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玉生ホーム探検隊
玉生ホーム探検隊 11
しおりを挟む「あー、白黒ツートンでロースタイル。これはスナさん向けだなー」
予想通りに白い扉の中には掃き出し窓があって、リビング並みに広い部屋でも日中は十分に明るさを得られる様だ。
その大きな窓は壁のほぼ一面の引き違いで、上下二枠の下側に嵌っているのが玄関ホールと温室の間と同じ不透明なガラスなので、今はカーテンが両側でまとめられているそこから見えるのは空の色一色だけだった。
その自然光で明るい部屋では、白を中心とした低い家具を中心としたインテリアの要所に黒を配置してアクセントとしている。
そんな壁際には一面を使って、横に長い四角の棚が一つ二つと段々に増えて天井付近から逆に一段づつ減る様に積まれている。
階段状のそれは寿尚の部屋になるとすればキャットウォークのための造形としか思えないのだった。
「うん、キープだね。ほかも見て、みんなにも納得する部屋があれば遠慮なく決定って事で」
寿尚本人も気に入った様で、彼の部屋はほぼここで決まりだろう。
「緑の部屋は、やっぱりタバタんの趣味――おお、中も見事にグリーンだなー」
次も勢いよく開けた緑の部屋はこれも日の入る大きな窓で、観葉植物が邪魔にならないギリギリに部屋中を飾り壁の角どころかベッドの周りにも点在する癒し特化の部屋で、「はー、これは……凄く好きだ」と翠星は珍しく恍惚としていたのだった。
「ところで、この赤と黄の間にある廊下の先の扉は――もしかしたら翠星がチェックしたギャラリーの短い階段部屋か?」
「え? ああ、位置的に多分そーっすね」
緑の部屋のトリップから早々と戻った翠星が、そう言ってスタスタと近付くとそのレバーハンドルの取っ手を引く。
するとそこは予想もしなかった明るさで、反射的に振り仰いだ視線の先の天窓がその光源なのだった。
おそらくここは西日の入る天窓の下にあって、それが今眩しく空から覗いているのだと思われる。
位置関係に納得して改めて下り階段の先をみれば、たしかにさっき見たギャラリーと同じでフローリングに敷かれたグレーのカーペットがチラリと見えた。
念のため短い階段を下りてそこから顔を出してみると、オープンカフェにあるようなテーブルと椅子が置かれているのも同じだった。
さっき確認した玄関も同じ場所から見下ろせて、やはりそこはリビング上の中二階で間違いなかった。
そこで戻ろうと振り返った翠星は踊り場だと思っていたのは実は通路で、裏玄関の方角に向かって右に長く伸びているのに気付いた。
左にもすぐ行き止まりになるスペースがあるが、こちらは小さなキャビネットとその上におそらく一階にある電話機の子機であろう物が電気スタンドと共に置いてある。
さっきは天窓に気を取られたせいで、明るさに目を眩まされてどちらにいも全く気付かずにいた様だ。
位置関係がハッキリしたので「ここの扉から出たら、すぐ下の階と会話できそうす。ついでにこの中、通路が向こうに続いてて、後、多分電話機の子機らしいのもあったっす」と戻ってから報告したのだった。
「こちらに連絡があった時に、急いで下の電話機まで行かなくてもいいのはありがたい。それに、いちいち行き止まりで引き返す造りよりは気が利いているけど、娯楽施設に住む気分だよ」
「やれやれ」と呆れたような寿尚に対して、詠の方は「絡繰屋敷のようだ」と案外面白がっている様だ。
駆などは「部屋割りできたら、次はそっちだな」と探検気分で、もはや楽しんでいたりする。
そんな中、これが自分の家だと思うとオタオタするばかりの玉生なのであった。
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