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38「真相の裏側」
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💭 🔁 ❤×????
『スターハント』さんは、僕の小説活動初期からカクヨムで僕のフォロワーになってくれて、以来ずっと応援し続けてくれていた人だ。
今でもよく覚えている。
一年前、生まれて初めてUPした小説がまったく読んでもらえず、何日も何日も、何週間も、
『0 PV』
という呪いのような文字を睨み付けながら過ごしていた。
小説はスタートダッシュが命だ、連投が命だって聞いていたから、短編連作形式で毎日投稿し続けていた。カクヨムの『近況ノート』(活動報告)も毎日書いたし、同じホラー畑の書き手さんにもいっぱい絡みに行って、★もつけたしフォローもした。Twittooのアカウントも開設し、宣伝し続けた。
なのに。
第1話 0 PV
第2話 0 PV
第3話 0 PV
第4話 0 PV
第5話 0 PV
第6話 0 PV
第7話 0 PV
第8話 0 PV
第9話 0 PV
第10話 0 PV
・ ・
・ ・
・ ・
『0 PV』。
ゼロ。ゼロ。ゼロ。
ゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロ!!!!
僕の書いた物語には、たったの1 PVの価値も無いって言うのか!? これだけ多くのカクヨムユーザーが居て、誰一人として僕の小説を読んでくれないのか!? 僕に、存在する価値は無いって言うのか!?
……気がおかしくなりそうだったある日、1話目に1 PVが付いた。それから小一時間のうちに、全話に1 PVが付いた。
――誰!? 誰が読んでくれたんだ!? お礼が言いたい! けれど、カクヨムにはPVから読者を辿る機能は無い。
悶々としていると、今まで一度も点灯したことのなかった『通知』アイコンが光っている事に気付いた。
――あの時の興奮は、今も覚えている。
震える手で『通知』アイコンに触れると、
『あなたの作品をフォロー 1分前 @StarHuntさん』
の文字が。
さらに再び、『通知』アイコンが光った。それは、命の輝きだった。
心血注いで書いた小説を、
評価してもらえないどころか、
感想ももらえないどころか、
読んでもらえないどころか、
たったの1クリックすらしてもらえない――そんな惨状に心が壊れそうになっていた僕を救ってくれた、光。
『あなたの作品に★レビュー 1分前 @StarHuntさん』
僕は、狂喜乱舞した。居候させてもらっていた家の主――大叔父が怒鳴りに来るまで、部屋の中で踊り回った。
やっと、僕の作品を読んでくれる人に巡り会えた! 『スターハント』さん! 僕の作品を評価してくれる人に見つけてもらえた!! 嬉しい嬉しい嬉しい!!
……けれど、その認識は間違っていたんだ。
そう――。
僕は『見つけてもらった』んじゃない。『見つかってしまった』んだ。
『スターハント』という名の、怪物に。
■■■9時前 / 同じ旅館にて■■■
「初めて見たときから『コイツはヤバイ』って思ったよ」米里くんが滔々と語り始める。「現実が見えてない感じが、星狩に良く似てるとも思った。だからあいつはきっと、星狩の霊なんかを呼び寄せちまったんだろうな」
「どういうこと……?」
「あいつは――星狩は、『いいね』の権化だ。いいねが欲しくて堪らなくて、いいねの為なら何でも出来て、いいねの数だけが人間の価値だと思ってる。……まぁ、分かるよ。俺もお料理系YouTuberやってるからさ。『数字が全て』って感覚は、分かる。けど、星狩のやつは異常だった」
「――――……」私は蹴鞠くんの方を見る。
「……はい」果たして蹴鞠くんは頷いた。「否定は出来ない、と、思います」
「このクラスにはさ、いいね稼ぎが上手いヤツが多いんだよ。俺や蹴鞠はもちろん、正岡に天晴に舞姫に越古に、上江や四谷なんかも凄い。ずっと隠してたけど、VTuberとしての馬肉も、朝のおはよう一つで数千いいねを稼ぐようなバケモノさ。けどそういう連中はみんな、一芸を持っているか、顔がいいか、あるいはその両方か、だ」
かるたくんから聞いたところによると、米里くんはお料理VTuberとして名を馳せているらしい。それになるほど、隣の蹴鞠くんほどではないにせよ、彼もまた顔がいい。
