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第四十六話

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 春先になって、大学のクラブの同窓会の通知が来ると私は気が重くなりました。
去年は通販で買ったスーツを着ていったのですが、うっかり「これ通販で買ったの」といつもの近所の奥さんにでも話すような調子で私が言うと、友達に「通販なんて買ってるの、私買ったことないは」と言われてさんざん馬鹿にされました。
今年は去年の通販のスーツを着ていく訳にもいかないし、かといって新しく買える余裕もなくて、私はインターネットでバーゲンの情報を探しました。
ちょうど手頃なバーゲン情報があったので、私は池袋のマルイに行くことにしました。
旦那には適当に言い訳して、スーツの安いのをなんとか探しましたがやはりバーゲンでも高くてとても手がでませんでした。
私は諦めてマルイの店から出て、ひとまずお茶でも飲もうと思いました。
どこかコーヒーの店でもないかと見回していると、中年の女性に声をかけられました。
「すぐに済みますからアンケートをお願いできませんか、図書券をお礼に差し上げますので」と頼まれました。
どうせ500円の図書券だと思いましたが、もらえる物はもらっておこうと思い、アンケートに答えることにしました。
近くのビルの上の階に連れて行かれると小さな小部屋に通されました。
女性はアンケート用紙になにか書き込みながら「朝ご飯はいつも食べてますか」とか、
「野菜はどんなものが好きですか」とか食べ物の話しを色々と質問してきました。
一通りアンケートが済むと急に女性は口調を変えて「大変ですね、この食生活だとあと5年で肝臓病になりますよ、こんな結果の悪い人は始めてですね」と言い出しました。
私がびっくりして理由を聞くと、「あなたの、食生活はもう大変悪くて、これでは肝臓に負担がかかるんです今の内なんとかしないとホント大変ですよ」
「そうだ、ちょうどいいダイエットプログラムがありますからそれをしてみたらいいです、いえしなかったらもう間違いなく肝臓癌になりますからするしかないですよ」
「そうそう、いまこのクジ引いて下さいな、クジに当たると料金がただになるんですよ、ただですよ」
と言われて私は差し出された箱から三角クジを一つ取り出して開けてみました。
そこにはなにか記号で書いてありましたが、それがはずれなのか当たりなのか私には分かりませんでした。
「うわー、、たいへん当たりですよ、なんて運がいい方なんでしょう、当たった人は滅多にいなくて、今月はあなたで最初ですよ」と言われて私はなるほど本当に運良く肝臓病にならずに済んだと喜びました。
よくよく説明を聞いてみると、ダイエットプログラムというのはお寺でやる断食修行のことで、一週間泊まり込みで断食をするという修行でした。
私は家に戻って旦那に「断食道場に友達に誘われたんだけど」と言ってみました。
すると旦那は「俺だったらべつに気にしなくていいよ、行きたいならいっといで」とやけに物わかりのいい答えでした。
私は旦那の気分が変わらない内に断食道場に行くことにしました。



 着替えを用意して当日、約束の場所に行くと車で山奥に案内されました。
お寺と聞いていたのですが、着いた場所は倉庫の様なプレハブの建物でした。
中に案内されると正面に大きな観音様の絵が掛けてあり、一応はお寺なのかと思いました。
着替えをしてから、すぐに道場に案内されました。
広い道場には畳の上に、大勢の信者らしい人が座って大きな声で呪文を唱えていました。
私もすぐに座って同じ呪文を大きな声で唱えるように指示されました。
しばらく呪文を唱えると、教祖の男性が現れ、説法を始めました。
「世の中には男と女、これがすべての基本、これが定説」と話しが始まりました。
「女が男に仕える、これは世の中が始まったときから決まっている、これが定説」と訳のわからない説法が延々と続きました。
「女が幸せになるのは男に仕えるとき、そのときだけ、それを自覚したとき女は幸福を知る」
「どう女が男に仕えるのか、それはまずセックスが最初」
「セックスの快感を女が知るのが、世界平和の始まり、これが定説」
「どうやれば女がセックスを楽しめるのか、それは、誰とでもいやがらずセックスする、」
「求められれば、かならず応じる、それが女の幸せの始まり」
とぼんやりと聞いていましたが、どうも話しは女とセックスの話しばかりでした。
夜になって、修行も終わるとようやく寝る時間になりました。
道場に敷き詰められた布団の一つに入ろうとすると、信者の人が呼びに来ました。
連れて行かれたのはさっきの教祖の男性の部屋でした。
「今夜、お前の身体を浄化する、浄化して綺麗になるんだ」と教祖が言い出しました。
「俺に抱かれると、抱かれた女は浄化されるんだ」と言われてどうやら、私は教祖の夜の相手をさせられるのだと分かりました。
私は逃げだそうとしましたが、すぐに押さえつけられました。
熱く煮えたぎった欲望を前にして、私の心は逆らう気力を失いました。
しだいに激しさを増す欲望には抵抗する気力もなくなるほどの荒々しさがありました。
激しい渦の流れに私の体は飲み込まれ、体ごと深く沈み込んで浮き上がる望みもなくなりました。
子宮からあふれる潮の流れがつま先から頭のてっぺんまでを奔流となって走り抜けていきました。
私に許されたのは、望みを捨てて従属する快感に身をゆだねることだけでした。
このままずっと責め続けられたら、私はもう暴君に屈服するよりないと覚悟しました。
廃墟となって燃え落ちた私の身体を、男は最後の一撃きで貫きました。
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