亀姫様のお輿入れ

小桜けい

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14 羨ましい人

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 一騒動あったものの、川辺のピクニックはとても楽しく終わった。

(今日は楽しかったわ)

 夜。湯浴みを終えたシェンリュは、私室のベンチ状になった窓辺に座り、うっとりと昼の余韻に浸っていた。
 月明かりの下で黒々とした陰になっている山を眺め、昼間の楽しい思い出が次々と鮮やかに思い起こす。

 久しぶりに泳げたうえに、お弁当を食べた後には木の実採りも楽しんだ。
 鬱蒼とした木立の中でヒラヒラした竜宮の衣装は不向きなので、ベルノルトの胸ポケットに入って顔だけ突き出しての見学である。
 それでも灌木の前にベルノルトがしゃがめば、胸ポケットから突き出たシェンリュのすぐ前にも、赤や紫の瑞々しい実がくる。首を伸ばせば咥えて採ることもできた。
 もちろん、自分がその場で食べるくらいの量しかシェンリュには採れない。
 だが、ベルノルトは……

『私達はつまみ食いをするだけでちょうど良いのですよ。山の実りは、領民やここに住む生き物、皆のものです。屋敷で使う量があれば十分で、多くとり過ぎてもいけませんからな』

 そう笑い、彼は猛烈な勢いで木の実を摘んでいるカイとエルケを見た。
 狐やリスの獣人はとても器用だが、いささか一つの事に熱中しすぎる傾向があるらしい。
 カイもエルケも木の実採りが大好きなので、摘み始めて夢中になると、屋敷で料理や菓子に使う量くらいたちまち集める……というか、それくらい集めないと満足できないそうだ。

 それでシェンリュも心置きなく、見学とつまみ食いをのんびりと楽しめた。
 しかも、ベルノルトは美味しそうな実を見つけるとシェンリュにくれるので、こちらも大粒の実を探して彼にお返しすると、照れたように微笑んで受け取ってもらえたのが嬉しくてたまらない。

 あまりにも幸せ過ぎて、ようやくエルケとカイが籠をいっぱいにした頃には、すっかり夢見心地で頭がぽーっとなっていた。
 帰り道では危うく、温かな居心地のいい胸ポケットの中で寝入りそうになったくらいだ。

 夕食には、ベルノルトの獲った魚に、カイやエルケの採った木の実のソースがかかって出た。
 実の所、ラングハイムの食生活でシェンリュが一番驚いたのは、肉や魚の料理に果物のソースをよくかけるところだ。
 竜宮では、生食以外にも煮つけ、揚げ物、塩焼きなど多彩な魚料理があるけれど、果物のソースなど想像もせず、初めて食べた時にはちょっと変な感じだった。

 シェンリュが故郷の味しか受け付けなかった時の為にと、ベルノルトは海辺の街から竜宮料理のレシピや調味料もとりよせてくれていたらしい。
 この内陸地では、流石に海の魚までは簡単には手に入らないが、川魚で出来る限り竜宮の料理に近いものを作れるようになったと料理番から聞き、シェンリュは心より感謝した。
 そして今ではラングハイム風の料理法や味付けも、すっかり好物になっている。
 故郷の馴染み深い味は好きだが、別の美味しさで新たな扉が開けた感じだ。

(――私は亀の加護を受けて幸運だったのね。おかげで、ベルノルト様の元に来ることができたのだもの)

 川原でベルノルトに言われた事を思い出し、シェンリュは胸の内でじわりと温かなものが滲むのを感じた。
  彼の言う通り、シェンリュが亀の加護を受けていなければ内陸地に来ることはなかっただろう。
 人魚の姿ではどんなに美しくても地上を歩くのは無理で、浅い川で泳ぐことも出来ないのだから。
 そして、一生涯を泳ぐこともなく人の姿で過ごすなど、海人にとって想像を絶する苦痛だ。地獄に等しい。
 その点シェンリュならば、川でものびのびと泳げて内陸地でも不自由がない。
 だから、初めて王女として何か役に立てるのが嬉しくて、ラングハイムにやって来た。
 けれど今では、ベルノルトに出会えた事が嬉しく、亀の加護を受けて幸運だったと生まれて初めて思う。

 幸せにシェンリュが溜息をついた時、部屋の明かりがすっと消えた。

「え?」

 シェンリュは天井を振り仰ぐ。
 月明かりの中で目をこらせば、天井にある照明器具についたガラス球が明かりを失っていた。

 ラングハイム王国は、竜宮とはまた違う魔法を司る人間の国とも交流があり、そちらの国で作られた生活に便利な魔道具が流通している。
 魚を傷ませずにすむ保冷バケツや、この部屋の照明なども、そうした魔道具だ。