「けど、星狩にはそういうのは無かった。いや、顔は悪くねぇんだから天晴や舞姫みたいにダンス動画撮ったり、越古みたいにコスプレしたりすりゃ多少は伸びたかもしれないのに、そういうことはしない。自分の顔は晒さないっていう変なこだわりがあったみたいだな。
だからあいつは、俺にいいねの手に入れ方を聞いてきた。
俺はあいつに、今言ったようなことをアドバイスしたさ。けど、そういうのは嫌だって言う。じゃあ何か一芸は無いのかって聞いたら、無いって言う。今から何か特技を作れって言っても、それは面倒臭いって言う。
俺は面倒臭くなってきて、『何でもいいからとにかく呟け』って言ったんだ。そうしたらあいつ、通学路の風景写真とか、日常の愚痴だとか、役に立たない事ばっか呟き始めた」
私も就職するまではTwittooをやっていて、米里くんが言うところの『役に立たない事』を毎日呟いてたから、星狩良子のことは悪く言えないな……なんて思っていると、米里くんがフォローするかのように、
「もちろん、趣味でやってるだけならそれでも問題ないさ。問題は、星狩がどうしようもなくいいねを欲しがっていた事だ。あいつは俺に、そういうツイートを見せてきては、『どう?』、『いいねして!』って言ってくるようになった。俺はこれ以上絡まれるのも嫌だから、内容は読まずにいいねだけした。あの時の星狩は――――……物凄く嬉しそうだったな。まぁ、気持ちは分かるよ。俺も、人生で初めていいねがもらえた時はすごく嬉しかったもんさ。けど……それであいつは、味を占めちまった」
「どういうこと……?」
「あいつはクラス全員に、いいねとリツイートをするように強要し始めたんだ。自分の、内容のない、クソ下らないツイートをだぜ? その勢いには鬼気迫るものがあって、誰もがあいつを不気味がった。女子の中には、あいつに『何でいいねくれないの!?』って詰め寄られて泣き出すヤツすらいた」
「――――……」
「あいつはクラスで孤立していった。誰もあいつにいいねを付けなくなった。そうして最後にあいつは、俺に泣きついてきた。『いいねを頂戴』『どうしていいねをくれないの!?』って」
「そうして米里くんは――――……」
言ってしまったのだ。
例の言葉を。
「…………その翌日、あいつは自殺した」
💭 🔁 ❤×????
『スターハント』さんは僕の書いた話全てにいいね❤を付けてくれて、感想を投稿してくれた。僕がそれが嬉しくて嬉しくて、何度も何度も読み返してからお礼コメントを書いた。
そんな風にして、幸せな毎日が続いた――――……数週間ほどは。
けれど徐々に、僕は『スターハント』さんの異常性に気付き始めた。彼女は僕が書いた話には必ずいいね❤と感想をくれる。僕はその感想に必ずお礼コメントを返す。
すると間を置かずして、さらなる感想が投稿される。僕はそれにお礼コメントを返す。
――すると、また。
きっと最初の方は、彼女は本性を抑えていたんだろう。けれど数週間ほどして、彼女のタガが外れ始めた。
彼女は一つの話に対して二つ、三つ、五つ、十個、二十個、百個と感想を付けるようになっていった。
いや、それは感想ではなかった。いつの間にか彼女自身の自分語りになっていた。
まず最初は、『今回の話のこうこうこう言う所が最高に怖かった!』という至極常識的な感想から始まる。それが回数を重ねるうちに、『話に出てきた○○ですが、○○と言えば最近こういう出来事があって――』と言う自分語りに突入する。
僕は『スターハント』さんの事を大切なフォロワーだと思っていたから、彼女のそんな『感想』に対して律義に一個一個返事をしていた。……それが一層、彼女の異常性に拍車を駆けさせてしまったのだろう。
気が付けば僕は、彼女に束縛され、彼女の無限に沸き起こる承認欲求に返信することに毎日毎日忙殺されるようになっていた。それでも毎日1話の投稿だけは欠かさなかった。1年弱もの間、そんな生活を続けた。その甲斐あってか、『スターハント』さん以外にも一定数のフォロワーが付くようになったんだ。
一定数? 一定数って何人だったっけ? 五人だったか、六人だったか……うっ、何だか酷い頭痛がする。
……あぁ、そうだ、そう、二百人だ。僕は努力の甲斐あって、いっぱしのWeb物書きになっていた。
『スターハント』さんの相手は、相変わらず続けていた。膨大な時間を浪費して。正直、何度縁を切りたいと思ったか知れない。けど、忘れもしない人生初のPVとフォローとレビューをくれた相手だったから切るには忍びなく、また、切ったら切ったでとんでもない反転アンチになりそうで怖かった。
