アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家

文字の大きさ
上 下
12 / 121

レッスン11「ドブさらい (4/5)」

しおりを挟む
目録カタログ】で調べてみたら、信じられない量の汚泥が入っていた。
 それでも信じられなかったので、近場の側溝を除いてみたら、本当に、本当にぴっかぴかになっていた。
 一方、魔力は気絶寸前にまで減っていたので、お師匠様から【魔力譲渡《マナ・トランスファー》】で分けてもらった。
 そして、いま。

「…………はぁ~ッ!? 今朝受けたドブさらいの依頼が完了したぁ!?」

 僕らは、ギルドホールの受付にいる。

「はい! 『内西地区』の城壁側半分の側溝をすべて、綺麗に掃除しました」

「はぁ~……」

 受付嬢さんが深い深いため息を吐く。

「あのですねぇ、クリスさん……そりゃ、あなたが大変そうにしてらっしゃるのはいつも見てましたから、同情はしますよ? ですがウソはいけません。当ギルドは、悪質な虚偽報告者を警吏に突き出す権利を持っているんですからね。今回は聞かなかったことにしますので――」

「本当なんです! 僕の遠隔【収納】能力で、こう、ばばっと一気に!」

「……依頼を受けてから1時間も経っていないのに?」

「本当なんですって! ほら、実際に見てもらえれば分かりますから!」

「ちょっと、営業妨害は止めて下さい! 次の方も待ってるんですから――」



「…………揉め事か?」



 受付の奥から、筋骨隆々の大男が出てきた。

「あっ、ギルドマスター! この子たちが虚偽の申告をしてきて……」

「虚偽?」

 大男――初めてお会いしたけど、冒険者ギルドマスターらしい――に睨まれる。

「ひっ」

【威圧耐性】のない僕は、それだけでもうすっかり怖くなってしまったけれど、ウソはついていないんだ、ちゃんと主張すればいい。

「だから、ウソじゃないんです! 信じて下さい!」

「……お前、等級と名前は?」

「Fランクのクリスです」

「あぁ、【無制限アンリミテッド収納・アイテム空間・ボックス】の」

「ぼ、僕のことをご存じなんですか……?」

「そりゃ、俺ぁギルドマスターだぜ? 特にお前さんは何かと……な」

「――――……」

「まぁいい。とにかくここにいちゃ他の冒険者の邪魔になるから、俺の部屋に来な」


   ■ ◆ ■ ◆


 ギルドマスターはお茶を出してくれた。
 その上で、

「あのなぁ、お前さんが苦労してるのは知ってるし、正直可哀想だとは思ってるよ。けどなぁ、虚偽の申告で報酬をせしめようってのは頂けない」

 諭すような口調で、さっきの受付嬢さんとの会話の再現みたいなのが始まる。

「本当なんですってば!」

「ギルドマスター殿よ、どんな依頼内容なのかくらいは見てやってもよいのではないかな?」

 隣に座るお師匠様が口を挟んできた。

「ん? お、おぉ。お前さんは噂の新人――省略詠唱使いだな?」

左様ヤー

 言いながら、お師匠様が依頼書をギルドマスターに差し出す。

「ドブさらい、ね。いつ受注したんだ?」

「今朝です」

「――――はぁっ!? お前そりゃいくらなんでもウソのつき方が下手くそ過ぎるだろう!」

「本当なんです! 【目録カタログ】!」

「なっ……お前それ、上級【収納アイテム空間・ボックス】が使う技か!?」

「ほら、見てください――さっき取ったばかりの汚泥です!」

 適当な木皿と、その上に少量の汚泥を出す。

「「「くっさ……」」」

「お、おい、分かったからもう仕舞え」

「す、すみません……【収納アイテム空間・ボックス】」

「はぁ……じゃあ行くか」

 ギルドマスターが立ち上がる。

「え、どこへ……?」

「お前さんが本当にウソをついていないのか、確かめにだよ」


   ■ ◆ ■ ◆


「な、ななな……」

 最寄りの側溝をのぞき込んで、絶句するギルドマスター。

「い、いやいやいやいや、いくらなんでもこれはありえねぇだろう!? そっちの新人が、何か幻術の類を……」

「お、お師匠様に失礼なこと言わないでください! ほら、臭いもないでしょう? 何なら触って確かめてください」

「ど、ドブに触るのはちょっとなぁ……」

「クリスや」

 お師匠様がニヤニヤと笑っている。

「実際に見せてやったらいいことさね」


   ■ ◆ ■ ◆


 そうして再び、城壁の尖塔に登る。

「ひぃっ、ひぃっ、ひぃっ……」

 最後尾で汗だくになる僕と、

「またかね。体力の方もつけさせなきゃいけないねぇ」

「……おいお前、冒険者家業やっててその体力のなさはまずいぜ」

 そんな僕に対して呆れ返るお師匠様とギルドマスター。

「それじゃ、さっそく始めよう。【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎】」

「はぁッ!? お前さん、そりゃ聖級魔法の――」

 お師匠様がニヤリと笑って自分の唇に人差し指を立てる。

「【隠蔽ハイド】――【万物解析アナライズ】――クリス」

「はい」

 お師匠様が僕のまぶたに触れて、

「【視覚共有シンクロナイズド・アイ】……ほれ、いっちょかましてやれ」

 お師匠様の視界の中で、『内西地区』の、ドブさらいをしていない方の半分が青白い光に包まれる。

「【万物解析アナライズ】によりて導き出されし、『除去すべき汚れ』を【収納】せよ――【無制限アンリミテッド収納・アイテム空間・ボックス】ッ!!」



***********************
 ここまでご覧下さりありがとうございます!
 本作は『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』応募作品です。
 毎日最新話を更新し続け、同カップの最終日である5月15日をもって完結の予定です!
 極上の『ざまぁ』体験と、驚きのどんでん返しをご提供致します。
 何卒最後までお付き合いくださいませ!

 次回、いままで虐げられ続けてきた主人公・クリスの大進撃が始まります!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...