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玉生ホーム探検隊
玉生ホーム探検隊 17
しおりを挟むあれらの服はやはり屋敷の管理に従僕を雇うための制服なのでは、とか服飾デザインに興味があったのかも、作りが実用的に見えたがもしやコスチューム・プレイが趣味なのでは、つまり仮装用の衣装だったりしないか、などと二人はいつも読書の感想を語り合う時の様に過ごし風呂を済ませた。
孤児院ではドライヤーなどせいぜい髪の長い女子が優先して使うくらいで、玉生などは当然に自然乾燥が当たり前なので、今日も大雑把に水分をタオルで拭くだけだ。
ここにいるのが寿尚なら、ササッとドライヤーを当てついでにその必要性を説いたのだろうし、駆や翠星なら自分のついでにそれで乾かしてくれただろうが、詠の場合はもともとが世話を焼かれる側の人間なので自分の事を自分でするだけでも上出来の部類なのだ。
そんな詠は澄ました顔でドライヤーを使っていて、眼鏡がないと視界に問題があるがという話だったのにも関わらず、いつもの黒縁眼鏡を外している今、特に困っている様には見えないのだった。
玉生は単純に『身だしなみくらいは見ないでも平気なんだな』としか思わないが、それにしても動きに迷いがない。
詠がドライヤーのスイッチを切ったので、自分もこんなもんでいいかとタオルドライを切り上げた玉生が、使用したタオルを洗濯槽に入れようとしてジャージに着替える前の服に気付いて少し悩んだ。
脱衣所に正方形で縦三横三に組まれた空の棚があり、今は寿尚の着替える前の服で一枠だけ使用されている。
「洗濯……」
呟いた玉生に、「初日から張り切り過ぎ」とドライヤーを片付けながら、詠がキッパリと言った。
「同じ服着るのが嫌ならこの格好で買い物に出てもいい、電話で取り寄せもできる。チェスト一杯の服の中から選ぶ手もある」
そう言って詠が玉生の背中を押しながらみんなのいるリビングへ戻ると、背もたれに両腕を掛けていた駆が「ほら、グズグズしてるとすぐ夜中になるぞ」と手招きした。
そういえばもう窓の外は暗くて、気付けばリビングの照明が点灯している。
録画テープを漁っていた時に、テレビ受信機や音響機器、空調なども含めたリモートコントローラーがまとめて置かれているのを発見し、一通り確認してみたらしい。
そのついでに歩き回っているうちに、どうやらこの家の廊下はある程度の明るさをセンサーが判断した上で、人が通る時に一定の時間だけ点灯するというのが分かったそうだ。
部屋の部分はセンサー式とは別で、先程は足元のライトに気を取られて気付かなかったが廊下の壁にスイッチのパネルがあったらしい。
そのパネルがリモートコントローラーとは別に、ダイニング部分に下がっているペンダントライトやギャラリーの枠を利用して設置されたスポットライトや、リビングの天井のシーリングライトのスイッチになっていたそうだ。
しかし今リビングの方は、あえて円形の土台に棒を立てたようなデザインの独立した間接照明で、映画館の雰囲気を演出している。
スモールライトと似ている様で違う、祭りの夜の提灯を思い出す明かりが部屋の中にあるのがなんだか不思議だと、玉生はぼんやりと思うのだった。
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