新魔王様、就任三日目で女勇者とベッドインして魔界を追い出されたので、人間界で平和に暮らします ~ 魔界最弱の厄災と人間界最強の少女 ~ 

兎野熊八

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第一章 ―魔界最弱の厄災と人間界最強の少女―

新魔王様、とりあえず氏族会議

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§ § §  





『おはようございます、皆さん、ご機嫌は如何でしょうか!』

『『『BuOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!! 』』』
 

 はい、元気ですね、返答は暴言ですが。

 集まった氏族のお偉方の前で俺はとりあえずご機嫌を伺ってみましたが、やっぱりダメでした。

 雄叫びが上がる、八割罵声、一割が皮肉、残り一割が意味が分からない田舎の言葉です。どこから来たんでしょうか、滅多に見ることの無い魔界深層のマタンゴ族までいます。凜々しいお髭ですね、あ、いやあれは髭じゃなくて髪なのか? とにかく皆怖い顔してます。



『SE%dr6!!TFY!”!!HU)J!!!IKo=!!!KFGHK!!!!!』



 はい、そこのギガンテス族の族長、五月蠅いですよ、何言ってるか分かりません。共通語の魔族語で話しなさい!!

 あ、地団駄踏まない! お茶が溢れる! 良い茶葉なんだから! あぁもうほら下にいるゴブリン族の長に散っちゃってあーあー、怒ってるよ、怒って族長が杖でギガンテス族長の足の小指を叩いてるよ、知らないよ! 民族紛争になっても。



『と、まぁ、皆様が何にそんなにお怒りなのか、魔王就任4日目の俺としましては、重々承知しておる所存でありまして……』

『『『BuOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!! 』』』



 ダメだ、九割が罵声になっちゃったよ……。
 そもそも種族が違うと言葉も違う、価値観も違う、文化も違います。
 そんな魔種族達を一つにまとめて会議をしようというのが、そもそも無理な話、そしてそんな無理な事をやってたのが前魔王様です、主に力に物を言わせながら、この強面の連中を従えていました。

 そんな前魔王に従っていた氏族の長達。

 ここだけで9氏族、さらに魔界には種族と長がいるのですが、その殆どが今日の会議をボイコットしております。
 
だって魔王様が変わりましたから、俺に。

 そしてその中でも一番の議席数を確保しているのが、我らが魔族の代名詞、神祖魔族達です。
 顔は牛だったり、カエルだったり、トカゲだったり、ヒツジだったり、猿だったりと、それぞれ特徴のある風体をしていますが、神祖魔族は必ず尻尾と角と翼があります。この三つを持って神祖魔族の証とされます。

 俺にもありますが、これが見えないくらい小さい、髪の毛と制服で全部隠れます。



『SE%dr6!!TFY!”!!HU)J!!!IKo=!!!KFGHK!!!!!』



 今騒いでいるのは血気盛んなギガンテス族の長です。
 余りにも大きいので、王の間の天井を支える柱みたいに立っています。
 中にいれる時も大変でした、方法は企業秘密ですが。



『黙れッ!! 貴様ら無礼であろうが!! 魔王様の御前であるぞッ!!』



 全員を一瞬で黙らせる怒声。

 放ったのは俺の隣に立つ、実に立派なご老体の神祖悪魔、

 前魔王様の右腕、『リミアス・ルド・トルネ』通称、ルド爺です。

 銀髪の鬣を持つ獅子で、ドラゴンよりも強く羽ばたける翼に、筋骨隆々の肉体に黄金の甲冑を纏い、右手には伝家の宝槍、それを杖代わりにしながら、今一度王座の隣でガンっとタイルを突きます。

 その槍は突けば大河を空へと巻き上げ、投げれば魔界の端まで届くとまで言われるちょっとした兵器です、今ちょっとした地震がおきました。


 そりゃビビリますよね、静かにもなります。


『ありがとう、ルド爺、助かったよ』

『いえ、こやつらは魔王様の何たるかを解っておりませぬ、仮にも我が王に対してあのような暴言の数々、そう易々と許せましょうか』

『今、仮にもって言ったね』

『……これは失礼しました、我が王、それで、こやつらをどうしてくれましょうか、お望みとあらばこの場で狩りましょうか?』

『いや、なにもしないよ、怒って当然だし』

『なんと! 仮にも王ともあろう御方が、あのような侮蔑を許すとは! 私が王ならこやつらの首を落としますぞ!!』

『また仮にもって言ったな? まぁもう仮にでもいいです、怒ってくれてありがとうございます』

『そうですか……、では仮の話ですが、後で狩りますか、こやつら』

『狩りません! 仮にも狩りません! もういいですから!!』



 なんでそんなに狩りたがってるんだ、獅子の本能だろうか。
 さて、では魔王としてのお仕事に移りたいと思います。



『えー、本日皆々様に集まって頂いたのは、事前に文を回して知らせた通りですがー』

『SE%dr6!!TKo=!!!KFGHK!!!!!』

『うるさいよ!! ギガンテスの長!! あと下にいるゴブ長に謝りなさい!! もうお茶でビチャビチャじゃないか!』

『黙れこのデカブツがっ!! 貴様の粗末な尻の穴に魔王様が収まるわけなかろうが!!』

『そんな事言ってるの!? すごい暴言だね!?』



 てか収まっちゃうよ! あのデカさなら頭からすっぽり収まっちゃうよ!



『FY!”!!H?U)J!!!ISE%dr6!!』

『なんだと貴様っ!! 仮にも魔王様に向かって!! よりにもよって、そのような粗末な尻の穴に一族全員を納めると申すか!! 貴様の尻の中は3LDKかっ!!』



 いや、それ前の我が家より広いです、前の我が家は2DKだったからね。
 親父と僕だけだったからね。



『いや、もういいですよ、ルド爺、話が進まないので、ね?』

『しかし……、仮にも魔王様に対して3LDKなどと、せめて4LDKくらいには』

『こらこらー、仮にも魔王様をどこに引っ越しさせる気ですかー』

『仮魔王様の願いとあらば、この槍にて拡張工事して来ますぞ、如何か?』

『如何かじゃないよ、本格的に計画するなー、リフォームしません、可愛そうでしょ、幸せな家族計画はこっちで考えてあるから、あぁはい、閑話休題、話を戻します、皆さん、静かにー!!』



 と、手をパンパンと叩いて今一度静かにしてもらいました。
 今度こそ言うことを聞いてくれました、主にルド爺が唸っているからですが。
 それでは、恐らく最初で最後になる魔王としての命令を皆に出します。




『手紙にも書いた通り、俺こと魔王は、人間の勇者と……あー、す、許してね』





 § § § 
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