23 / 121
レッスン22「水 (1/6)」
しおりを挟む
「というわけで、いよいよ実戦さね」
「や、や、やっぱり無理ですってお師匠様!!」
おなじみ、西の森にて。
今日は何と、ゴブリン討伐の常時依頼を受けてしまった。
「儂の【万物解析】抜きでやりな」
「そ、そんな! 目視できる距離でなんて、殺されちゃいます!!」
「ほれ、11時方向600メートル先にゴブリン3!」
「無理です無理です!! ぜぇったいに無理です死にます!!」
「はぁ~~~~……冒険者家業が聞いて呆れるさね。分かったよ、儂のとぉっっっっっっておきの魔法でサポートしてやるさね。まずは、【念話】」
お師匠様と精神がつながる、なんとも不思議な感覚。
「続いて――【思考加速4倍】!」
――その瞬間、世界が止まった。
いや、正確には、ゆっくりとだけど世界は動いている。
地面の草木はひどくゆっくりと動いている。
それに、その光景を見ようとしている僕の動きも、ひどく緩慢だ。
こう、悪夢の中で、水の中にいるみたいに上手く動けない感覚。
『これが、4分の1の世界さね』
お師匠様の声が聞こえた。その声は普通の速度だ。
ゆっくりとお師匠様の方へ顔を向けてみれば、ちょうどお師匠様も、こちらを向こうとしているところだった。
『お前さんはいま、敵ゴブリンよりも4倍もの速さで思考することができる。そりゃ手足の動きは4分の1のままだが、思考が速くなれば魔法の発動も速くなる。特に、お前さんの【収納空間】は特別製だからね』
【念話】で話しかけてきながら、お師匠様が微笑む。
なるほど、お師匠様はこの魔法に――この感覚に慣れてるってわけだ。
『さ、お行き。大丈夫だ、後ろでちゃんと見てて上げるし、治癒魔法の準備もしておいてやるから』
『――はい!』
僕は森の中へ走って行こうとして、あまりの体の重さに上手く進めず転びそうになり、けれど100メートルも走るころには慣れてきた。
何しろ4倍思考して試行できるのだ。
――彼我の距離100メートルほどで、木々の間からゴブリンたちの姿が見えた。
目が合う。
弓持ちが1、槍持ちが2。
僕が数歩走る間に、槍持ちたちがこちらに体を向け、弓持ちが矢を番える。
思わず僕は立ち止まる。両手を掲げ、丹田の魔力を意識する。
槍持ちたちがこちらへ突進し出して、同時に弓持ちが矢を放ってきた!
矢が、正確に僕目がけて飛んでくる!
『【収納空間】ッ!!』
泣きそうになりながらも、目で追える速さの矢を睨み、唱える。
――矢が消えた。
消えた! 【収納】に成功した!
――よし、いける、戦える!
見れば槍持ちたちがあと数歩のところまで来ていたので、
『【収納空間】ッ!!』
今度は比較的落ち着いて、2本の槍を【収納】することに成功する。
『そのまま首を狩っちまいな!!』
お師匠様の声。
『は、はい――』
驚き戸惑う2体のうち1体の頭部を睨みながら、
『【無制限収納空間】ッ!!』
――バチンッ!
と、ゴブリンの首元で真っ白な光。
『お、お師匠様! 抵抗されました! やっぱり精神力を持った魔物を【収納】し殺すなんて無茶です!!』
『やれる! 気合の問題さね!』
『んな無茶な!』
僕はゴブリンに背を向け、逃げ出しながらお師匠様に抗議する。
『あ、こら逃げなさんな! 気持ちの問題さね! 魔法ってのはイメージが大事だ! 気づいてるだろう、お前さん? お前さんは口を動かさずに【収納空間】の行使に成功した――つまりお前さんは、「無詠唱」に成功したんだよ! 英雄クラスの快挙だ! この街に「無詠唱」使いなんているさね!?』
『いない、いません!』
『つまりお前さんは――こと【収納空間】に関して言えば天才なんだ! お前さんに【収納】できないもんなんてこの世にないさね! さぁ、立ち止まって振り返りな!!』
言われた通り、振り返った。
得物を奪われた2体のゴブリンは、どうしていいか分からず戸惑っているようだった。
弓持ちの1体だけが、ちょうどこちらに矢の1本を飛ばしてくるところだった。
『【収納空間】ッ!!』
まずは危なげなく、その矢を【収納】することに成功する。
――――そして。
『さぁ、あの醜いゴブリンどもの首を狩り取るところをイメージするんだ』
イメージ、した。
『儂の言う通りに唱えるさね! ――首狩りぃッ!』
『首狩りぃッ!』
『『【収納空間】ッ!!』』
――――果たして。
果たして3体のゴブリンが首から上を失い、ゆっくりゆっくりと倒れていった。
「おめでとう! これでお前さんも、【首狩り収納空間使い】さね!」
ふと、時間の流れが普通に戻った。お師匠様が思考加速の魔法を解いたんだろう。
「な、なんですか、【首狩り収納空間使い】って……」
僕は思わず、その場に座り込んでしまった。
■ ◆ ■ ◆
【首狩り収納空間使い】クリスのステータス:
***********************
引き続きご覧下さり、誠にありがとうございます!
どうぞ、最後までお付き合いの程を、宜しくお願い致します!
次回、アリス・アリソン師匠に負けず劣らずの超美人セクシーダイナマイトボディーなエルフのお姉さん登場!?