そんなある日、僕は頼々子さんに呼び出された。8月初旬。僕が大叔父の世話になっていた最後の月。その頃僕はまだ神戸にいて、その呼び出しも、定期的にやっていた頼々子さんの捜査の手伝いだった。
が、その内容がとてつもなくヘビーだった。僕は被害者女性の霊に触れられ、彼女が犯人に犯され、嬲り殺しにされるまでの一部始終を追体験させられた。
僕が『視』て、頼々子さんに伝えた人相の甲斐あって、犯人は捕まった。
けどその見返りに、僕は三日三晩昏睡状態に陥った。
大叔父は僕の能力を改めて気味悪がって、僕が眠っている間に、僕を叔父・叔母に預ける算段を付けてしまった。そのことは、まぁいい。大叔父には長いことお世話になったし、結果として叔父・叔母には随分と可愛がってもらっているから、結果オーライだった。
問題は、スターハントさんのことだ。
三日もカクヨムから離れたのは、初めてのことだった。目覚めて、スマホを許された僕がようやくカクヨムを開いた時、そこには目を覆いたくなるほどの量の通知が届いていた。
――9割以上が、スターハントさんからだった。
『どうして感想にお返事をくれなかったのですか?』
『私、何か不快な思いをさせてしまいましたか?』
『返事をください』
『返事をください』
『無視しないで』
『何か言って』
『無視するな』
『無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな!!!!!』
僕は怖くなって、スターハントさんからフォローを外した。
――翌日、最新話の感想として、スターハントさんからYouTubeのURLが届いた。
彼女――星狩さんの、自殺実況の予約配信URLだった。
『スターハント』さんは、僕の小説活動初期からカクヨムで僕のフォロワーになってくれて、以来ずっと応援し続けてくれていた人だ。
今でもよく覚えている。
一年前、生まれて初めてUPした小説がまったく読んでもらえず、何日も何日も、何週間も、
『0 PV』
という呪いのような文字を睨み付けながら過ごしていた。
小説はスタートダッシュが命だ、連投が命だって聞いていたから、短編連作形式で毎日投稿し続けていた。カクヨムの『近況ノート』(活動報告)も毎日書いたし、同じホラー畑の書き手さんにもいっぱい絡みに行って、★もつけたしフォローもした。Twittooのアカウントも開設し、宣伝し続けた。
なのに。
第1話 0 PV
第2話 0 PV
第3話 0 PV
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第5話 0 PV
第6話 0 PV
第7話 0 PV
第8話 0 PV
第9話 0 PV
第10話 0 PV
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『0 PV』。
ゼロ。ゼロ。ゼロ。
ゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロ!!!!
僕の書いた物語には、たったの1 PVの価値も無いって言うのか!? これだけ多くのカクヨムユーザーが居て、誰一人として僕の小説を読んでくれないのか!? 僕に、存在する価値は無いって言うのか!?
……気がおかしくなりそうだったある日、1話目に1 PVが付いた。それから小一時間のうちに、全話に1 PVが付いた。
――誰!? 誰が読んでくれたんだ!? お礼が言いたい! けれど、カクヨムにはPVから読者を辿る機能は無い。
悶々としていると、今まで一度も点灯したことのなかった『通知』アイコンが光っている事に気付いた。
――あの時の興奮は、今も覚えている。
震える手で『通知』アイコンに触れると、
『あなたの作品をフォロー 1分前 @StarHuntさん』
の文字が。
さらに再び、『通知』アイコンが光った。それは、命の輝きだった。
心血注いで書いた小説を、
評価してもらえないどころか、
感想ももらえないどころか、
読んでもらえないどころか、
たったの1クリックすらしてもらえない――そんな惨状に心が壊れそうになっていた僕を救ってくれた、光。
『あなたの作品に★レビュー 1分前 @StarHuntさん』
僕は、狂喜乱舞した。居候させてもらっていた家の主――大叔父が怒鳴りに来るまで、部屋の中で踊り回った。
やっと、僕の作品を読んでくれる人に巡り会えた! 『スターハント』さん! 僕の作品を評価してくれる人に見つけてもらえた!! 嬉しい嬉しい嬉しい!!
