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回廊の秘密
回廊の秘密 4
しおりを挟む「俺が先に玄関開けておくからね。そっちのカートの荷は木箱だから、上に荷物載せて一緒に運ぶといいよ」
件のちいたまの追っ掛けチャトが付いているとはいえ、やはり寿尚としては子猫の無事を確認するのが最優先なのは当然であるらしい。
肩に掛けた大きなドラムバッグの中も、間違いなく大部分が猫用の貢ぎ物だろう。
キャリーカートを引き早足で緑のトンネルを抜けた彼は、あっと言う間に裏玄関から突入して行ってしまった。
「スナ先輩、いつもはむしろ細かいところを気にして追求してくるのに。猫愛好家は下僕と紙一重ってコレか」
「猫のためなら適温のミルクが作れても、人間相手なら白湯を飲む方がましな茶になるという、別回路で動いている男だ」
「尚君の家では、先代から使用人の人が会社の商品開発も兼ねてて、奉仕される主人側の参考にするからって家事はしちゃダメなんだって。猫関係はお父さんが作った会社だから、例外だって言ってたよ」
「使用人は会社の方に使用感のレポート提出、モニターになるのも業務のうちらしいからな」
カートの運搬力と「玉生の荷物を一つだけな」という詠の好意もあり、傍野と翠星がもう一度往復して、どうにか全部の荷物を家の中に運び込む事ができた。
アーチに対してそこそこ幅があるカートのサイズが心配されたが、通過が思いのほかスムーズに行えたのは「さっきより幅が拡がったけど、まあいいか」と今更なので、そういうものだと全員に流された。
玄関前の階段部分では翠星が手を貸して持ち上げたカートを押して、そのまま彼に続いて扉を潜った傍野は、問題なく玉生の家に立ち入れた。
演劇の舞台セットの様な壁の無いダイニングルームには、「今回もまた奇妙な――いや、ガランとしたホールよりは進歩してるか」と以前と比べると、むしろ住居としての形ができている事に密かな感動を覚えるのだった。
見ると寿尚のキャリーカートが靴箱の前にある広いスペースに置かれ、ダイニングの段になった上がり框に運んだ荷物が積まれているので、カートもそこにまとめて置いた。
「あ、傍野さん。引っ越しのお手伝いありがとうございました」
チャトとちいたまに餌を上げて来たらしく、通常の状態に戻った寿尚が傍野に礼を言いながら、ダイニングに出て来た。
そのタイミングで表の玄関からは扉を開閉して「ただいま~」と声を上げる駆が、廊下をガラガラとタイヤを転がし詠の荷物を運んで来る。
「ヨーミンの家の人はこっちに来れなかったみたいだな。標識の所にこれ置いてたけど、これで全部か一応確認はしてくれよ」
誰かが気を利かせて移動させたのか、玄関ホールのシンク下のパイプ棚にあったと思しきサンダルが置かれていたので、詠はそれでフローリングの床から土間に下りて来た。
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