【完結】偶像は堕ちていく

asami

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第三話

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 新曲のレコーディングが終わった後マネージャーに「雑誌のグラビアの仕事が入ったから明日写真スタジオに行ってくれるかな」と言われた。
若い男性向けのコミック雑誌らしくてグラビアに載せて貰えば新曲の宣伝になるとの事だった。
表紙載るのはには私一人らしくて、なんで私が選ばれたのか理由が分からない。
マネージャーに聞いてみると写真家の篠塚先生が私を特に気に入っていて私ならと指名したらしい。
理由はマネージャーにも分からないらしくて篠塚先生に会ったら直接聞いてみたらと言われた。
翌日の午後メイクさんと一緒に写真家の篠塚先生の写真スタジオまでタクシーで行った。
メイクさんの話では篠塚先生はかなり有名な写真家でアイドルの宮川千絵ちゃんのヌード写真も篠塚先生が撮影したとか。
それがきっかけで今は千絵ちゃんは篠塚先生のお嫁さんになってるとの事。
私は千絵ちゃんの事はよく知らないけど、ひと昔前は国民的アイドルで凄い人気だったらしい。
今はアイドルグループが星の数ほどあってアイドル歌手というだけでは大して注目もされないけど、千絵ちゃんは毎晩テレビの歌番組に出るほどの大人気だったらしい。



 篠塚先生の写真スタジオに着くと、篠塚先生は嬉しそうな顔で「僕が写真家の篠塚です」と言いながら右手を差し出してきた。
握手をしないといけないらしくて、私も右手を出して手を握った。
篠塚先生は私の手を何度もしっかりと握ってなかなか離してくれなかった。
「ラブエンジェルズは最近大人気だね。僕も注目しているんだよ。歌も上手だしダンスも凄い。それに一人一人個性があって表情も豊かだしね」と篠塚先生が褒めちぎるのを聞いてさすがに有名な写真家さんだと思った。
撮影の前に気分をリラックスさせるため楽しい会話で雰囲気作りをするのも写真家の仕事の内なんだ。
それにしても私の事をいろいろよく知っている。
前もって下調べをして話す話題を用意していたらしい。
さすがに一流の写真家さんはやることが違うとすっかり感心してしまった。
しばらくお喋りをしたあと篠塚先生が「じゃあ、これから早速プールに行くからね」と言い出したので私はびっくりしてしまった。
私は一応はアイドルで人気もそこそこだ。
プールなんかで撮影したら、見物人が大勢集まって大変な騒ぎになってしまう。
私が怪訝な顔をしているのを見て篠塚先生が「プールは貸し切りだから大丈夫、誰にも見られずに撮影できるから安心していいよ」と言ってくれた。
だけどプールを貸し切りにするなんてやっぱり変だ。
プールを貸し切りになんかしたらいくらお金が掛かるか分からない。
映画の撮影だったらプールを貸し切りで使うのはあるかもしれないけどたかがグラビア撮影でそんな大げさなことをするはずはない。
篠塚先生は私がまだ怪訝な顔をしているのを見て「大丈夫だよ、いつも撮影に使ってるプールでね、マンションの屋上にある小さなプールなんだ」と教えてくれた。
マンションにプールがあるなんて話は聞いたことが無いけど、高級なマンションならプールがあってもおかしくない。
小さなプールなか借り切ってもたいしたお金はかからないし、マンションの屋上なら外から見られることもないと思って納得した。



