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第4章 「私が魔王になって右往左往する話」

136(3,032歳)「私が……魔王?」

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 目の前には、私の首輪を受け入れ、晴れて私の従魔となった魔王ことルキくん4歳の姿!

 いやぁ長かった!! 本当に長かった!!
 何千年経ったっけ? 何千回……いや何万回【ロード】したっけ? 何回死んだっけ? 【おもいだす】で検索すれば出てくるけど、今はとりあえずいいや。

 ……はぁ~疲れたよパト○ッシュ。

「あっ!?」

 と、ルキくんがいきなり大声を上げた。

「な、なになにどうしたの!?」

「あ、あー……ママ……あぁナルホド」

「??」

「ううん、何でもないよ。これからもよろしくね、ママ。そして――」

 ルキくんとレヴィアタンさん、周囲にいる審判役や治癒役、【魔力譲渡《マナ・トランスファー》】要員の人たちが一斉に跪《ひざまず》いた!
 そして、

「新たなる魔王様」

 ルキくんが、そう言った。

「え、なになにいきなり!? 新たなる魔王って、私が!?」

「そりゃそうだよ、ママ」

 顔を上げながら、ルキくんが言う。

「だってこの国は『魔力しじょうしゅぎ』。ママは僕らに『魔法決闘』で勝てるくらい強くて、僕を【従魔テイム】できるほどの【魔力】と【魔法力】を持っている。僕より強いママが、魔王にならないわけがない」

「そ、そういうものなの?」

「そういうものでございます」

 レヴィアタンさんが深くうなずく。

「じゃあ私、ルキフェル14世になるんですか?」

「うん」

「そうなりますな」

「うーん……でもいいんですか?」

 いっちょ賭けに出てみるか。
 ここに【セーブ】ポイントを置いて、

「私――」

 頭に付けていた魔族の角を、スポッと外して見せる。

「――人族なんですけど」

「「「「「!?」」」」」

 跪いていたレヴィアタン氏が慌てて立ち上がり、かばう様にルキくんの前に立つ。周囲の魔族の人たちも、慌てたように立ち上がり、武器を構えたりしようとするも、

「…………?」

 首を傾げるレヴィアタン氏と、

「あれ……?」

「人族……殺さなければ……いや、なんで殺さなきゃならないんだ?」

「ん……? 今までは人族のことを考えただけで、嫌悪感と殺意が湧き出てきたはずなのに……」

 その反応を見て、

「ぃよっしゃぁああああ!!」

 私は思わずガッツポーズしてしまった。

「やっぱりそういうことだったんだね」

 ルキくんが笑いながら言う。

「さっき、ママの従魔になったら急に、人族を『せんめつ』しなきゃならないって気持ちが消え去ったんだ。それで気持ちが落ち着いて、いろいろ思い出したんだけど……魔物の集団暴走スタンピードの時とか、アデスの軍隊が行った時とか、戦ってたのママでしょ? ちょっと体の大きさ違うけど」

「おぉぉ……気づきましたか、我が子よ」

「ど、どういうことだ……です?」

 レヴィアタン氏が、私のことを敵とみなすべきなのかどうなのか判断しきれず混乱しているようだ。

「レヴィアタンさん、ご自身のステータスの【契約】欄を見てください」

「ははっ――あぁ、体が勝手に!」

「どう書いてます?」

「『前魔王ルキフェル13世の従魔』と」

「で、ルキくん――前魔王ルキフェル13世は私の従魔なわけですよ。だから逆らおうという気にそもそもなれないはずです」

「そ、それはそうですな。しかし――人族というのは」

「レヴィアタンさん、あなたは、人族を殺さなきゃって思いますか?」

「何を仰るのです? 人族の殲滅こそ魔族の使命……んんん? いや、言われてみれば合理性を欠きますな。ここまで国力を絞ってまでやるほどのことでしょうか?」

「リヴァイア」

 とここで、ルキくんがレヴィアタン氏に声をかける。

「も、申し訳ございません前魔王様! 人族の殲滅こそ魔法神様と前魔王様の悲願――」

「もう、いいんだ」

「……へ?」

「人族『せんめつ』は、魔法神の勝手な望みだ。僕はもう魔法神の使徒でも【魔王】でもなくなった。だからもう、人族を『せんめつ』したいと思わないんだ」

「……と、ということは、もう国力を戦争に集中させなくても良いのですか? 経済や福祉に振り分けても良いのですか!?」

 めっちゃうれしそうなレヴィアタン氏。まぁ生後2ヵ月の魔王様を支える宰相の立場だもの。実質首相だよね。

「でも、人族の国は戦争をやめてくれるのかな?」

 ルキくんの疑問に、

「大丈夫ですよ。そりゃ100年前のわだかまりはあるかもしれませんが……全ては魔法神の所為せいだってことでアフレガルド王国へは説明できますし、それに今回の戦争ではまだただのひとりも死者が出ていませんので」

「「「「「えっ!?」」」」」

 ルキくん、レヴィアタン氏以下、その場にいる魔族全員が驚く。

魔物の集団暴走スタンピードは死者ゼロで乗り越えましたし、魔の森を越えて侵攻してきたアデスさんの軍勢は、生きたまままるっと私の【アイテムボックス】の中に入ってます。講和を結んだ後でなら、魔王国にお返ししましょう。あと、四天王さんがバカスカ撃ってくれた【流星メテオ】も死者ゼロで乗り切ったんですよ」

「そ、そんな……いくらアリソン様が強大な魔力を持っているといっても、それほどのこと、できるわけが!」

 ビビるレヴィアタン氏に微笑みかけ、

「えへへ……実は私、【勇者】なんです」

「「「「「えぇぇえええええっ!?」」」」」

 ルキくん含め、全員が大仰天。

「全知全能神ゼニス様とは懇意でしてね。自惚れた魔法神の鼻っ柱を叩き折るための、凄まじい魔法の数々を授けてもらっているんですよ。
 そして私は、魔の森と国境を接する人族最前線――アフレガルド王国ロンダキルア辺境伯領の領主でもあります」

 とここで魔の森別荘へ【瞬間移動】し、手持ちのドレスの中で一番豪華なやつを【アイテムボックス】で早着替え。まぁ急いで着なくてもここでは時間がほぼ無限にあるけどね。
 そして再び魔王城へ【瞬間移動】し、

「改めまして、こんにちは。わたくし、【勇者】にしてアフレガルド王国ロンダキルア女辺境伯にして宝石店店長にしてゲーム開発・販売者にしてITコンサルタントにしてルキくんと全魔族のマスターにして新魔王の、アリス・アリソン・フォン・ロンダキルア・ルキフェル14世と申します。以後お見知りおきを」

 ママンに叩き込まれたカーテシーで、礼をした。





************************************************
追記回数:551,551回  通算年数:3,032年  レベル:5,100

次回、アリス、女神様に勝利条件について確認する。
アリス「私、魔王になっちゃいました。当初の使命は『魔王討伐』でしたけど、どうすればいいんでしょうね?」
女神様「それもそうですねぇ」
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