アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家

文字の大きさ
上 下
85 / 121

レッスン79「疫病 (2/5)」

しおりを挟む
「ここから出して! 私たちの村に帰るのよぉっ!!」

「こんなところにいたら、呪い殺されちまう!!」

 西端の城門は大混乱に陥っていた。
 閉じられた門と、それにすがりつく大勢の難民。
 そして、必死に門を閉じている警備員の方々。

「門は閉鎖してるんですね」

「……はい。彼らが西王国に戻ったとしたら、きっと反逆罪で処刑されてしまうのでしょう? いまはあのようにして正気を失っているようですが……見捨てるわけにもいきませんよ」

「良い判断だと思いますよ。ということは、東の門も?」

「はい。城塞都市へ逃げようとする難民を、押しとどめております。城塞都市に病魔をバラまかれでもしたら、それこそ領主様にこの場所を取りつぶされてしまいます」

「さすがはミッチェンさん」

「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――万物解析アナライズ】」

 お師匠様が難民たちを魔法で解析して、

「いるね。こりゃ感染症さね……こんだけ体中を侵されてれば、さぞ苦しかろうさ」

「カンセンショウ? まぁいいや、治せますか?」

「儂の【大治癒エクストラ・ヒール】だけだと細菌を抑え切れないね」

「サイキン?」

「病魔のことさね」

「あぁ、はい。あ、じゃあ以前、リュシーちゃんのお父さんの毒を【収納】したみたいにやれば――」

「正解だ」

 お師匠様が嬉しそうに微笑む。
 お師匠様に褒められて、僕は鼻高々だ。

「まず、儂の【万物解析アナライズ】補助付きの【無制限アンリミテッド収納・アイテム空間・ボックス】で、彼らの病魔を取り除き、その上で儂が【大治癒エクストラ・ヒール】を使えば、すぐに快復するだろう」

「良かった! ――では」

 僕は大きく息を吸い込んで、

「難民のみなさん!」

 声を張り上げた。
 難民の方々が、うつろな表情で振り返る。

「この病は、呪いでも瘴気でもありません! その証拠に、我がお師匠様の治癒魔法によって、あっという間に治療して見せましょう!」

 は、恥ずかしい……けどパフォーマンスは大事だ。これも町長の仕事!

「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――万物解析アナライズ】! 【視覚共有シンクロナイズド・アイ】」

 僕は目をつぶり、難民たちの体を蝕むモヤモヤ目がけて、

「【無制限アンリミテッド収納・アイテム空間・ボックス】!!」

 モヤモヤが消えて、

「……尊き生命の息吹とともに・光の神イリスの奇跡をここに示せ――広域大治癒エリア・エクストラ・ヒール】ッ!!」

 温かな治癒の光が、難民の皆さんを包み込む。

「「「「「……………………あれ?」」」」」

 呆然となる、難民の方々。

「お、お腹が痛くない……?」

「苦しくなくなった……」

「どうですか、我がお師匠様のお力は!!」

 胸を張りつつも、一安心だ。


   ■ ◆ ■ ◆


 東門も、同じようにして鎮圧した。
 移動にはノティアの【瞬間移動テレポート】があるからスイスイだね。
 そうして本丸、難民村に踏み入れてみたのだけれど――。

「ここは呪われた土地なんだよ!!」

「こんな病気だらけの村に住めるわけねぇだろ! さぁ帰った帰った!」

 ゴロツキどもが、良からぬウワサを喧伝して回ってる!!

「お前ら、止めろぉ!」

 僕が叫びながら村に入ると、

「「「「「ヒッ、く、首狩り族ぅ!?」」」」」

 ゴロツキどもが、三々五々と逃げ去っていく。
 …………が、唯一逃げなかった奴がいた。

「はははっ、ざまぁねぇな!!」

 壮絶な笑みを見せながら、僕を憎々しげに睨みつける少年――…オーギュス。

「ご覧の通り、てめぇがちょっと離れた間に、街は病魔まみれさ!」

「――――……」

「こんな場所に街なんて作るからだ! 何もかもお前の責任だ――クリス」

「――…」

「どうやって責任取るんだ? この疫病が城塞都市にまで及んだら、お前はきっと縛り首だ!」

「…………だったら、治せばいいだろ?」

 僕は負けじと、オーギュスを睨み返す。

「お師匠様」

「あいよ――【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――万物解析アナライズ】」

「【無制限アンリミテッド収納・アイテム空間・ボックス】」

 難民村を覆いつくす病魔を、軒並み【収納】した。
 続いて、

「……光の神イリスの奇跡をここに示せ――広域大治癒エリア・エクストラ・ヒール】ッ!!」

 お師匠様による、村全体を覆った、広大な範囲に及ぶ【大《エクストラ》治癒・ヒール】!!

「皆様ぁ!!」

 ノティアに【拡声スピーカー】の魔法をかけてもらい、難民村全土に声を届ける。

「たったいま、わたくし、町長クリスとそのお師匠様アリス様による治癒魔法を村全土にかけました!! 呪いとか瘴気とかいうのはすべてウソです!!」

 恐る恐る、といった様子で、各家の中から難民さんたちが出てくる。

「ほら、皆さんもお感じの通り、病はすっかり治りました!!」

 できるだけ力強く、僕は叫ぶ。

「大丈夫です! 僕は――町長たるわたくしクリスは、皆さんの生命と財産を守ります!!」

 そう、高らかに宣言して。
 僕は…………去り行くオーギュスの背を、睨みつけた。



***********************
 次回、じわじわ広がる疫病封じ込めに必要なのは――。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...