「や、や、やっぱり無理ですってお師匠様!!」
おなじみ、西の森にて。
今日は何と、ゴブリン討伐の常時依頼を受けてしまった。
「儂の【万物解析】抜きでやりな」
「そ、そんな! 目視できる距離でなんて、殺されちゃいます!!」
「ほれ、11時方向600メートル先にゴブリン3!」
「無理です無理です!! ぜぇったいに無理です死にます!!」
「はぁ~~~~……冒険者家業が聞いて呆れるさね。分かったよ、儂のとぉっっっっっっておきの魔法でサポートしてやるさね。まずは、【念話】」
お師匠様と精神がつながる、なんとも不思議な感覚。
「続いて――【思考加速4倍】!」
――その瞬間、世界が止まった。
いや、正確には、ゆっくりとだけど世界は動いている。
地面の草木はひどくゆっくりと動いている。
それに、その光景を見ようとしている僕の動きも、ひどく緩慢だ。
こう、悪夢の中で、水の中にいるみたいに上手く動けない感覚。
『これが、4分の1の世界さね』
お師匠様の声が聞こえた。その声は普通の速度だ。
ゆっくりとお師匠様の方へ顔を向けてみれば、ちょうどお師匠様も、こちらを向こうとしているところだった。
『お前さんはいま、敵ゴブリンよりも4倍もの速さで思考することができる。そりゃ手足の動きは4分の1のままだが、思考が速くなれば魔法の発動も速くなる。特に、お前さんの【収納空間】は特別製だからね』
【念話】で話しかけてきながら、お師匠様が微笑む。
なるほど、お師匠様はこの魔法に――この感覚に慣れてるってわけだ。
『さ、お行き。大丈夫だ、後ろでちゃんと見てて上げるし、治癒魔法の準備もしておいてやるから』
『――はい!』
僕は森の中へ走って行こうとして、あまりの体の重さに上手く進めず転びそうになり、けれど100メートルも走るころには慣れてきた。
何しろ4倍思考して試行できるのだ。
――彼我の距離100メートルほどで、木々の間からゴブリンたちの姿が見えた。
目が合う。
弓持ちが1、槍持ちが2。
僕が数歩走る間に、槍持ちたちがこちらに体を向け、弓持ちが矢を番える。
思わず僕は立ち止まる。両手を掲げ、丹田の魔力を意識する。
槍持ちたちがこちらへ突進し出して、同時に弓持ちが矢を放ってきた!
矢が、正確に僕目がけて飛んでくる!
『【収納空間】ッ!!』
泣きそうになりながらも、目で追える速さの矢を睨み、唱える。
――矢が消えた。
消えた! 【収納】に成功した!
――よし、いける、戦える!
見れば槍持ちたちがあと数歩のところまで来ていたので、
『【収納空間】ッ!!』
今度は比較的落ち着いて、2本の槍を【収納】することに成功する。
『そのまま首を狩っちまいな!!』
お師匠様の声。
『は、はい――』
驚き戸惑う2体のうち1体の頭部を睨みながら、
『【無制限収納空間】ッ!!』
――バチンッ!
と、ゴブリンの首元で真っ白な光。
『お、お師匠様! 抵抗されました! やっぱり精神力を持った魔物を【収納】し殺すなんて無茶です!!』
『やれる! 気合の問題さね!』
『んな無茶な!』
僕はゴブリンに背を向け、逃げ出しながらお師匠様に抗議する。
『あ、こら逃げなさんな! 気持ちの問題さね! 魔法ってのはイメージが大事だ! 気づいてるだろう、お前さん? お前さんは口を動かさずに【収納空間】の行使に成功した――つまりお前さんは、「無詠唱」に成功したんだよ! 英雄クラスの快挙だ! この街に「無詠唱」使いなんているさね!?』
『いない、いません!』
『つまりお前さんは――こと【収納空間】に関して言えば天才なんだ! お前さんに【収納】できないもんなんてこの世にないさね! さぁ、立ち止まって振り返りな!!』
言われた通り、振り返った。
得物を奪われた2体のゴブリンは、どうしていいか分からず戸惑っているようだった。
弓持ちの1体だけが、ちょうどこちらに矢の1本を飛ばしてくるところだった。
『【収納空間】ッ!!』
まずは危なげなく、その矢を【収納】することに成功する。
――――そして。
『さぁ、あの醜いゴブリンどもの首を狩り取るところをイメージするんだ』
イメージ、した。
『儂の言う通りに唱えるさね! ――首狩りぃッ!』
『首狩りぃッ!』
『『【収納空間】ッ!!』』
――――果たして。
果たして3体のゴブリンが首から上を失い、ゆっくりゆっくりと倒れていった。
「おめでとう! これでお前さんも、【首狩り収納空間使い】さね!」
ふと、時間の流れが普通に戻った。お師匠様が思考加速の魔法を解いたんだろう。
「な、なんですか、【首狩り収納空間使い】って……」
僕は思わず、その場に座り込んでしまった。
■ ◆ ■ ◆
【首狩り収納空間使い】クリスのステータス:
***********************
引き続きご覧下さり、誠にありがとうございます!
どうぞ、最後までお付き合いの程を、宜しくお願い致します!
次回、アリス・アリソン師匠に負けず劣らずの超美人セクシーダイナマイトボディーなエルフのお姉さん登場!?
25
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる