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ぼくは帰って来た男 8
サインさんは基本偵察されるタイプ
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そんなこんなで四周する螺旋の廊下を無事に突っ切って、美玖が提供するために持参したクッションは丁度いい塩梅でお社に収まり、水晶玉はしっかりと安置された。
「というわけで、地球に戻ってからは向こうみたいにちょっと意識した程度では反応無かったのに、さっきはちょっとクッションの事考えてこうやって手をワキワキさせたら手の上に載っかってたんです」
そしてついでに次元倉庫についての報告をすると、自然に考察に入る研究オタクたちである。
「次元倉庫から物を出し入れするには多少の力を使っているって事なのかな? それで魔道具や魔石の様な力が籠っている物だと、こちらの力の薄い空気だけだと移動させるだけの力が不足して発動しない?」
「空気の違いって、高山でポテトチップスの袋がパンパンになったり、缶コーヒーが噴き出したりするのと似た様な感じなんですかねー」
「まあ、中らずと雖も遠からずかな? ああでも、こちらの物なら問題なく出し入れできている説明になるね」
サインはそう言うと手元の空間からローテーブルを出して、車から次元倉庫に移動させていた山の様なケーキの箱をその上に載せた。
「ここって外廊下の割にキレイ過ぎると思うんですけど、考えてみたら水晶玉とか庭に出しっ放しってどうなんです?」
「それは当然、敷地の境に自然とブラインドと進入禁止の刷り込みが掛かる魔道具を仕込んで、普通の背景としか認識されない様になっていてね。ついでに保護も掛けているから汚れも弾く様になっているよ」
「それって、かん視カメラのループ画ぞーみたいなの?」
画像をループさせる事で監視カメラの目を誤魔化すというそれは、勇が父親にくっ付いていた結果、一緒に視た映画でのネタだ。
「いや、どうせ塀が目隠しになっているから、どちらかというとスクリーンショットの様に一枚絵がずっと映っている認識だね。ああ、でもループ……決まったコマンドだけなら――」
何かにそう納得したサインは、腕時計を確認して「もう少し時間があるから、勇君は少しエネルギーの追加するといいよ」と彼にしてはワイルドにその場で胡坐を組んで腰を下ろした。
美玖は自然に人数分のクッションを出して勧めながら、以前のサインなら床に直に座るなんて想像もできなかったと妙に日本に馴染んでいる彼に、珍しい物を見たという顔になってしまう。
勇は勧められたクッションに正座したが、行儀作法がどうというよりは伸び上がってケーキのチェックをするための様で、「あ、お店でもあれが食べたかったんだあ」とクリームで苺を盛ったタルトに目を輝かしている。
無意識に手に浄化を掛けているのは、『オレはあの、ツヤツヤのチョコケーキがいいな』と主張する、戦場メシにも慣れた中の人だろう。
「というわけで、地球に戻ってからは向こうみたいにちょっと意識した程度では反応無かったのに、さっきはちょっとクッションの事考えてこうやって手をワキワキさせたら手の上に載っかってたんです」
そしてついでに次元倉庫についての報告をすると、自然に考察に入る研究オタクたちである。
「次元倉庫から物を出し入れするには多少の力を使っているって事なのかな? それで魔道具や魔石の様な力が籠っている物だと、こちらの力の薄い空気だけだと移動させるだけの力が不足して発動しない?」
「空気の違いって、高山でポテトチップスの袋がパンパンになったり、缶コーヒーが噴き出したりするのと似た様な感じなんですかねー」
「まあ、中らずと雖も遠からずかな? ああでも、こちらの物なら問題なく出し入れできている説明になるね」
サインはそう言うと手元の空間からローテーブルを出して、車から次元倉庫に移動させていた山の様なケーキの箱をその上に載せた。
「ここって外廊下の割にキレイ過ぎると思うんですけど、考えてみたら水晶玉とか庭に出しっ放しってどうなんです?」
「それは当然、敷地の境に自然とブラインドと進入禁止の刷り込みが掛かる魔道具を仕込んで、普通の背景としか認識されない様になっていてね。ついでに保護も掛けているから汚れも弾く様になっているよ」
「それって、かん視カメラのループ画ぞーみたいなの?」
画像をループさせる事で監視カメラの目を誤魔化すというそれは、勇が父親にくっ付いていた結果、一緒に視た映画でのネタだ。
「いや、どうせ塀が目隠しになっているから、どちらかというとスクリーンショットの様に一枚絵がずっと映っている認識だね。ああ、でもループ……決まったコマンドだけなら――」
何かにそう納得したサインは、腕時計を確認して「もう少し時間があるから、勇君は少しエネルギーの追加するといいよ」と彼にしてはワイルドにその場で胡坐を組んで腰を下ろした。
美玖は自然に人数分のクッションを出して勧めながら、以前のサインなら床に直に座るなんて想像もできなかったと妙に日本に馴染んでいる彼に、珍しい物を見たという顔になってしまう。
勇は勧められたクッションに正座したが、行儀作法がどうというよりは伸び上がってケーキのチェックをするための様で、「あ、お店でもあれが食べたかったんだあ」とクリームで苺を盛ったタルトに目を輝かしている。
無意識に手に浄化を掛けているのは、『オレはあの、ツヤツヤのチョコケーキがいいな』と主張する、戦場メシにも慣れた中の人だろう。
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