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第3章 「私が魔王国内で大暴れする話」

108(2,998歳)「成り上がり開始!」

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「まったく……人の書斎に無理やり押し入るとは、魔力の少ない人はやはり野蛮ですな」

 書斎で椅子にふんぞり返り、開き直った様子のビジューさん。

「貴様っ、領主たる儂からの召喚状を無視しおってからに、何をぬけぬけと!」

 激昂する領主さん。
 何やら修羅場ってるご様子。

「で? 何か御用ですかな、私よりも魔力の少ない領主サマ?」

「なっ……うぐぐ、貴様が無作為に売り捌く金銀財宝の所為せいで、魔王国中の通貨、宝石の相場が大混乱に陥っていると、各領地貴族からクレームを受けておるのじゃ! 貴様、儂に無断でこんなことをして、ただで済むと――」

「は? 私が貴方にお伺いを立てる必要があるのですか? 魔力100万を超える私が、たかだか10万程度の、あなたに?」

 ……いやまぁ10万でも十分に、『魔法を極めた魔族やハイエルフ』レベルで、人族基準じゃ賢者様の十倍のMPだからね!?
 なんというか、魔力のインフレ具合がドラゴンボ○ルみを感じるよ……かくいうMP10奥の私が一番のインフレキャラだけどさ。

「だいたい、表にあったような巨大なダイヤモンドなぞ、どこから掘り当てたというのじゃ!?」

「教える義理はありませんな」

「いーや、ある。領内で新たな鉱山を発見した場合、この儂に届け出る義務が領民にはある! これは魔王国における決まりであって儂が決めたことではない。貴様、魔王様に歯向かう意思がないならば、速やかにこの【取引契約】書にサインし、新たな鉱山の場所を吐け」

「ぐっ……」

 苦しそうな表情のビジューさん。なるほど、魔力の低い領主の命令は受けなくても許されても、魔力の高い魔王の命令は聞かなきゃならないってことか。
 果たしてビジューさんは【取引契約】書にサインし、

「鉱山を見つけたわけではない」

「ほう? ならば他領からの輸入履歴を調べるとしよう」

 言って領主様は【瞬間移動】で姿を消した。

「アリソン! 他の3人を連れて書斎に来い! 大至急だ!」

「は、はい!」


    ◇  ◆  ◇  ◆


「これから数日の間、君たちにはひたすら金銀財宝の生成を行ってもらいたい」

 書斎にて、ビジューさんが私たちにマジックバッグ――袋に【アイテムボックス】が【付与エンチャント】された代物――を手渡す。

「家の世話も店の番もしなくて良い。魔力ポーションならここに10樽置いてある。食事もここに運ばせる」

「「「「ははっ」」」」

 言われるがまま、ひたすら金銀財宝の塊を作ってはマジックバッグへ放り込む。

「くそっ、こんなに早く嗅ぎつけてくるとは!」

 ビジューさんはと言えば、焦った様子で何やら書類仕事している。

 その日は夜中までずっと金銀財宝を生成し続けた。
 ご飯はちゃんと出してもらえたし、夜中になって『そろそろ休ませてください』と言ったら、お風呂と睡眠を許してもらえた。


    ◇  ◆  ◇  ◆


 翌日も朝から書斎で金銀財宝大放出! していると――

「なるほど、な」

 領主様が書斎に【瞬間移動】で現れた!

「新しい鉱山でもなく輸入でもないというわけか」

「お前たち! いいから生成を続けろ!!」

 顔色を変えたビジューさんからの命令。

「「「「は、はい!」」」」

「宝石を生成できるレベルの魔法使いなど何人もいない」

 領主様が壮絶な笑顔で私を見る。

「少なくとも数日前までは、この領にはいなかった――アリソン君、君がこの街に現れるまでは」

 あー……見破られてるな。

「ところでアリソン君、君は奴隷身分に甘んじていても良いのかね?」

「どういうことでしょうか?」

 金銀財宝生成は続けつつも、答える。

「アリソン! 耳を貸すな!」

 ビジューさんが必死に遮ろうとする。

「奴隷は主人と購入元の奴隷商に『魔法決闘』で勝利すれば、奴隷の身分から解放されるのだ。自由の身に、なりたくはないかな?」

「えっそうなんですか!?」

 もちろん知っていた。アデスさんから受講済みだよ。
 でも『ずっと山奥で暮らしてた常識を知らない15歳』を演じる上では、知らないことにしておくしかなかった。

「なりたいです、自由の身に!」

「やめろ、アリソン!」

 必死に抵抗するビジューさんへ、

「ご主人様、私と決闘――」

 突如猛烈な吐き気に襲われる!

「うぉぇぇぇええええええええええええ!!」


    ◇  ◆  ◇  ◆


 目を開くと書斎のソファーに寝かされていた。

「……気がついたか」

 ビジューさんが疲れた顔をしている。
 部屋に領主様はおらず、デボラさん、サロメさん、クロエちゃんは相変わらず金銀財宝生成を続けている。

「謝るよ。決闘のことを隠していたことと、【隷属契約】に本来入れるべき、『奴隷からの決闘申し込みの自由』という項目を意図的に抜いていたことを」

 なんと、ビジューさんが頭を下げてきた!
 先ほどビジューさんが私を制止しようとしたのは、決闘を申し込まれたくなかったからなのか、それとも私が決闘を申し込もうとすると、【隷属契約】違反で苦痛に苛まれると知っていたからなのか。

「その上でお願いなんだが、私のことを見逃してもらえないか? もうすぐ領主が決闘のことを盛り込んだ新しい【隷属契約】書を持ってくる。どうせ私はアリソンに敵わないだろうし、デボラ、サロメ、クロエ相手でもそうだろう。領主が来るまでは宝石の生成を続けてもらい、領主が来た時点でお前たちを奴隷から解放する。金は――自由に出せるから要らないか? くれというなら用意するが」

「それでいいですよ」

 ざまぁ展開はまだですかって? お腹蹴られたこととか、デボラさん、サロメさん、クロエちゃんが弄ばれたことへの仕返しはしないのかって? 
 いやまぁ……私を殺してくれた元辺境伯を許してしまった時に、さらに言うならフェッテン様を2度も殺してくれたアデスさんを味方に引き入れた時に、そういう感情はすっかり薄くなっちゃったんだよね。まぁ、一応謝ってはくれたし。孫悟○だってベジ○タ許したじゃん?

「…………すまんな」

 ほどなくして、領主様が新しい【隷属契約】書を持って現れた。

 こうして私は自由の身分と、3人の配下を手に入れた。





***********************************************
追記回数:26,042回  通算年数:2,998年  レベル:5,100

次回、復讐少女クロエちゃんが、無敵の魔力を携えて野に放たれる……。
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