ぼくは帰って来た男

東坂臨里

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ぼくは帰って来た男 8

とりあえず入れとけ(危険)

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「飲み物は、紅茶か珈琲のボトルで勘弁してもらうけど、甘さ控えめとか種類はあるから好きな物を選んでいいよ」

 飲み物も仕舞っていたらしく次元倉庫からボトルを取り出しながら、美玖みくにも「お腹に余裕があれば、好きなだけ食べてもいいからね」と卒なく勧めるサインである。
美玖の方もボトルの横に置かれたウェットティッシュで手を拭くと、「はーい、この無糖のミルクティーいただきまーす。ケーキはぁ、う~ん、ここはモンブラン!」と、ウキウキして山の形をしたケーキを箱から取り出す。
白のフレアスカートを着ているのでアヒル座りをした膝の上には、「多少の毛が付いてもオッケー」と胡桃くるみを寝かせている。
あまりにも眠りっ放しなので、思わずゆうが「この子、どこかわるいの?」とサインに尋ねたが、「歓迎しない客の気配がしたら、素早い反応もするけど、遊んでいる時以外はいつもこんな感じなんだ」という事だ。

 
「そういえば、ここってパワースポットみたいだから、次元そーこの中のチェックするのに良いかも?」

 苺タルトの後に食べた勇者セレクトのザッハトルテがほろ苦く、美味しいと苦いの狭間でぐぬぅっとなりながら安定のショートケーキで一息吐いていた勇がそう言い出したのは、中の勇者がふと思いついて次元倉庫に意識を向けたのが原因だった。
今までは鑑定にしても以前の感覚で使っていたので、それこそ脳が記憶している名前で判断したのか、鑑定結果がその名前を出したのかとの区別が付いていなかったのだ。
次元倉庫の中にしても、例えるなら真っ暗闇の蔵の中を入り口から覗き込んだ状態だったのが、今同じ感覚で確認してみると大雑把ではあるが棚で整理された倉庫位には物の区別がついた。
そして、一つ一つの棚に意識を向けると何がどれ位あるのか分かる様にはなったが、魔石など適当に放り込んでいた物などはその桁数で目が滑ってしまう。
そんな溜め込まれた物資に勇が途方に暮れている時、勇者が速攻でやった事は『武器類はまとめて奥に隔離』と『呪毒系の封印』であった。
本当に帰るギリギリまで勇者は戦闘に明け暮れる生活で、容量に限度があるのかも分からない次元倉庫の整理をする気力など無かったのだ。
似たような物が何となく固まっているのは、母親の「ちゃんとお片付けしなさい」の教育で身に付いていた物だろうが、それにしてもこうして見るだけで当時の荒れた生活が分かろうというものだ。

「あー……」
「どうしたんだい? 勇君」
「私も今ちょっと見ただけでもキケンな薬剤とかあって、封印すべきか悩んじゃうんだけど、勇君も?」

 勇は「かい体に出してないのがそのまんまぁ……」と本当に困ったという顔で遠い目になった。
それを聞いた二人も直ぐにそれに思い当たって「あー……」となる。

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