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ぼくは帰って来た男 8
パワースポットのある庭
しおりを挟む「先輩、有象無象には無難に対応しますもんね。それで平等に扱われた人が、先輩は完璧超人で贔屓はしないって結論出しちゃったと」
「だからサインお兄ちゃんの会社って、わかいアルバイトのヒトとかいなかったんだー」
「あ、そう言えばみんな普通にスーツかユニフォーム着ていたからそこは考えなかったけど、先輩って青田買いで人材育てるシュミありましたっけ。じゃあまずは、前例作って直接の配下みたいな人を育てるところから始めなくちゃかあ」
察しのいい二人に「そうなんだよね」と頷いたサインは先生を元の廊下に下ろすと、庭へのサッシをスライドさせて開く。
するとそこには寝殿造りの釣り殿の様に、高床と屋根だけの外廊下が四角い螺旋状に続いて、庭の中心に向かっているのだった。
|勇《ゆう)も美玖もモフモフに気を取られ、サッシの向こうには全く注意をしていなかったので、予想もしていなかった廊下の続きに驚いてしまった。
「――今、そこを開く前は気付かなかったけど、ずいぶんと変わったONIWAですね……」
美玖は見た目の奇抜さにすっかり気を取られているが、勇者の方は『中心に向かって力の流れができているな』とその構造に気が付き、勇の方は「こーいうのもパワースポットになっちゃうんだあ」と鑑定結果に感心している。
勇に「そうなんだ」と頷いたサインは、螺旋の廊下をショートカットして突っ切ると中心になっている廊下の端まで進んで行った。
壁が無いので吹きさらしの割には汚れの見えない廊下に、家主がそのまま出歩いているから大丈夫かな? と勇もサインの後に続く。
廊下の幅が勇者やサインが横に腕を伸ばしたよりも広そうなので、おそらくは二メートル程であろうか。
その螺旋の中心までに、勇は三度隙間を跨いだので、廊下は四周している筈だ。
美玖も足元のスリッパを見て少しわたわたしていたが、廊下と廊下の間は僅かとはいえ隙間があるので、足を掛けて転ぶかスリッパを落としそうな気がしてその場で見ている事にした様だ。
勇太と先生はサッシの陰から覗いているが追って来ないので、力の圧みたいなものが好きではないのか、得体が知れないものとして警戒しているのかもしれない。
「始めはここに鳥居を建立しようかと思ったけど、神社関係は管理責任者に寄付して便宜を図ってもらえばいいかって考え直したんだ。それでせっかくだからと色々と試しているうちにね」
そう申告しながら白い檜の板を幾つか取り出して、サッと取り出したタブレットで何かを検索しだした。
『試しているうちにパワースポットって……』と勇者は呆れ気味だが、向こうで美玖が「分かるわ~、自由に試作していると予想外の結果になるのよねぇ」といたく共感している。
サインの探し物はすぐ見つかったらしく、画面に映ったその画像を勇に見えるように向けてきた。
「勇君、そこにある板を使ってこれを作れるか試してほしいんだよ」
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