 魔道具は便利だが、照明用のガラス球には、よく不良品があるらしい。
 見かけでは解らないが、不良品だと、普通の交換時期よりも早く明かりが切れてしまう。
 照明の取り換えは簡単ですぐに交換できるので、もし切れたら誰か使用人に言ってくれと言われている。

(今ならまだ、誰か起きているようね)

 シェンリュは窓から外を覗き込み、階下の厨房に明かりがついているのを確認する。
 寝衣の上に薄い上着を羽織り、暗い廊下を静かに歩いて厨房へと向かった。
 厨房の扉は少し開いていて、隙間から数人の話し声が聞こえる。

「――じゃあ、旦那様は亡くなった婚約者様が原因で、縁談を断り続けていたの?」

 扉を叩く直前、聞こえたその言葉に、シェンリュは思わず手を止めた、

(ベルノルト様の御婚約者?)

 ドクン、と心臓が嫌な雰囲気で鳴った。
 盗み聞きなど良くない事だ。
 浜辺でひっそりと身を隠して佇んでいる時に、たまたま近くで話し込んでいる人々の会話が耳に入るのと、積極的に聞こうとするのとは全然違う。
 解っていたのに、ほぼ無意識のうちにシェンリュは小さな亀の姿となり、扉の隙間から中の様子を伺っていた。
 広い厨房の一角には使用人の食卓が置かれ、料理番と若いメイド二人が、酒と夜食らしきものを摘まんでいる。

「多分、そうだ。十年以上経った今でも、踏ん切りがつけられないんだろうな。シェンリュ奥様は本当に良い御方だとは思うが、どうしたって獣人じゃない。残念だがイリーナ様のように、旦那様の『毛皮の合う相手』になるのは無理だろう」

 しんみりと頷いた料理番はかなり酔っているらしく、顔がかなり赤い。
 メイド達は酔っていないようだが、顔を見合わせて神妙に頷きあっている。

「それなら仕方ないわよねぇ」

「うん。今まで、毛皮の合う相手がいなかったのならともかく……」

(……毛皮の合う相手?)

 初めて聞く言葉にシェンリュは首を傾げつつ、酔った料理番がつらつらと若いメイド達に話す内容へ耳をすます。

 料理番もメイド達と同じくこの地方に生まれ育ったが、十年ちょっと昔のまだ少年だった頃。家の事情で少しだけ王都に行き、アイヒヴェルガー家の街屋敷で住み込みの厨房見習いを勤めた。
 その頃にちょうどベルノルトも北方から帰還して、イリーナという兎獣人の貴族令嬢と婚約したという。

 『毛皮の合う相手』というのは、獣人だけが持つ感覚でとても相性の良い相手を指すらしい。

 とにかく、ベルノルトは見合いをしたイリーナと、互いに『毛皮の合う相手』だったと喜び、彼女と仲睦まじく結婚準備をしていた。
 だが、結婚式の前夜にイリーナは水の事故で亡くなり、ベルノルトは花嫁を迎えることはなかった。
 イリーナの遺体が見つからないまま死亡扱いとなった後も、ベルノルトが諦めきれず探し続けていたのを、当時少年だった料理番は痛ましい気分でそっと見ていたそうだ。

(そんな事が……だからベルノルト様は、ずっと独り身を通そうと……)

 扉に張り付き、シェンリュが呆然と身動きできずにいると、唐突に厨房の裏口が開いた。

「酔っ払いの声が外まで聞こえていましたよ。もう遅くて誰もいなかったから良いものを」

「ひぇっ、エルケさん!」

 腰に両手をあてて非常に怒った顔をしているエルケに、料理番とメイド達がギクリと椅子から立ち上がる。
 エルケは眉間に険しい皺を刻み、ツカツカと厨房に入ると料理番をジロリと睨んだ。

 屋敷の家政を束ねるエルケは、彼らの上司で教育責任者だ。
 無暗に怒ったりはしないものの、本格的に叱る時には非常に怖いそうで、料理番とメイドもすっかり顔を強張らせている。
 しかし、エルケは彼らを叱るでもなく、深いため息をつくと大きく頭を振った。

「イリーナ様と旦那様は御縁がなかった。それだけです。ただ、そうした昔話を無暗にして、もしもシェンリュ奥様のお耳に入ったらと考えなさい。正式に夫婦の誓いをたてたわけでもないとはいえ、奥様にすれば、決して良い気分にはなれないでしょう?」

