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突然の告白

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ようやく学校にたどり着くと、いつものように菜摘が話し掛けてきた。

「おっはよー! ・・・って、あれ? 愛流は一緒じゃないのか?」

「あ・・・愛流は、京介と一緒なんだ」

「へぇー。あの二人って、そんなに仲良いのか?」

菜摘はあまり理解できないのか、重ねて訊き返した。

「まぁ・・・そんな感じ・・・。明日からずっと、京介と一緒なんだって・・・」

「え!? 明日から!!?」

「どういう事だ!?」と質問攻めになったが、あたしは「さぁ・・・」ととぼけた振りをした。

事実を伝えたら、菜摘は悲しむし、愛流ともギクシャクする可能性だってある。

菜摘に迷惑なんて掛けたくない。

あたしは少し一人になりたくて、菜摘と別れてその場所へと向かった。









扉を開け、顔を入れて誰もいないか確かめる。

(大丈夫、かな・・・)

安心して中に入ると、あたし専用の席に座って机に突っ伏した。

ここは生徒会室。

一応、あたしは生徒会のメンバーだ。

「はぁ・・・。愛流はいいよね。誰からも愛されて・・・。きっと、嫌う人なんていないよ・・・」

沈黙に包まれた生徒会室で、あたしはため息混じりに呟いた。

みんなに愛されて、京介にも好かれて、嬉しそうで楽しそうな愛流の姿が目に浮かんだ。

「・・・あたしなんかを好きになってくれる人なんて、いるわけないよね・・・」

「――――ここにいるぞ」

「へ・・・?」

驚いてバッと顔を上げ、声のした方へと顔を向けると、そこには生徒会長の緑川みどりかわあきら先輩がいた。

まさか緑川先輩が来るとは、想定外だった。

「俺は、篠原の事が好きだ」

「はい? 何言ってるんですか?」

唐突な告白に、あたしは苦笑する。

まさか、先程の呟きを聞かれていたのだろうか。

それが事実となると、嘘告白してまで気遣ってくれてる緑川先輩に申し訳ない。

すると、緑川先輩はため息を吐いた。

「本気で言ってるんだけど・・・?」

緑川先輩の目は、いつもとは違う真剣そのものだった。

「そう・・・ですか・・・」

学校で人気の先輩に告白されたのに、嬉しいという感情が湧き上がらない。

「・・・なぁ、俺と付き合ってくれるか?」

付き合う・・・か。

普通なら喜んで「はい!」などと答えるだろうけど、あたしは返事に迷った。

京介と愛流は付き合ったんだから、あたしの恋はもう叶わない。

しかし、緑川先輩と付き合ったとしても、京介の事を引きずって先輩の事を傷付けてしまうかもしれない。

中々答えが見つからず、目を泳がせていると、先輩は扉を開けて言った。

「返事は生徒会の時に聞くから、それまでに答えを見つけておいてくれ」

そう言い残し、先輩は生徒会室から出て行った。

一人残されたあたしは、ぽつんと立ち尽くしていた。

静まり返った生徒会室に、時計の針が刻む音が響く。

見ると、既に部活の朝練が始まっている時間帯だった。

「やばっ! 急がないと!」

あたしは血相変えて乱暴に扉を開け、ドタドタと足音を廊下に響かせ、部室へと向かう。

しかし、どうやらタオルとスポドリの準備は終わっているようで、みんな運びに行っている最中だった。

「葉月ちゃん遅かったね? 一緒に行こ」

ニコッと笑い掛ける愛流。

「ちょっと・・・ね」

ぎこちなく返答し、あたしは愛流と一緒に運びに行った。

一緒といっても、普段のような賑やかな会話はない。

話し掛けてくる愛流に対し、あたしは相槌を打つだけだった。

途中、京介の事を話題に出してきたりもした。

天然なのか、それともわざとなのかはわからないが、あたしにはわざとしか思えなかった。

それだけ、愛流に裏切られたのがショックだったのだろう。

これ以上愛流といると、自分が可笑しくなりそうだ・・・。
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