93 / 121
テスト1「ウィンド・ドラゴン (1/2)」
しおりを挟む
オーギュスの身柄は僕が預かることとなり、オーギュスには領主様から紹介された犯罪奴隷商に【隷属】の魔法をかけてもらった。
オーギュスには、『アリス書店』で働くように命じた。
僕の屋敷には置きたくなかった……顔を合わせたくないから。
シャーロッテは、オーギュスを死なせなかった僕の選択を喜んでいるようだった。
こうして再び、平和な日常が戻ってきた。
■ ◆ ■ ◆
「トンネルを掘ろう」
ある日の午前中。
屋敷の居間でミッチェンさんからの定例報告を受けていると、やおらお師匠様がそう言った。
「「……トンネル?」」
ミッチェンさんと僕は話を中断してお師匠様に傾注する。
お師匠様の命令には絶対服従。
そして変ちくりんな物語本以外に関しては、お師匠様のお言葉はすべからく金言。
「そうだ」
お師匠様がマジックバッグから地図を取り出す。
地図:
「この通り、西の森に隣接するように大山脈が広がっていて、東西を分断している。そして、分断された向こうには大規模な炭鉱の街があるのさね」
「はい」
「そこで、この部分にトンネルを掘り、東西を繋げる。そして、難民村やら何やらでだいぶ北にも広がってきたこの街を、もっともっと北に伸ばす。そうすれば、この街・ロンダキア・炭鉱の街で循環する、巨大な商業圏が出来上がる」
「す、す、す、素晴らしぃ~~~~ッ!!」
ミッチェンさんが大興奮する。
「いや、でもお師匠様、北の山脈は風竜が出るじゃないですか……また食べられそうになるの、嫌ですよ僕」
「根こそぎ狩ってやればいい」
「根こそぎって……いくらノティアでも無理でしょう。無理だよね、ノティア?」
さっきから隣でお茶を飲んでいるノティアに尋ねると、
「わたくしでは無理ですわ。でも、いまのクリス君ならやれるのでは? 【無制限収納空間】のスキルレベル、7に上がったのでしょう?」
「え、ええっ、僕!? ムリムリ絶対ムリだって!」
「命令だ。やりな」
「ええっ!?」
お師匠様がニヤリと微笑む。
「いままで手ほどきしてやった、集大成だ。『北の大山脈からの、風竜一掃』――それが、儂からお前さんへの試練さね」
こうして僕は、ドラゴン退治の旅に出ることになった。
■ ◆ ■ ◆
……で、小一時間後。
お馴染みノティアの【瞬間移動】によって、僕らは北の山中にいる。
メンバーはお師匠様、ノティア、僕という、これもお馴染みのもの。
シャーロッテも来たがっていたけれど、『さすがに危険だ』と僕が止めた。
空を見上げると、
ギャギャギャギャギャッ!!
「うわ、いるぅ……」
「飛んでいますわねぇ」
1体の風竜が空を飛んでいるのが見える。
「ひとまずあいつから【収納】しな」
「この距離でやれるかなぁ……」
僕は空高くを飛んでいる風竜に向けて両手を掲げ、
「【無制限収納空間】ッ!!」
遠目ながらも一瞬、魔力光が発生したのが見えた――あれは【抵抗】されたときに発せられる光だ。
「ダメですお師匠様、ダメでした!」
「諦めるな! ほら来るよ!」
風竜は怒り狂った様子でここまで降りてくる!
「生きたままの【収納】に失敗したんなら、次は首を狙いな!」
「ギャァアアアアオオォォォォォオオオオオオオオオオッ!!」
風竜が地面に降り立ち、僕に向かって咆哮する!
「ヒッ――…」
竜の咆哮による【威圧】で、僕は動けない。
「【精神安定】! ほらクリス君、早く!」
「う、うん――【無制限収納空間】ッ!!」
無我夢中で風竜に向けて魔力を放つ!
――――風竜の首から上が、消滅した。
ズシィィィイン……
重々しい音とともに、風竜の体が地に伏す。
「やった――…やったやったやりましたお師匠様!!」
「ああ、よくやったさね」
「これで僕もドラゴン・スレイヤー――あ、あれ?」
足から力が抜け、尻もちをつく。
「おや、スキルに負荷がかかったことによる疲労のようさね? 【無制限収納空間】のスキルレベルはどうなったい?」
「はい。ステータス・オープン!」
そこには、『スキルレベル8』の文字が!!
「や、やりましたお師匠様! レベル8です!!」
「っしぃ! 神級目前さね!」
お師匠様が小躍りする。可愛い。
「よぉし、次は生きたままの【収納】に挑戦だよ!」
「は、はい……」
***********************
次回、クリスが風竜を狩り散らかす!