……けれど、その認識は間違っていたんだ。
そう――。
僕は『見つけてもらった』んじゃない。『見つかってしまった』んだ。
『スターハント』という名の、怪物に。
■■■9時前 / 同じ旅館にて■■■
「初めて見たときから『コイツはヤバイ』って思ったよ」米里くんが滔々と語り始める。「現実が見えてない感じが、星狩に良く似てるとも思った。だからあいつはきっと、星狩の霊なんかを呼び寄せちまったんだろうな」
「どういうこと……?」
「あいつは――星狩は、『いいね』の権化だ。いいねが欲しくて堪らなくて、いいねの為なら何でも出来て、いいねの数だけが人間の価値だと思ってる。……まぁ、分かるよ。俺もお料理系YouTuberやってるからさ。『数字が全て』って感覚は、分かる。けど、星狩のやつは異常だった」
「――――……」私は蹴鞠くんの方を見る。
「……はい」果たして蹴鞠くんは頷いた。「否定は出来ない、と、思います」
「このクラスにはさ、いいね稼ぎが上手いヤツが多いんだよ。俺や蹴鞠はもちろん、正岡に天晴に舞姫に越古に、上江や四谷なんかも凄い。ずっと隠してたけど、VTuberとしての馬肉も、朝のおはよう一つで数千いいねを稼ぐようなバケモノさ。けどそういう連中はみんな、一芸を持っているか、顔がいいか、あるいはその両方か、だ」
かるたくんから聞いたところによると、米里くんはお料理VTuberとして名を馳せているらしい。それになるほど、隣の蹴鞠くんほどではないにせよ、彼もまた顔がいい。
「けど、星狩にはそういうのは無かった。いや、顔は悪くねぇんだから天晴や舞姫みたいにダンス動画撮ったり、越古みたいにコスプレしたりすりゃ多少は伸びたかもしれないのに、そういうことはしない。自分の顔は晒さないっていう変なこだわりがあったみたいだな。
だからあいつは、俺にいいねの手に入れ方を聞いてきた。
俺はあいつに、今言ったようなことをアドバイスしたさ。けど、そういうのは嫌だって言う。じゃあ何か一芸は無いのかって聞いたら、無いって言う。今から何か特技を作れって言っても、それは面倒臭いって言う。
俺は面倒臭くなってきて、『何でもいいからとにかく呟け』って言ったんだ。そうしたらあいつ、通学路の風景写真とか、日常の愚痴だとか、役に立たない事ばっか呟き始めた」
私も就職するまではTwittooをやっていて、米里くんが言うところの『役に立たない事』を毎日呟いてたから、星狩良子のことは悪く言えないな……なんて思っていると、米里くんがフォローするかのように、
「もちろん、趣味でやってるだけならそれでも問題ないさ。問題は、星狩がどうしようもなくいいねを欲しがっていた事だ。あいつは俺に、そういうツイートを見せてきては、『どう?』、『いいねして!』って言ってくるようになった。俺はこれ以上絡まれるのも嫌だから、内容は読まずにいいねだけした。あの時の星狩は――――……物凄く嬉しそうだったな。まぁ、気持ちは分かるよ。俺も、人生で初めていいねがもらえた時はすごく嬉しかったもんさ。けど……それであいつは、味を占めちまった」
「どういうこと……?」
「あいつはクラス全員に、いいねとリツイートをするように強要し始めたんだ。自分の、内容のない、クソ下らないツイートをだぜ? その勢いには鬼気迫るものがあって、誰もがあいつを不気味がった。女子の中には、あいつに『何でいいねくれないの!?』って詰め寄られて泣き出すヤツすらいた」
「――――……」
「あいつはクラスで孤立していった。誰もあいつにいいねを付けなくなった。そうして最後にあいつは、俺に泣きついてきた。『いいねを頂戴』『どうしていいねをくれないの!?』って」
「そうして米里くんは――――……」
言ってしまったのだ。
例の言葉を。
「…………その翌日、あいつは自殺した」
💭 🔁 ❤×????
