上 下
109 / 143
第3章 「私が魔王国内で大暴れする話」

107(2,998歳)「養殖の成果のお披露目、からのぉ領主様襲来!」

しおりを挟む
「なぜ朝食が未だに――」

 翌朝、食堂で文句を言おうとしたビジューさんの目の前に【瞬間移動】で現れるデボラさん、サロメさん、クロエちゃん。一緒に現れたカートからほっかほかの料理が【テレキネシス】ですいーっとテーブルに運ばれる。

「「「「な、ななな……」」」」

『ななな』るビジューさん一家。

「こ、このパン、冷えているではないか!」

 ビジューさんがパンに難癖をつけると、

「【物理防護結界】、【ホットウィンド】」

 デボラさんがあっという間に温める。

「熱っ! このスープ、熱すぎるわ! 何を考えて――」

「【物理防護結界】からのぉ【クールウィンド】!」

 奥さんの難癖を、サロメさんの魔法が遮る。

「ゴミのクセに生意気よ!」

 ひっどい理由で娘さんがサロメさんにお茶をぶっかけようとして、

「【アイテムボックス】!」

 クロエちゃんがそれを収納し、

「【アイテムボックス】!」

 再びコップの中へ注ぎ入れる。

「な、な、何がどうなっておる!? たった一晩で、なぜこいつらがこんなにも精巧な魔法を使えるようになっておるのだ!」

「いやぁすみません、お三方があまりに可哀想だったので、【従魔テイム】して、私の秘術で鍛えちゃいました」

「「【従魔テイム】ぅ!?」」

 ビジューさんと奥さんがビビる。お子さんらはよく分かっていない模様。

「そ、そんな、我々魔族はすべからく魔王様の従魔であるはず――」

「あ、そうなんですか? でも普通に【従魔テイム】できちゃったんですけど。クロエちゃん、【鑑定】させてもらってもいい?」

「イエス・マイ・マスター」

「【鑑定】! からのぉステータス・ウィンドウ表示! はいどうぞ。あ、ゴメンねクロエちゃん。【リラクゼーション】」

「魔力10万んん!? はっ、それよりも……どうして【契約】欄が表示されているのだ?」

「私、【鑑定】レベル9持ちなので」

「「神級!?」」

「ほ、本当に『アリソンの従魔』となっておる……」

 ちなみに本当の表記は『アリス・フォン・ロンダキルアの従魔』。この表記は『欺瞞』した結果だ。

「いやしかし、魔王様の【従魔テイム】を上書きするなど前代未聞……」

「へぇ~……じゃあ案外、私の方が魔王様より魔力が多いのかもしれませんね!」

「「なっ――」」

 さーっと顔が青くなるビジューさんと奥さん。

「いいか、アリソン。命を賭ける覚悟がないならば、2度とそのようなことは言わないことだ。逆に、本気で王位簒奪を考えているのならば、魔王様に挑む機会を得る方法もなくはない」

「へぇ!!」

 ほんっとーに魔力至上主義なのね!

「だが私は有能な奴隷である君を失いたくはないし、自ら危険に飛び込む気もない。だから今後、他人を【従魔テイム】することを禁じる。【従魔テイム】できることを他言するのもだ。これは【隷属契約】の守秘義務にもとづく命令だ! 分かったか!」

「ははっ」

「お前らもだ!」

「「「ははっ」」」

「ところでご主人様」

「……なんだ、まだ何かあるのか?」

「ちょっと見てもらいたいものが。みんな、お願い」

 お三方が一礼し、

「「「【ダイヤモンド・ボール】からのぉブリリアントカット・バイ・【アイテムボックス】!」」」

 デボラさん、サロメさん、クロエちゃんがそれぞれ一抱えほどもある超ド級ダイヤモンドを生成した光景を見て。
 ビジューさんと奥さんは気絶した。

 子供たちはというと、幼い息子さんはでっかい宝石を見て『きれーきれー』と大喜びで、もう少し大きな娘さんの方は、『こいつらがいれば私の人生安泰だわ』的な、ちょっと打算の入った笑みを浮かべていた。


    ◇  ◆  ◇  ◆


 そんな感じで2日が過ぎた。
 魔王国に潜入してちょうど1週間。あと3週間のうちに何らかの成果を出すか、もしくは夜抜け出して【流星メテオ】の対処をしなければならない。

 ビジューさんの宝石店は大繁盛!!
 王国一のサイズを誇るブリリアントカット・ダイヤモンドを一目見ようと、王国中から貴族たちが押し寄せているらしい。

 アデスさん常識講座によると、『電波』や『テレビ』は存在しないものの、『新聞』や『雑誌』は存在していて、【瞬間移動】持ちが結構多いから『口コミ』速度も半端ないらしい。

「ほぉぉおお~……これが!!」

 今も、いかにも良い生地使ってる感じのスーツ姿の方――どこぞのお貴族様――が、私が作った高さ1メートルのブリリアントカット・ダイヤモンドを見つめ、感嘆の吐息を漏らしている。
 ビジューさんに頼まれて店内をがばっと改装し、店の外から見えるショールームに1メートルのダイヤをででんと飾ったんだよね。

「宝石商ビジューはおるか!」

 おん? なんか良い服着たおじさんが【瞬間移動】で現れ、店の中にズンズン入ってきた。

「お客様、この先は関係者以外立ち入り禁止で――」

 奴隷兼従業員の職務として、おじさんを止めようとするが、

「奴隷風情が邪魔をするな!」

 払いのけられそうになり、思わずその手を掴んでしまった。

「なっ――貴様、女のクセにいったいどんな怪力……」

「あっとっとっすみません!」

 慌てて手を放し、

「ご主人様にお取次ぎしますので。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「儂はここの領主じゃ!」

 マ!?


    ◇  ◆  ◇  ◆


「ここにはおらん、終日不在だと答えろ!」

「えぇぇ……相手、領主ですよ? あとで私、切り捨てられたりしませんよね?」

「無論だ。アリソン、君は私の大事な大事な奴隷だ。そんなことはせん」

 大事の二重がけ! ビジューさんからの愛が重い。
 まぁ一晩で3人の金銀財宝製造機を量産しつつ、本人も金銀財宝製造機なんだ。『金の卵を産むガチョウ』どころの話じゃないわな。


    ◇  ◆  ◇  ◆


「本日は終日不在でございまして……」

「【フルエリア・探査】! フン、この屋敷では、平時から【魔法防護結界】を張っている部屋があるのか?」

 おぉぉ……これが魔族の日常なのか!
 ズンズンと進んでいく領主様を無理やり拘束することもできず、

「そ、それは……ご主人様の書斎は企業秘密もたくさんございますので」

「先ほど【探査】した時は張られてなかったのだがな」

「Oh……」

 ビジューさん、ごめーん。





***********************************************
追記回数:26,042回  通算年数:2,998年  レベル:5,100

次回、アリス奴隷回終了。そして始まる成り上がり!
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

処理中です...