「すいません。つい、考えもなしに……」

 柔らかく窘められ、料理番はしゅんと項垂れた。その隣でメイド達も謝罪を口にする。

「申し訳ございません。あたし達も悪かったんです」

「政略結婚にしても、シェンリュ奥様と旦那様は随分と仲良くされていらっしゃるから、その内には御子ができるかもなんて、軽口をたたいたのが発端で……」

 気まずそうに頭を下げたメイド達に、エルケが頷いた。

「ええ。お二人は実際にとても仲良くされていらしゃいますから、軽率な噂話はつつしみなさいね。昨今では毛皮の合う相手にこだわらず、異国との婚姻も盛んになっている事ですし……あら?」

 エルケは唐突にお説教を区切り、シェンリュのいる廊下側の扉の方へ急に視線を向けた。
 扉が僅かに開いているのに気づいたようだ。すばしこく扉に駆け付けて開き、急いで廊下を見渡す。
 だが、夜の廊下は暗い。
 間一髪で隅に下がり、甲羅に手足を縮こませた小さな亀のシェンリュに、エルケは気づかないままホッと息を吐いて扉を閉めた。

 シェンリュもドクドクと心臓が激しく脈打つのを感じながら、ホッと息をつく。
 そしてまたもや、我が身に持った亀の加護へ感謝をした。
 こうしてとっさに身を隠せなければ、エルケや料理番、メイド達と大層気まずい思いをする羽目になったはずだ。

(せっかく、こちらで良くして頂いているのに……勝手に話を盗み聞きするなど、悪い事をしてしまったわ)

 暗い甲羅の中で、シェンリュは反省した。
 そのままじっと隅で縮こまり、やがてエルケ達が厨房から出て就寝に向かい、すっかり辺りに人気がなくなると、人の姿に戻る。
 階段は一つの段が高すぎて、亀の姿では登れないのだ。

 廊下の窓から差し込む月明りを頼りに、静かに足音を忍ばせて自分の部屋へと戻った。
 照明は眠る寸前に切れたとでも言って、明日の朝に取り換えてもらえば良い。

(イリーナ様は、どのような女性だったのかしら?)

 柔らかな寝台に倒れ込んで目を瞑ると、どうしても先ほど聞いてしまった話が脳裏によみがえる。

 この政略結婚が決まった時、ラングハイム国王レオンから、ベルノルトが相手に選ばれた理由は一応聞いた。
 ラングハイム王家の血縁で、シェンリュと年頃のつり合う独身男性はベルノルトしかいなかった事。
 竜王陛下より、輿入れはしてもシェンリュが望まぬ限り夫婦の契りは無理強いさせたくないと条件付けられているが、ベルノルトも元より正式に結婚をする気はなかったので『形だけの政略結婚』という間柄を誠実に守るだろうという事。

 この二つだけだ。
 獣人の間では早婚で子沢山が宜しいという風潮のようだが、独身主義など色んな考えの人がいるのは自然だろうと、ベルノルトが独り身を望んだ理由までは聞いていない。

(いいえ。イリーナ様の事を知ったところで、どうなるものでもないわ)

 目を瞑ったまま、シェンリュは首を横に振る。
 そもそも、ベルノルトとは形だけの政略結婚だと互いに了承しているのだ。
 もっと素っ気ない、冷ややかな対応だって覚悟していたのに、この屋敷で信じられないほど温かく歓迎された。
 特に、ベルノルトは礼儀正しく距離をとりながらも、とびきり優しくしてくれるのに、これ以上何を望む?

「……海でも陸でも、私は誰かを羨んでばかりね」

 閉じた瞼の隙間から涙が零れ、シェンリュは自嘲気味に小声で呟いた。

 海では皆の尊敬を集める姉様達を羨み、陸では今こうして顔も知らぬ亡き女性を羨んでいる。
 ベルノルトの心は、未だイリーナという彼女が占めているのだろうと考え、それが羨ましくてたまらない。

 毎日ベルノルトと会話をするたびに、いっそう彼が好きになっていた。
 今日だって、身を守るしか出来ない亀の加護に呆れるでもなく、その加護でなければシェンリュがここに来られなかったと言ってくれ、嬉しくて舞い上がってしまったのだ。
 いつしか形だけの政略結婚という事も忘れかけ、彼の方でもシェンリュと出会った事を個人的に喜んでくれているのかと……そんな風に、無意識に自惚れていた。
 ベルノルトは別にシェンリュを個人的にどうこうというわけでなく、亀の加護を持った王女がいたから、自国の王が望む政略結婚が出来て喜ばしいとか、きっとそういう意味だったのに……。

 しかし、ひたすら胸が痛いけれど、早いうちにこうした自分の自惚れに気が付けて良かったのだ。
 何も知らなければ、シェンリュはもっと勘違いして鬱陶しくベルノルトにすり寄り、彼を困らせてしまう羽目になったかもしれない。
 イリーナについて知った事は決して表面には出さず、しかし忘れもせず、しっかりと心に留めておこう。

 シェンリュはそう決意し、手の甲で涙を拭った。
 
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