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玉生ホームで朝食を
玉生ホームで朝食を 5
しおりを挟む「あー、これで一応は一通り見て回った事になるんすかね?」
靴箱の前で翠星が誰に向かってというわけでもなく言うと、「外階段がある、という事は屋上がある可能性」と詠が返した。
「ここまで完璧にしているのに、屋上に問題があれば引っ越し前に注意されていたんじゃないか?」
そう聞いて外階段を上ってみる気になったらしい駆が裏玄関に足を踏み出すと、「あ、自分も一緒していいすか? 上から庭の感じ確認したいっす」と翠星も同行しようと後に続く。
「言われてみれば、確かに迂闊だったな。俺も確認しておこう」
そう言って玉生の方を見て「たまも行くだろう?」と誘う寿尚に、乗り遅れていた玉生はコクコク頷いて後を追い裏玄関に向かう。
詠は当然の様にもう外へと足を踏み出している。
扉を出ると早くも角を曲がろうとする大柄な後ろ姿があったが、同行する玉生たちに気付いて立ち止まって追い付くのを待っていた。
「このラティスの向こうは、木がまばらだな。何かあるのか?」
「上から見たら分かるんじゃないすか?」
二人に追い付いて角を曲がると、家から少し幅を取った位置に細木の素材を菱形の格子に組んだ柵が壁と水平に延びていた。
駆たちはそのラティスの上から向こう側が覗けるのでそちらに気を取られているが、玉生と詠にとっては頭よりも高さがあり、その上そこいらの蔓が絡んで格子の目を塞いでいるためろくに向こうの様子が見えない。
それで視線を移して、ラティスが延びた先の方に注目すると、格子の木の塀は温室のある端にまで届いている様だった。
家の幅から飛び出した温室部分をよく見ると、そこにはドアノブらしき取っ手があり、おそらく温室へ出入りする扉があると思われる。
その玉生たちの視線の先に気付いた寿尚が「ミミ」と駆を呼んで指差すと、目のいい彼はガラスの壁の一部が扉になっているのをハッキリと目視できた様で「おう、ちょっと見てくるな」と駆け足でそこに駆け寄り、取っ手を握った。
もし扉の鍵が掛からない場合、室内のうちだと思っていた縁側の戸締まりについて認識を改めねばならないと、試しに外から開こうとしたのだ。
「よし、開かないぞ。鍵穴もあったし、ちゃんと鍵が掛かっている。ついでに触ってみた感じ随分と丈夫そうなガラスだったぞ」
跳ねる足取りで戻って来た駆の報告に、「貰った鍵の束あるけど……」とホルダーのフックに掛けた一本の鍵を通したリングと、うるさく音を立てない様に革のケースカバーでキッチリとまとめた鍵束を、玉生はジャージのポケットからそっと出して見せた。
初日に玄関を開けた鍵はあらかじめ一本だけカバーの外に出ていたので探す手間もなく、家の中に入るという事で限界に近かった玉生は色々と頭が回らない状態で複数の鍵が手元にあるという話もしておらず、ホルダーの中にある鍵についてはみんなも気付かないままだったのだ。
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