『スターハント』さんは僕の書いた話全てにいいね❤を付けてくれて、感想を投稿してくれた。僕がそれが嬉しくて嬉しくて、何度も何度も読み返してからお礼コメントを書いた。
そんな風にして、幸せな毎日が続いた――――……数週間ほどは。
けれど徐々に、僕は『スターハント』さんの異常性に気付き始めた。彼女は僕が書いた話には必ずいいね❤と感想をくれる。僕はその感想に必ずお礼コメントを返す。
すると間を置かずして、さらなる感想が投稿される。僕はそれにお礼コメントを返す。
――すると、また。
きっと最初の方は、彼女は本性を抑えていたんだろう。けれど数週間ほどして、彼女のタガが外れ始めた。
彼女は一つの話に対して二つ、三つ、五つ、十個、二十個、百個と感想を付けるようになっていった。
いや、それは感想ではなかった。いつの間にか彼女自身の自分語りになっていた。
まず最初は、『今回の話のこうこうこう言う所が最高に怖かった!』という至極常識的な感想から始まる。それが回数を重ねるうちに、『話に出てきた○○ですが、○○と言えば最近こういう出来事があって――』と言う自分語りに突入する。
僕は『スターハント』さんの事を大切なフォロワーだと思っていたから、彼女のそんな『感想』に対して律義に一個一個返事をしていた。……それが一層、彼女の異常性に拍車を駆けさせてしまったのだろう。
気が付けば僕は、彼女に束縛され、彼女の無限に沸き起こる承認欲求に返信することに毎日毎日忙殺されるようになっていた。それでも毎日1話の投稿だけは欠かさなかった。1年弱もの間、そんな生活を続けた。その甲斐あってか、『スターハント』さん以外にも一定数のフォロワーが付くようになったんだ。
一定数? 一定数って何人だったっけ? 五人だったか、六人だったか……うっ、何だか酷い頭痛がする。
……あぁ、そうだ、そう、二百人だ。僕は努力の甲斐あって、いっぱしのWeb物書きになっていた。
『スターハント』さんの相手は、相変わらず続けていた。膨大な時間を浪費して。正直、何度縁を切りたいと思ったか知れない。けど、忘れもしない人生初のPVとフォローとレビューをくれた相手だったから切るには忍びなく、また、切ったら切ったでとんでもない反転アンチになりそうで怖かった。
そんなある日、僕は頼々子さんに呼び出された。8月初旬。僕が大叔父の世話になっていた最後の月。その頃僕はまだ神戸にいて、その呼び出しも、定期的にやっていた頼々子さんの捜査の手伝いだった。
が、その内容がとてつもなくヘビーだった。僕は被害者女性の霊に触れられ、彼女が犯人に犯され、嬲り殺しにされるまでの一部始終を追体験させられた。
僕が『視』て、頼々子さんに伝えた人相の甲斐あって、犯人は捕まった。
けどその見返りに、僕は三日三晩昏睡状態に陥った。
大叔父は僕の能力を改めて気味悪がって、僕が眠っている間に、僕を叔父・叔母に預ける算段を付けてしまった。そのことは、まぁいい。大叔父には長いことお世話になったし、結果として叔父・叔母には随分と可愛がってもらっているから、結果オーライだった。
問題は、スターハントさんのことだ。
三日もカクヨムから離れたのは、初めてのことだった。目覚めて、スマホを許された僕がようやくカクヨムを開いた時、そこには目を覆いたくなるほどの量の通知が届いていた。
――9割以上が、スターハントさんからだった。
『どうして感想にお返事をくれなかったのですか?』
『私、何か不快な思いをさせてしまいましたか?』
『返事をください』
『返事をください』
『無視しないで』
『何か言って』
『無視するな』
『無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな無視するな!!!!!』
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彼女――星狩さんの、自殺実況の予約配信URLだった。
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