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玉生ホームで朝食を

玉生ホームで朝食を 3

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「それで、今日は地下見るんすか? 庭とか温室もまだ、ちゃんと見てねえんすけど」

 スモモを囓りながら翠星すいせいが言うと、「……考えてみたら」とサクランボを手にしたよみが気難しそうな顔をした。

「この辺は東京湾の埋め立て地。地下に家屋を延長するより広い庭を利用するものでは?」
「貿易港のビルとかだと土地に余裕がないから、補強して地下に駐車場造っているけどね」
「ワインセラーとか地下に造るから、そういう理由があるかもだな」
「貯蔵庫も冷暗所って地下だったりするっすね」
「院のボイラー室は地下にあるんだって。危ないから入っちゃ駄目で見た事ないんだけど」

 みんなの返事に頷きながらも、「そして地下牢もお約束」とサラッと言い放つ詠である。
昨夜のファンタジー映像が脳に与えた影響なのか、物語に見る西洋の城を夢に見た玉生たまおが陰鬱な東洋的監禁の座敷牢ではなく、冒険活劇にありがちな牢破りの方を連想したのは幸いだった。
なんといってもこれから住む自宅の事だ。
ただでさえびくついているのにそんな印象まで持ってしまっては、これからの生活に差し障りが出てしまう。

「ああ、でも海底トンネルっていうのもあるから、そう考えたら案外奇抜なわけでもないよね」
「米利堅なんかだと竜巻から避難するのに、地下室作るのが当たり前だっていうしな」

 食べ終わったサクランボの種を利用するという翠星にそれを回収される頃には、階段を下りる位は何の問題もないだろうという結論が出た。
多少汚れてもいいという事で全員ジャージ続行で、探検の残りに出掛ける事にした。





 裏の玄関口に面した廊下は正面のホールの様な広さは無いが、それでもそこに設置された蓋の付いた収納棚が通行の邪魔にならない程度には余裕があった。
その廊下をかけるが先頭になりその斜め後ろに翠星が、続いて詠その後に玉生で殿に寿尚すなおという並びで進み、さらに先にある階段を下って行く。
 廊下がそうであった様にセンサーで頭上の明かりが点灯する階段は、途中の踊り場から横幅が緩い放射状で末広がりに長くなっていき、最後の段には完全な半円に広がる形になっている。
その床の材質も途中までは廊下から続く象牙の白一色だったのが、踊り場からそこに淡い灰色の斜線が少しずつ入りはじめ、階段を下りたその先ではその渦の中心に向かって床の素材の象牙色が徐々に灰色掛かり黒になっていくのに連れて、明るい白・灰・ベージュのランダムなラインが巻き込まれるように流れていき、その全体の色彩が反転していく様は中心の黒に飲み込まれる錯覚を起こしそうだ。
そんな床につい気を取られるが、上に目を向けると階段が長かっただけに辿り着いた先の空間は天井が高く、写真で見る様な美しくステンドグラスで装飾された外国の教会のホールにでも使えそうな広さを目の当たりにするのだった。

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