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回廊の秘密

回廊の秘密 3

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「例の鍵で開いたみたいだな」

 目のいい翠星すいせいにはボンヤリとした外灯の光の中、離れた位置からでもシャッターの鍵穴にポケットから取り出した鍵を差し込むのが見えたらしい。
それから「自分の自転二輪もついでにそこに仕舞っとくっす」と、自転二輪車を開いたシャッターの中へと押して行った。
 そこで玉生たまおが『今、聞いていいのかな?』という表情で、よみをチラチラ見ているのに気付いた寿尚すなおがそれを指摘すると、本人ではなく見られていた方がフンとした様子で答えた。

「あの男なら根の部分が物騒だからな。その部分が鬼門だとしたら、それを抑えもしない相手など拒絶一択だろう」
「俺も物騒なのは拒絶理由になるとは言ったんだけどね」
「それで彼は、見切りは早いの? それとも粘る方?」
「今回は、引越しの許可が下りた時点で危険性は低いと承知している。入り口ですぐ見切っただろう」

 後続の四輪駆動が追い付いて来ないのに、そのまま気にしないでいいのかと外に向かう私道の方に目を凝らす玉生だが、その関係者である詠の方ははじめから彼がこちらに辿り着ける可能性は低いと達観していた様だ。
 そこへ興奮状態のかけるとやれやれといった顔の翠星が戻って来た。
どうやらガレージの中が彼にとって「楽しい作業場」であったらしい。

「ヨーミンなら、重い本どっさり持ち込んでるんだろうけど、荷物はカートに載せてるんだろう? オレがちょっと行って来てやろうか?」

 話が聞こえていたらしい駆の好意に「よろしく」と返事が返ると、「うっし、じゃあ行って来るな」と彼はさっさと駆け出して行った。
その間に「ここを通れると話が早い」と、ウキウキとした翠星が縛った長髪をご機嫌な犬の尻尾の様に揺らしてガーデンアーチに向かう。
もとより絡まる植物で見事に緑のトンネルと化したゲートは、いかにも彼の趣味だったので、友人たちも彼に任せて見守る姿勢だ。
彼が屈まなくても通り抜けられる通路は高さがあり、積み上げた荷物でもここから持ち込めるだろう。
その上ゲートを開くと、自然に点灯する外灯の光で足元が照らされた。
ご丁寧な事にそれも埋め込み式なので、万が一にも通行の際に引っ掛かる事は無いだろう。

「通路もレンガでしっかり整備してあるし、車で大荷物がある時なんか表より便利でいいよな」

 通り抜けが可能かと調べるついでに、ガレージから続くレンガの道を踵で叩いて足元の具合を確認すると、誰に聞かせるでもなく独り言ちる。
そう離れているわけでもないので耳に届いたその独り言に、「田畑たばたは降られても気にしないからピンとこないんだろうが、ガレージから雨に濡れずに家まで行けるのに注目するところだぞ」と書物を手にして歩く事も多い詠は呆れた様に突っ込む。
 そうやって確認を済ませた翠星が戻ると、通路に問題が無いなら今からわざわざ表に戻らなくてもいいだろうと、先ずは寿尚がキャリーカートを引き出して来た。

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