アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家

文字の大きさ
上 下
105 / 121

答え合わせ8「ノティアの覚悟 (2/2)」

しおりを挟む
 唇が、離れた。

「ふふふっ、言わせませんわ」

 ノティアが一歩、二歩と僕から離れ、恥ずかしそうに微笑む。

「の、の、の、のののノティア――」

「――アリス・アインスと戦う為の戦力、必要なんでしょう? ベルゼビュート卿には強がって見せたけれど、本音は怖くて怖くてたまらないんでしょう?」

 頭を、撫でられた。

「わたくしはどこまでだって、あなたと一緒に行きますわ。あなたとともに生き、あなたとともに死ぬと誓います。わたくしの魔力も、この覚悟も、身も心もすべて、クリス君に捧げますわ。でもその代わり、わたくし、どうしても欲しいものがありますの」

 ノティアが微笑む。
 とびきり美しい顔立ちをしたノティアの笑顔は、本当に、本当に美しい。

「わたくしと結婚してくださいな。いまの口付けは、報酬の一部前払いだと思って下さいまし」

「で、でも、ノティア――…」

 シャーロッテの、『絶対に死なないで』と泣きつかれたときの顔が頭をよぎる。

「もちろんシャーロッテちゃんも一緒に」

「――――え? えぇぇええッ!?」

「ちなみにシャーロッテちゃんも了承済ですわよ」

「な、ななな……」

「まぁ公国じっかの手前、わたくしが正妻という形にはなるでしょうけれど……シャーロッテちゃんと一緒に平等に愛してさえくれれば、それで構いませんわ。それに、わたくしも百年以上も冒険者をやっている身。クリス君がどんな選択をしても、ついて行ける自信がありますわよ?
 このまま、この街の町長をやるもよし。
 ミッチェンさんあたりに町長の職を任せて、冒険者として気ままに旅をするもよし。
 猫々マオマオ亭からのれん分けしてもらって、どこかの街か村で定食屋を開くもいいですわね。
 西王国が持つ『れしぷろじょーききかん艦艇』とやらを鹵獲して、大海原に繰り出すというのも胸が躍りますわね!
 はたまた、領地も仕事もない、名ばかりの法衣男爵の爵位を公国からもらって、死ぬまで自堕落に生きるのもいいですわ」

「あ、あはは……」

 どれもこれも、バラ色の未来のように聞こえる。
 けれど、ノティアの将来像の前には、ただひとつ、巨大な障害が横たわっている。
 戦争という絶望が。

「ノティアは……勝てると思う? アルフレド王国に。おししょ……アリス・アインスに」

「勝てますわよ」

 ノティアが微笑む。

「勝てますわ。勝って、ふたり欠けることなくシャーロッテちゃんのところへ戻って、素敵な式を挙げましょう」


   ■ ◆ ■ ◆


 冒険者ギルド支部に着いた。
 僕はいまからここで、死闘――文字通り命を懸けた、アルフレド王国との、アリス・アインスとの戦争に参加してくれる味方を手に入れなければならない。
 大本命は、Aランク冒険者の『ホワイトファング』フェンリス氏だ。

 カランカランカラン……

 ギルドホール内の一切合切の視線がこちらに集まり、

「ヒッ……」

 相変わらず悲鳴を上げる僕と、

「「「「「…………」」」」」

 無言の冒険者たち。
 その冒険者たちがニヤニヤと笑いだして、それから、





「「「「「ざまぁぁぁああああああああ見ろッ!!」」」」」





「えぇぇええッ!?」

 ゲラゲラと笑っている冒険者たちの中からベテラン冒険者のベランジェさんが出て来て、僕の肩をバンバン叩く。

「はぁすっきりした! ここんところクリスを罵倒したら総パッシングされそうな感じだったからよぉ! 分かりやすいドジ踏んでくれて、ようやく文句が言えるってなもんだぜ」

「まったくだ。クリスの癖になぁ!」

「お前もお前で、得意げな顔しやがって! うざいったらねぇよ」

 過去に僕のことを『可愛がって』下さった先輩冒険者たちが、口々に僕を罵る。
 罵るのだけれど、未だにこの場所にいてくれているってことは……。

「皆さんは、逃げないんですか……?」

「逃げたい奴はもう全部逃げたぜ」

 部屋の奥を陣取っていたフェンリスさんが言う。

「ここに残っている奴は、西王国と戦う覚悟のある奴だけだ」

「み、皆さん……ッ!!」

 感極まってしまう。

「作戦はあるんだろうな、町長さん?」

 フェンリスさんの言葉に、僕はうなずく。
 ベルゼビュート様たちと一緒に練り上げた、犠牲を最小限に留めながらも、戦争を速やかに終わらせる為の作戦を、勇敢な戦士たちに打ち明ける。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...