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再会3
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「お待たせ」
「いえ、大丈夫です」
「連れてきたよ。孫の宙光です」
「久しぶり、明日葉」
「久しぶり、宙光君」
明日葉と宙光はまるで数十年ぶりの邂逅を果たしたかのように顔を合わせた。
「取り合えず、座ろうか」
大君に促されて宙光は明日葉の向かいに座った。大君もまた宙光と並んで座る。
「条件については話してありますか?」
「うん。それは宙光も承知している」
「明日葉ごめん。君にそんなに深い傷を負わせてしまって、本当は、俺には合わせる顔なんて無いのに」
「ううん、仕方ないよ。親の都合だし、まだ中学生だったんだもん。私達にはどうにもならないことだったんだよ」
「でも、明日葉を傷つけたのは俺の親父だ」
「それは前に大君さんが代わりに謝ってくれた。それに、悪いのは宙光君じゃないよ」
「でも、今まで連絡の一つもしなかった」
「仕方ないよ。急に携帯替えられちゃったって大君さんから聞いたよ」
「それはそうだけど……でも、本当は覚えていたんだ、明日葉の連絡先だけは。覚えていながら合わせる顔が無いって自分に言い訳して、君から目を逸らしていた。ごめん」
「そうだったんだ……でも、それならどうして今頃になって?」
「こないだ街で出会った時、仕舞い込んでた昔の気持ちが溢れ出て来てさ。それで気付いた。そんな言い訳なんかより、明日葉の方がよっぽど大事だったってことにね」
「それで大君さんに話したの?」
「違う、俺は隠そうとした。お爺ちゃんが全部気付いて話してくれたのにね。それでもなお恥ずかしいことに、俺は変なプライドを盾に更に目を逸らそうとしたんだ」
「それならどうして、会いに来てくれたの?」
「お爺ちゃんが気付かせてくれたんだ。言い訳やプライドなんかで失うものがどれだけ大きいかをね。明日葉、俺にとって一番失いたくない人は君だった。俺は、俺自身のことをかなぐり捨ててでも、君に会うことを望むべきだった。……気付くのが遅くなってしまったけど、これだけは伝えたかった」
「……でも、私、今好きな人、いるよ」
「解ってる。でも」
その時明日葉の携帯が鳴った。宙光の視線に促され、それを見た明日葉は目を見開いた。
「誰にも渡したくない」
「本当に覚えていたの? ……だってもう、何年も経ってるのに」
「ひと時だって忘れたことなんか無い。ずっと好きだった」
「うそ……そうだ、大君さん連絡先教えたでしょ?」
大君は言葉を発する代わりに首を横に振った。
「信じられない。こんなの、こんなの無いよ」
明日葉は暫く困惑しながら、それでいて嫌な顔をしなかった。
「さて、どうやら背中の声は聞こえないみたいだね。それなら俺はもう行くよ」
「待って! 大君さん、もう少し一緒にいてよ」
「いいや、俺とはもう終わったろ?何かあるなら、目の前にいる君のことを大切に想う人に話してみると良い。どうなるかまでは責任取れないけど、後は二人に任せるよ」
そう冗談めかして大君は店を出て行った。
「いえ、大丈夫です」
「連れてきたよ。孫の宙光です」
「久しぶり、明日葉」
「久しぶり、宙光君」
明日葉と宙光はまるで数十年ぶりの邂逅を果たしたかのように顔を合わせた。
「取り合えず、座ろうか」
大君に促されて宙光は明日葉の向かいに座った。大君もまた宙光と並んで座る。
「条件については話してありますか?」
「うん。それは宙光も承知している」
「明日葉ごめん。君にそんなに深い傷を負わせてしまって、本当は、俺には合わせる顔なんて無いのに」
「ううん、仕方ないよ。親の都合だし、まだ中学生だったんだもん。私達にはどうにもならないことだったんだよ」
「でも、明日葉を傷つけたのは俺の親父だ」
「それは前に大君さんが代わりに謝ってくれた。それに、悪いのは宙光君じゃないよ」
「でも、今まで連絡の一つもしなかった」
「仕方ないよ。急に携帯替えられちゃったって大君さんから聞いたよ」
「それはそうだけど……でも、本当は覚えていたんだ、明日葉の連絡先だけは。覚えていながら合わせる顔が無いって自分に言い訳して、君から目を逸らしていた。ごめん」
「そうだったんだ……でも、それならどうして今頃になって?」
「こないだ街で出会った時、仕舞い込んでた昔の気持ちが溢れ出て来てさ。それで気付いた。そんな言い訳なんかより、明日葉の方がよっぽど大事だったってことにね」
「それで大君さんに話したの?」
「違う、俺は隠そうとした。お爺ちゃんが全部気付いて話してくれたのにね。それでもなお恥ずかしいことに、俺は変なプライドを盾に更に目を逸らそうとしたんだ」
「それならどうして、会いに来てくれたの?」
「お爺ちゃんが気付かせてくれたんだ。言い訳やプライドなんかで失うものがどれだけ大きいかをね。明日葉、俺にとって一番失いたくない人は君だった。俺は、俺自身のことをかなぐり捨ててでも、君に会うことを望むべきだった。……気付くのが遅くなってしまったけど、これだけは伝えたかった」
「……でも、私、今好きな人、いるよ」
「解ってる。でも」
その時明日葉の携帯が鳴った。宙光の視線に促され、それを見た明日葉は目を見開いた。
「誰にも渡したくない」
「本当に覚えていたの? ……だってもう、何年も経ってるのに」
「ひと時だって忘れたことなんか無い。ずっと好きだった」
「うそ……そうだ、大君さん連絡先教えたでしょ?」
大君は言葉を発する代わりに首を横に振った。
「信じられない。こんなの、こんなの無いよ」
明日葉は暫く困惑しながら、それでいて嫌な顔をしなかった。
「さて、どうやら背中の声は聞こえないみたいだね。それなら俺はもう行くよ」
「待って! 大君さん、もう少し一緒にいてよ」
「いいや、俺とはもう終わったろ?何かあるなら、目の前にいる君のことを大切に想う人に話してみると良い。どうなるかまでは責任取れないけど、後は二人に任せるよ」
そう冗談めかして大君は店を出て行った。
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