オーギュスには、『アリス書店』で働くように命じた。
僕の屋敷には置きたくなかった……顔を合わせたくないから。
シャーロッテは、オーギュスを死なせなかった僕の選択を喜んでいるようだった。
こうして再び、平和な日常が戻ってきた。
■ ◆ ■ ◆
「トンネルを掘ろう」
ある日の午前中。
屋敷の居間でミッチェンさんからの定例報告を受けていると、やおらお師匠様がそう言った。
「「……トンネル?」」
ミッチェンさんと僕は話を中断してお師匠様に傾注する。
お師匠様の命令には絶対服従。
そして変ちくりんな物語本以外に関しては、お師匠様のお言葉はすべからく金言。
「そうだ」
お師匠様がマジックバッグから地図を取り出す。
地図:
「この通り、西の森に隣接するように大山脈が広がっていて、東西を分断している。そして、分断された向こうには大規模な炭鉱の街があるのさね」
「はい」
「そこで、この部分にトンネルを掘り、東西を繋げる。そして、難民村やら何やらでだいぶ北にも広がってきたこの街を、もっともっと北に伸ばす。そうすれば、この街・ロンダキア・炭鉱の街で循環する、巨大な商業圏が出来上がる」
「す、す、す、素晴らしぃ~~~~ッ!!」
ミッチェンさんが大興奮する。
「いや、でもお師匠様、北の山脈は風竜が出るじゃないですか……また食べられそうになるの、嫌ですよ僕」
「根こそぎ狩ってやればいい」
「根こそぎって……いくらノティアでも無理でしょう。無理だよね、ノティア?」
さっきから隣でお茶を飲んでいるノティアに尋ねると、
「わたくしでは無理ですわ。でも、いまのクリス君ならやれるのでは? 【無制限収納空間】のスキルレベル、7に上がったのでしょう?」
「え、ええっ、僕!? ムリムリ絶対ムリだって!」
「命令だ。やりな」
「ええっ!?」
お師匠様がニヤリと微笑む。
「いままで手ほどきしてやった、集大成だ。『北の大山脈からの、風竜一掃』――それが、儂からお前さんへの試練さね」
こうして僕は、ドラゴン退治の旅に出ることになった。
■ ◆ ■ ◆
……で、小一時間後。
お馴染みノティアの【瞬間移動】によって、僕らは北の山中にいる。
メンバーはお師匠様、ノティア、僕という、これもお馴染みのもの。
シャーロッテも来たがっていたけれど、『さすがに危険だ』と僕が止めた。
空を見上げると、
ギャギャギャギャギャッ!!
「うわ、いるぅ……」
「飛んでいますわねぇ」
1体の風竜が空を飛んでいるのが見える。
「ひとまずあいつから【収納】しな」
「この距離でやれるかなぁ……」
僕は空高くを飛んでいる風竜に向けて両手を掲げ、
「【無制限収納空間】ッ!!」
遠目ながらも一瞬、魔力光が発生したのが見えた――あれは【抵抗】されたときに発せられる光だ。
「ダメですお師匠様、ダメでした!」
「諦めるな! ほら来るよ!」
風竜は怒り狂った様子でここまで降りてくる!
「生きたままの【収納】に失敗したんなら、次は首を狙いな!」
「ギャァアアアアオオォォォォォオオオオオオオオオオッ!!」
風竜が地面に降り立ち、僕に向かって咆哮する!
「ヒッ――…」
竜の咆哮による【威圧】で、僕は動けない。
「【精神安定】! ほらクリス君、早く!」
「う、うん――【無制限収納空間】ッ!!」
無我夢中で風竜に向けて魔力を放つ!
――――風竜の首から上が、消滅した。
ズシィィィイン……
重々しい音とともに、風竜の体が地に伏す。
「やった――…やったやったやりましたお師匠様!!」
「ああ、よくやったさね」
「これで僕もドラゴン・スレイヤー――あ、あれ?」
足から力が抜け、尻もちをつく。
「おや、スキルに負荷がかかったことによる疲労のようさね? 【無制限収納空間】のスキルレベルはどうなったい?」
「はい。ステータス・オープン!」
そこには、『スキルレベル8』の文字が!!
「や、やりましたお師匠様! レベル8です!!」
「っしぃ! 神級目前さね!」
お師匠様が小躍りする。可愛い。
「よぉし、次は生きたままの【収納】に挑戦だよ!」
「は、はい……」
***********************
次回、クリスが風竜を狩り散らかす!
21
お気に入りに追加
335
あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる