚に一杯並べてある。
名前が書いてあるブルマーもあって中古のブルマーらしい。
ハンガーにはセーラー服がたくさん掛けてあるがそれも中古らしい。
近所の有名な私立高校のセーラー服も置いてあるが、かなり高い値段が付いている。
ほかにも女性の下着らしい衣類が沢山おいてあるが、中古の下着など誰が使うのか意味が分からない。
どうやら女性が買いに来る店ではないらしい。
こんなところに居るのを見つかったら誤解されるだけなので、店を出ようと思って反対側の出口を探した。
奥に試着室らしいカーテンが見えてその先が通路になっている。
きっと出口だと思って試着室の前を通り過ぎると、急に試着室のカーテンが開いた。
試着室から出てきたのは中年の男性だが、セーラー服を着ている。
スカートの丈が短いので男の太い脚が丸見えだ。
セーラ服を着る中年男など、見たことも聞いたことも無い。
男が私に手を伸ばそうとしてきたので私は慌てて飛びのいた。
反対側の出口があるはずだと思って細い通路をすすんだが先は行き止まりでトイレのドアが見える。
男がゆっくりとした足取りで私を追い詰めてきた。
このままだったら男に捕まって何をされるか分からないと思って私はトイレのドアを開けて中に入った。
鍵を閉めれば大丈夫だと思ったがトイレには鍵らしい物がない。
小さな金具がドアについていてそれが鍵替わりらしいが、金具をひっかけるだけで鍵の役には立ちそうもない。
私が金具を手にした時ドアが開いて男がトイレの中に入ってきた。
逃げ出す場所はもうない。
私の身体を襲う欲望は、嵐のような激しさだった。
浜辺におしよせる波のように、欲望は繰り返し私の体に押し寄せては退いていった。
しだいに激しさを増す欲望には抵抗する気力もなくなるほどの荒々しさがあった。
支配者の許しがなければ、私は涙を流すことさえできなくなった。
逃げることの出来ない快楽の時が始まったことを私は思い知らされた。
私の体中に欲望の電流が流し込まれて止まらなくなり、体中が許しを求めて震え始めた。
意志を失った人形の体を女の宿命が支配し続けた。
このままずっと責め続けられたら、私は支配者に屈服するよりないと覚悟した。
男は私の身体を一撃で貫き通すと、最後の望みを打ち砕いた。
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