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無意識に加護が外れても仕様だから
しおりを挟む「正直言ってワタシの目的は、娯楽というか特に一押しの文化系の保護で、後はまあ十中八九滅亡するだろうに此方は放置というのも忍びないというか。あ、人の心理はよく分からないけど、拾った犬猫の里親探しする行動に近いかもしれないなあ」
人類はワタシのペットとほぼ変わらない発言に人類としては触れ辛く、聞こえなかった事にした彼女はそこを飛ばして会話を続ける。
「あ~、ゐゑを氏は割と創作ファンタジーというか、特に異世界系ジャンル板に出没してましたね。そういえば」
「元は文明を追って芸術とか文学とか色々経て来て、最近はカルチャーとかに嵌って、今は自分の創造活動の刺激にもなる異世界創作がワタシ的旬なんだよね」
ゐゑをは「だから突然変異的日本のサブカルチャーは絶対にキープしたい」と熱弁した後、溜息を吐いて更に語ったが、その内容は半ばボヤキである。
「実際これまで幾つもの世界を創造してきたけど、なかなか文明の発生まで行かないんだよ~? 育ったら育ったで続かないし、星の寿命も永遠じゃないしね。ワタシはもう原始時代やサバイバルには飽き飽きなんだ」
「じゃあ、今回は過去に造った世界も、転移先になったりって事は?」
「まあ、幾つか手を入れて利用したね。それこそ現地の文明やそこで使用されている超常現象に比べて、現代の知識がある分チートに働くと思うんだけど。一応は神託で新たなる民とは伝えてあるから、後はどうにか頑張って欲しいな」
聞けばゐゑをと同じく惑星開発を趣味とするが、それぞれの拘りで険悪になる事も多々ある為、そこそこ気の合う同好者同士の交流があるそうで、惑星が思う様に成長せず詰んだと判断した時点で破壊する派というのもあるらしい。
どうも一点集中型で一つの世界に入れ込むタイプによくある事で、完璧主義なのか失敗作を放置するのは恥だと公言しているそうだ。
それとは別に進化の終わりが見えたらやる気を無くす派や、興味を引く動きがないと放置派等それぞれの派閥が乱立しているとか。
それが討論の元になるのは割と恒例で、お互いにやれやれといった応対になるのが常だが、当たり前の様に拗れて険悪になる事も。
ただ長期に渡る趣味ゆえことごとくが長命種であり、趣味が変わるなりしてそのコミュニティを抜ける事でもない限り、その顔ぶれとの付き合いは半永久的に続くのだ。
なので以後に場が荒れる事を避ける為、疎遠になる様に交流会が分けられるのが暗黙の了解とされているというのだが、それでそこそこ気が合うというのなら、険悪になる相手の派閥の流儀とは一体……どうしても怖い考えになってしまう彼女なのであった。
「ワタシなんかはエンジョイ勢呼ばわりだよ~? 趣味でやっているんだから放っておいて欲しいよね!」
「はあ。私達のせいぜい百年そこらの寿命じゃ、想像つかないスケールで……正直、皆逃げて~って気持ちでいっぱいカナー?」
「心配しなくても基本的に“幸せに暮らしました”の方が好きだから、本人が選択を間違えなければそう悲惨な結果にはならない筈だけど」
そこで断言するのを躊躇したゐゑをは、胸の前で腕を組むと「う~ん」と唸った。
「え? いきなり何です? ちょっと聞くのが怖いんですけど、何か問題でも?」
「いや実際の所、何でそっちを選ぶかな~っていうパターンもそこそこあったなって。何なんだろうね、アレ」
「あ~あ~、裏の裏とか考えすぎならともかく、万人受け絶許の逆張りとかあるある。あれはもう不治の病だと思うしか無いのでは?」
「だよね」
彼女のその忌憚の無い言葉にゐゑをの口元に半月が浮かぶ。
「うん。無意識に加護が外れても仕様だから、そこは諦めてもらおう」
おそらく自分ルールで強引に事を進めた上での自爆には関知しない、普通にしている分にはそうはならない筈だからという事だろう。
というか好き勝手に“やっちまった”揚げ句に神を呪われても、“神サマ”の側としてはその庇護から縁切りするので「もう知った事では無い」のだとか。
ゐゑをに言わせれば、むしろその後に残る諸々のフォローが残ったりもするので、以後の苦情は受け付けないそうだ。
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