上 下
69 / 121

レッスン66「オークの集落 (8/8)」

しおりを挟む
「【目録カタログ】!」

 お師匠様に指示され、【目録カタログ】を名前順に表示する。

「ドナ……ドナ……あった!」

『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の骨片』『ドナの右腕の骨片』『ドナの右腕の骨片』『ドナの右腕の髄液』……

「うへぇ……」

目録カタログ】ウィンドウをのぞき込むドナが、嫌な声を出す。

「これらとお前さんを、クリスの【収納アイテム空間・ボックス】の中で統合する。儂の【万物解析アナライズ】によるサポートがあれば、可能だろうさ。が、ひとつ問題がある」

「「問題……?」」

 僕とドナの声が重なる。

「ああ。ドナ、お前さん自身を一度、クリスの【収納アイテム空間・ボックス】に【収納】しなきゃならないってことさね」

「「――――……」」

「この【目録カタログ】を見る限り、オーク・ジェネラルすら生きたままの【収納】に成功しているから、お前さんも死ぬ心配はないが――さて、どうするさね?」

「…………」

 ドナは、うんうんうなりながら悩む。
 そりゃそうだ。
 僕の【収納アイテム空間・ボックス】に【収納】されるってことは、一時的とはいえ僕に生殺与奪の権を握られるということだもの。

「俺、クリスさんを信じます!! お願いします!!」

 けれど、ドナは決心したようだった。

「分かった」

 僕はうなずく。
 本心では僕自身が不安で堪らないのだけれど、他ならぬドナに不安な顔は見せられない。

「安心して――【無制限アンリミテッド収納・アイテム空間・ボックス】!」

 ドナの姿が消える。
 難民の女の子が、不安そうな顔でこちらを見てくる……うぅ、僕までより一層不安になってしまうから、やめてほしい。

「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎】――」

 お師匠様は【万物解析アナライズ】を発動寸前まで詠唱し、僕の【目録カタログ】ウィンドウに手をかざして、

「【大治癒エクストラ・ヒール】――【万物解析アナライズ】。よし、【念話テレパシー】」

 お師匠様と僕の思考がつながる。

『治癒後のイメージを解析した。あとはお前さんが【目録カタログ】でドナの体と腕の破片を統合すれば元通りのはずだ』

『わ、分かりました……』

 僕は【目録カタログ】ウィンドウで『ドナの右腕の肉片』のひとつに指で触れ、それをリストの中にある『生きているドナ』の文字に重ね合わせる。
 ――果たして、『生きているドナ』に吸収されるようにして、『ドナの右腕の肉片』の文字が消えた。

『おぉっ!? これって成功したってことですか!?』

 女の子やエンゾたちを不安にさせない為に、【念話テレパシー】で尋ねる。

『ああ、問題ないさね。その調子で全部つなげちまいな』

『はい!』

 言われた通り、腕のかけらをドナ本体にどんどんと投入していく。
 そうして腕のかけらがなくなって、

「よし――出しな」

「はい! 【収納アイテム空間・ボックス】!!」





 目の前に、ドナが現れた。
 ――右腕が存在する、ドナが!!





「……あれ? もう終わったんですか?」

 ドナはきょとんとしている。
収納アイテム空間・ボックス】内は時間が止まっているからね。
 そんなドナが、ふと自分の右腕を見て、

「って――うおおおっ!? う、腕が戻ってる!!」

「うん。動かしてみてもらえる?」

「は、はい――うぉぉ、動く! 動きます!!」

「はぁ、良かった――…」

 気が抜けて、僕はその場に座り込んでしまった。


   ■ ◆ ■ ◆


 女の子のご両親からは、泣いて感謝された。
 すべてはドナのおかげだから、と言っておいた。
 結果として腕が戻ったとはいえ、利き腕を失ってまであの子を守り切ったドナだもの……報われなきゃおかしいよね。

「それにしても、オークの集落まで随分と距離があるとは思わないかい?」

 難民村の片づけを手伝いながら、お師匠様がそう言った。

「これだけ離れているってのに、難民村が出来て1日や2日で村の存在を知って、大挙して押し寄せるなんてさ」

「ど、どういうことですか……?」

「儂にも分からないが、注意しておくに越したことはないさね」

「わ、分かりました……冒険者ギルドマスターにも相談して、西の森方面の警備を強化してもらいますね」

「まぁ、それも重要なんだが、もっと手っ取り早い方法があるさね」

「というと?」

「壁さ。難民村や交易所、『街』をまるっと城壁で囲んでしまえばいい」

「んな、簡単に言ってくれますけど……」

「出来るさね、いまのお前さんなら」

「それって――」

「もちろん、【無制限アンリミテッド収納・アイテム空間・ボックス】の力でさ」

「やっぱり……」



***********************
 次回、一夜城。
 アリス・アインス師匠「【収納アイテム空間・ボックス】で天地創生!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……

石のやっさん
ファンタジー
虐められ自殺までした僕が異世界転移......もう知らない。 主人公である竜崎聖夜はクラスで酷いイジメにあっていた。 その執拗なイジメに耐えかねて屋上から飛び降り自殺をした瞬間。 聖夜のクラスが光輝き女神イシュタスの元に召喚されてしまう。 話しを聞くと他の皆は既に異世界ルミナスに転移ずみ。 聖夜は自殺し、死んでいたので蘇生したぶん後になったのだと言う。 聖夜は異世界ルミナスに行きたくなかったが、転移魔法はクラス全員に掛かっているため、拒否できない。 しかも、自分のジョブやスキルは、クラスの情報でイシュタスが勝手に決めていた。 そのステータスに絶望したが……実は。 おもいつきで書き始めたので更新はゆっくりになるかも知れません。 いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません…… からタイトルを『ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……』に変更しました。 カクヨムコン9に出品予定でしたが、期間内に10万文字まで書けそうも無いのでカクヨムコン出品取り消しました。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

最強の回復魔法で、レベルアップ無双! 異常な速度でレベルアップで自由に冒険者をして、勇者よりも強くなります

おーちゃん
ファンタジー
俺は勇者パーティーに加入していて、勇者サリオス、大魔導士ジェンティル、剣士ムジカの3人パーティーの雑用係。雑用係で頑張る毎日であったものの、ある日勇者サリオスから殺されそうになる。俺を殺すのかよ!! もう役に立たないので、追放する気だったらしい。ダンジョンで殺される時に運良く命は助かる。ヒール魔法だけで冒険者として成り上がっていく。勇者サリオスに命を狙われつつも、生き延びていき、やがて俺のレベルは異常な速度で上がり、成長する。猫人、エルフ、ドワーフ族の女の子たちを仲間にしていきます。

処理中です...