 篠塚先生の車に乗って大通りをしばらく走ると大きなビルに着いた。
ここがプールのある撮影スタジオらしい。
ビルの受付に入るとなんだか雰囲気が変だと気が付いた。
受付には「御休憩一万円」と大きな文字が書いた看板がある。
私はすぐには何の事か判らなかったが、御休憩というのはラブホテルの看板らしいと気が付いた。
たとえグラビアの撮影とはいえ、男の人とラブホテルになんか入る訳にはいかない。
私は思い切って「ここ、ラブホテルですよね」と篠塚先生に問いただした。
「有紀ちゃん大丈夫。ここは見た目はラブホテルに見えるかもしれないけど、ちゃんとした写真スタジオなんだよ。グラビアの撮影はいつもここでしてるんだ。いろんな趣の部屋が用意して遭ってね。撮影にはぴったりなんだ」と篠塚先生が言い訳を始めたがやっぱり変だ。
「フラワーガールズの美優ちゃんのグラビアもここで撮影したんだよ」
「初ビキニでね。大評判になって、雑誌も売れたしCDも大ヒットして事務所にも感謝されてね」
「僕はね。これはねと気に入った女の子の写真しかとらない主義でね。有紀ちゃんも僕が撮れば大評判になるよ」と篠塚先生が言うので私はそれなら安心と思った。
エレベーターで最上階に行くと、廊下にそっとドアが並んでる。
どうみてもホテルにしか見えないがホテルを撮影スタジオとして使っているんだと思った。
篠塚先生と廊下を歩いているといきなりすぐ目の前のドアがあいて女性が飛び出してきた。
「助けて下さい、お願いです」と女が泣きながら篠塚先生にしがみ付いてきた。
女は全裸で何も身に着けてはいない。
女の後を追いかけるようにして裸の男が二人ドアから出てくると女の体を後ろから羽交い絞めにした。
女は必死で体をねじって逃げようとしてるが男の力に敵うわけがない。
「つべこべ言うんじゃねえ、大人しくしろ」と男が女を怒鳴り付けると、女は諦めたのか抵抗を辞めた。
篠塚先生はさすがに目の前の出来事を放っておくわけになはいかいと思ったらしく「君たちなにやってるんだね」と大声をだした。
「今ビデオの撮影中なんです、邪魔しないでもらえます」と男が言うと女を部屋にひっぱりこんでドアを閉めた。
ビデオの撮影で女が真っ裸で逃げてくるなんてどう見ても変だ。
アダルトビデオを撮影しているとしか思えない。
いくら撮影スタジオだからと言ってもアダルトビデオを撮影するような場所にアイドルの私がいるわけにはいかない。
私は「私帰ります」とだけ言うとエレベータに戻ろうとした。
すると篠塚先生は私の腕を取って「有紀ちゃん写真は今日の四時までに入稿しないといけないんだ。今すぐ撮影しないと間に合わないんだよ」と言い出した。
私は篠塚先生の勝手な言い分に腹が立って「そんなの私知りません」と突っぱねた。
「何をいってるんだ君はプロだろう、入稿に間に合わないのがどうゆうことか判ってるのか。二度とグラビアには載せて貰えないんだよ。判ってるのか」と言って篠塚先生が私を怖い顔で怒鳴りつけて来た。
「事務所にだって迷惑がかかるし、ラブエンジェルズの他の女の子達にも迷惑がかかるんだ。それに有紀ちゃんだってラブエンジェルズにはいられなくなるんだよ」と篠塚先生に言われて私はもしかしたら篠塚先生のいう事が本当なのかもしれないと不安な気持ちになった。
どうしようかと迷っていると不意に「おい、女の子がいやがってるだろう」と私の背後から男の声がした。
振り返って確かめると若い男性の二人組が立っている。
知り合いかとおもったけど見知らぬ顔だ。
「関係ないだろ、黙ってろ」と篠塚先生が男に言い返すといきなり男が篠塚先生のお腹を殴りつけた。
篠塚先生はカメラバッグを抱えたまま、その場にしゃがみ込むと動けなくなった。
私は「どうもありがとうございます」と男に礼をいったけど、篠塚先生が殴られたのに礼を言うなんて変だと自分でもすぐに気が付いた。
「いくら欲しいんだ。福沢諭吉の枚数が不満で断ったんだろう。それとも変態プレーでも要求されたのか」と男が私に聞いてきた。
私は男の言葉の意味がよく判らなかったが、うっかりしたことは言えないと思って黙っていた。
「いいからだしてるじゃないか、顔も可愛いし、もっと金になる商売紹介してやるぜ」と言われて私はどうやら風俗の女と間違えられたらしいと気が付いた。
言い争いの場所で言い争いなどしてれば、風俗女だと思われるのは無理もない話。
私はこんな男達の相手はしないほうがいいと思って、男達の横を通り抜けようとしたがすぐに腕を掴まれた。
下手に大声を出せば何をされるか分からない。
私は怖くて体が震えてきた。
男達は私を近くの部屋に連れ込むと、すぐにベッドに押し倒してきた。
激しい嵐の中の小舟のように、私の肉体は波間に真っ逆さまに落ちていった。
時間が止まったまま、征服の杭が私の体をもてあそび続けた。
繰り返される律動は、やがて稲妻にかわり私の体を引き裂いた。
繰り返される欲望の儀式は、繰り返すたびに私を快楽の底に沈めていった。
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