アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家

文字の大きさ
上 下
28 / 121

レッスン27「水 (6/6)」

しおりを挟む
「これが、マスターの誇る七大奥義のひとつ、【お料理クッキング収納・バイ・空間アイテム・ボックス】さね」

 た、確かにこれは奥義かも。世の中の料理人たちを敵に回しそう……というか、絶望させそう。
 っていうか『マスター』とやらの奥義、また出てきたな。

【首狩り収納アイテム空間・ボックス
洗浄クリーンナップ収納・バイ・空間アイテム・ボックス
お料理クッキング収納・バイ・空間アイテム・ボックス

 あとの4つは何なんだろう?
 まぁ、お師匠様が適当にふかしてる可能性も十分にあるんだけど。

「あの、これ調理させて頂いてもよろしくって!?」

 と、目を輝かせてノティアが言った。

「儂ゃ構わないが、お前さんは?」

「え、僕ですか!? も、もちろん構いませんよ!」

 というか、パーティー解消云々、結婚云々はともかくとして……そのくらいの頼みなら、公女殿下相手に断ることなんて無理だ。

「ではお言葉に甘えて……【念力テレキネシス】」

 2枚の半身がふわりと宙に浮く。
 半身はゆっくりと回転しており、ノティアがマジックバッグから取り出した塩と香辛料コリアンダーで彩られていく。
 香辛料の王様と言えば黒胡椒だけれど、あれは南方でしか育たないから、この辺りでは超高級品なんだ。
 かく言う僕は、香辛料にうるさい猫々マオマオ亭に勤めるシャーロッテから聞きかじったことがあるくらいで、食べたことがない。
 ちなみに猫々マオマオ亭で出てくる香辛料はコリアンダーでも胡椒でもなく、花椒とか山椒とかだ。

「【火炎ファイアの壁・ウォール】」

 ノティアの両手から発生した極小の炎の壁が、ニジマスの半身を両面から熱していく。
 たちまち、ものすごくおいしそうな匂いが漂ってきた。
 ノティアはマジックバッグからお皿を出して、ニジマスの塩焼きを【念力テレキネシス】で盛り付ける。
 ナイフとフォークを添えて、

「召し上がれ」

「え、いいんですか? 頂きます!」

「あー……悪いが儂は遠慮しておくよ」

「もぐもぐ……うっま!? あ、ノティア、気を悪くしないでくださいね。お師匠様は小食なんです」

「あら、そうなんですの。じゃあわたくしが頂きますわ。――ぱく。こ、こ、これは美味しいですわ!」

 ノティアが僕の手を取ってくる。

「クリス、わたくしの伴侶兼専属料理人になってくださいまし!」

「えぇぇ……いやいや、料理したのはノティアじゃないですか」

「わたくしは焼いただけですわ。やはり、小骨や鱗はおろか『臭み』まで分離できてしまうあなたの【無制限アンリミテッド収納・アイテム空間・ボックス】がすさまじすぎますわ!」

「…………ごほんっ!」

 お師匠様が不機嫌な様子で咳払いをした。

「お前さん、ここに来た目的を忘れちゃいないだろうね? 魚はあくまで、【目録カタログ】による分離の練習代だ。さっさと水の精製をするよ!」

「は、はい! すみませんでした!」

 お師匠様の命令は絶対服従。
 僕は直立不動で返事をする。

「よし、じゃあ儂の【万物解析アナライズ】影響下にある状態で、『水』の詳細を見てみな」

「はい! ――んげっ」

『水』『水中昆虫』『寄生虫』『細菌』『小石』『砂』『その他有機物』『その他無機物』……。
 川の水は煮沸させないと飲んじゃいけない、ってのは冒険者の間じゃ常識だけれど……ここまで気味悪いものだったとは!
 なんだよ、『寄生虫』って……。

「じゃ、虫と虫と細菌と小石、砂、その他有機物は捨てちまいな……遠くに」

「はい!」

 森の中の方へ射出した。

「お師匠様、この『その他無機物』? っていうのは捨てないんですか?」

「これがねぇ、水精製におけるキモなのさ」

「はぁ」

「じゃあその『水』を両手の指で長押しして、片方の指を動かしてみな」

「はい? お、おぉおお!?」

『水』が『水』と『水』に分離した。
 分離元の『水』の量は『計測不能』って書いてるんだけど、分離した方の『水』は『1リットル』と書いてある。

「そんなふうにして【目録カタログ】の中で好きな量だけ分けることができるのさ」

「すごいですねぇ!」

「お前さんの加護エクストラ・スキルさね。んじゃ、少ない方の水から、『その他無機物』を取り除いた上で、飲んでみな」

「はい――【収納アイテム空間・ボックス】」

 言われた通り1リットルの水から『その他無機物』を地面に捨て、コップをテーブルの上に取り出し、その中に水を注ぎ込む。
 嗅いでみる。匂いは――しない。
 飲んでみる。……ん? んんん?

「なんか変わった味……味? いや、これは味が……しない?」

「超純水だからねぇ!」

「超純水?」

「そう。普通の水ってのは、ミネラル――超微細な鉱物が含まれていて、水の味ってのはその、ミネラルの味なんだよ。ミネラルの中にはナトリウム――塩が入っているからね」

「へぇ……?」

「この国の知識水準じゃあ、ちと難しかったかねぇ。まぁとにかく、ミネラルの入っていない水は美味しくないし、何より飲み続けているとミネラル不足になって、体調を崩しちまうんだ」

「――え!?」

「あぁ、一口飲んだくらいじゃ何も影響はないから心配しなさんな。儂がお前さんの体調を害するようなことをするわけないだろう?」

「――――……」

 毎晩の『魔力養殖』でしこたま吐かされてるんですが……。
 おかげで最近は、お風呂とご飯の前に魔力養殖の時間を持ってくるようになった。

「というわけで、その水はもう捨ててしまって、残りの方の水を長押ししてみな」

「はい」

目録カタログ】の『水』を長押しし、『その他無機物』をさらに長押しすると、果たして『ミネラル』と『その他』と表示された。

「よし、『その他』を捨てれば最高の飲み水の完成さね」

 こうして僕は、一生困らない量の飲み水を手に入れた。



***********************
 ここまでお付き合い下さり、誠にありがとうございます!m(_ _)m

 次回、西の森にとんでもないものが出来ていて、クリス、ビビる。
 アリス・アインス師匠「仕事が早い奴は好きさね」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...