恋愛相談から始まる恋物語

菜の花

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恋物語~fin~

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珍しく早起きした今日は、時間にゆとりがあったのでトーストを焼いてみた。

だが、ジャムなどは一切なく、素材本来の味を堪能する形となり、少し物寂しい朝食ではあったが、そんな寂しい口元に触れる甘い飲み物。

俺の大好きなそのミルクティーの甘さが、身に染みた。

ゆったりとした時を過ごしながらふと、掛け時計に目をやると、もうそろそろいい時間になっていた。

「行くか」

俺はソファーに置いてあったリュックを背負って、玄関へと向かう。

今日は平日なので普通に学校があるのだが、いかんせん待ち合わせがあったのだ。

ドアを開けると、家の前には約束の人物が相変わらずの無表情で立っていた。

「遅い」

「いや、5分前だからな?」

「あたしはもっと前に来てた」

「無茶言うなよ・・・」

俺と六日は、晴れて恋人同士になることになった。

そして、数ヶ月が経ってから、六日が一緒に学校に行きたいと言ってきたので、こうして俺の家の前で待ち合わせになったのだ。

六日の歩幅に合わせながら、2人でゆっくりと歩いて学校へ向かう。

もう、この代わり映えのない景色も見慣れたモノとなり、新鮮味は感じられなかったが、2人で歩くそのコトは、いつだって新鮮に感じられた。

何を話すわけでもない。

話題を振られたらそれに答えて、そしてまたの沈黙のそんな繰り返し。

それでも、俺は満足していた。

そして、六日もきっとそうなんじゃないかと思っている。

コレが俺と六日の付き合い方だから、今までもこれからもそれは変わらないんだろうな。

「今週の土曜日って暇?」

「今週は特に予定はないな」

「どっか行かない? たまにはさ」

「そうだなー」

お互いそれなりに会えている環境だから休日に2人でどっかに行くってことがなかったから、この約束も久しぶりだった。

前に六日が遊園地に行きたいって言ってたっけ?

そんなことを考えていると、ある人が浮かんでくる。

「・・・四月・・・」

あの日以降、四月の話した事はない。

メッセージアプリのやり取りすらなくて、学校でも基本的には会っていなかった。

遠くで姿を見かけた時はあるが、所詮はその程度だった。

「七がどうかしたの?」

少し強めの口調で、六日が俺に聞いてきた。

分かったからその鋭い視線はやめなさい。

結構恐いんだから・・・。

「いや、どうしたって訳じゃないけど、元気にしてるかな~って」

「・・・気になるの?」

「まあ、一応はな」

自分が振った相手のことを気になるのは、仕方がないことではないだろうか?

別に四月に未練が残ってるとかそんなんじゃなくて、ただ純粋に元気にしてるかな~ってその程度だ。

六日が心配するようなことにはならないが、六日はやっぱり不安なのだろう。

「・・・一応、毎日元気にやってるよ」

「そっか」

「自分の選択に、後悔してる・・・?」

不安を抑えきれなかったのか、六日が弱気な発言をしてくる。

そんな六日に、少しでも時間を与えてしまえば逆効果なので、俺は即答でこう答える。

「してないよ」

「そう・・・」

「自分の選択を後悔したら、俺が傷つけちゃったけど前を向いた四月にも、ずっと俺のこと想ってくれて今も隣に居てくれるお前にも失礼になるからな」

「そう・・・」

「だから、後悔はしてないよ」

それ以上六日は何も言わなかったが、不意に握られた右手が、ありがとうと言っているような気がした。

俺のこの選択が、100%正しかったって保証は、どこにもない。

この結果で、不幸になるかも知れない。

明日には、大喧嘩でもして別れるかも知れない。

でも、そもそも恋愛っていう漠然としてふわふわした感情の集合体の中に、100%正解があるなんて思っていない。

正しさがないからいくらでもやり直せて、広げられて、新しく紡いでいける。

もうすぐ学校に近づく景色になった頃に、2人並んで歩いていたはずなのに、俺の少し後ろを歩く六日の手を引く俺。

言葉が極端に少ない六日は、代わりに露骨に行動に出やすい。

別にこれが最後じゃないんだしと思いながらも、六日の手を引いて歩く。

まあ、素直じゃないのはお互い様なので、指摘するのも野暮な話だろう。

そして、またこの季節がやってる。

去年は1人で見たこの景色も、今は隣に六日がいて、彼女と一緒に見ると、また違った景色に見えた。

そんなことあるはずはないけど、そう見えてしまっているのは、きっとそれは盲目こいだからだろう。

隣で微笑む六日の横顔見ながら、今日も俺はキミに溺れていく。
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